投稿者:鈴木小太郎 投稿日:2022年 2月 1日(火)21時01分45秒
問1~3は省略して、問4を見ると、教師と生徒A・B・Cの会話になっています。
【速報】大学入学共通テスト2022 国語の問題・解答・分析一覧(『高校生新聞』サイト内)
問題文にはX・Y・Zの三か所の空欄があり、当該空欄に入る最も適切な文章を選択する形式になっていますが、そのままでは読みづらいので、予め正解で空欄を埋めた形で引用します。
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問4 次に示すのは、授業で【文章Ⅰ】【文章Ⅱ】を読んだ後の、話し合いの様子である。これを読み、後の(ⅰ)~(ⅲ)の問いに答えよ。
教師 いま二つの文章を読みましたが、【文章Ⅰ】の内容は、【文章Ⅱ】の6行目以降に該当していました。
【文章Ⅰ】は【文章Ⅱ】を資料にして書かれていますが、かなり違う点もあって、それぞれに特徴が
ありますね。どのような違いがあるか、みんなで考えてみましょう。
生徒A 【文章Ⅱ】のほうが、【文章Ⅰ】より臨場感がある印象かなあ。
生徒B 確かに、院の様子なんかそうかも。【文章Ⅱ】では〔X いてもたってもいられない院の様子が、
発言中で同じ言葉を繰り返しているあたりからじかに伝わってくる〕。
生徒C ほかに、二条のコメントが多いところも特徴的だよね。【文章Ⅱ】の〔Y 3行目「いつしかいかなる
御物思ひの種にか」では、院の性格を知り尽くしている二条が、斎宮の容姿を見た院に、早くも好色の
虫が起こり始めたであろうことを感づいている〕。普段から院の側に仕えている人の目で見たことが書
かれているっていう感じがあるよ。
生徒B そう言われると、【文章Ⅰ】では【文章Ⅱ】の面白いところが全部消されてしまっている気がする。
すっきりしてまとまっているけど物足りない。
教師 確かにそう見えるかもしれませんが、【文章Ⅰ】がどのようにして書かれたものなのかも考える必要が
ありますね。【文章Ⅰ】は過去の人物や出来事などを後の時代の人が書いたものです。文学史では
『歴史物語』と分類されていますね。【文章Ⅱ】のように当事者の視点から書かれたものではないという
ことに注意しましょう。
生徒B そうか、書き手の意識の違いによってそれぞれの文章に違いが生じているわけだ。
生徒A そうすると、【文章Ⅰ】で〔Z 院の発言を簡略化したり、二条の心情を省略したりする一方で、斎宮の
心情に触れているのは、当事者全員を俯瞰する立場から出来事の経緯を叙述しようとしているからだろう〕、
とまとめられるかな。
生徒C なるほど、あえてそういうふうに書き換えたのか。
教師 こうして丁寧に読み比べると、面白い発見につながりますね。
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生徒A・B・Cは、『とはずがたり』の方が『増鏡』より「臨場感」があり、「二条のコメントが多」く、『増鏡』では『とはずがたり』の「面白いところが全部消されてしまって」「物足りない」と感じる訳ですが、それは何故か。
この点、教師は『増鏡』は「過去の人物や出来事などを後の時代の人が書いた」「文学史では『歴史物語』と分類されてい」る作品であって、『とはずがたり』のように「当事者の視点から描いたものではない」ことを指摘します。
これを受けて、生徒は「書き手の意識の違いによってそれぞれの文章に違いが生」じていることに気付き、「院の発言を簡略化したり、二条の心情を省略したりする一方で、斎宮の心情に触れているのは、当事者全員を俯瞰する立場から出来事の経緯を叙述しようとしているからだろう」と纏めた、という訳ですね。
受験レベルでは、以上の内容はもちろん正しいものです。
しかし、若干の疑問がない訳ではありません。
実は、『増鏡』の前斎宮エピソードには、後日談として『とはずがたり』には全く登場しない奇妙な追加エピソードが描かれています。
教師の指摘は、要するに『増鏡』は『とはずがたり』などを資料として、『とはずがたり』の作者より後の時代の人が書いた『歴史物語』だ、ということですが、『とはずがたり』に存在しない前斎宮エピソードが『増鏡』に存在していたら、この二つの作品の関係は些か奇妙なものになります。
もちろん、史実である前斎宮エピソードの一部は『とはずがたり』に記録され、別の一部は別の資料に記録されており、『増鏡』作者は二つの資料を見た上で、「当事者全員を俯瞰する立場から出来事の経緯を叙述しようと」したと考えることも可能ではあります。
しかし、関係者が極めて僅かな宮中秘話である前斎宮エピソードが、果たしてそんなに多くの資料に記録されるものなのか。
>筆綾丸さん
>そんなエッチな問題を
私個人は、こんなエロ問題はセクハラだ、パワハラだ、などと騒ぐタイプではないので全然気にしませんが、しかしまあ、『増鏡』はもちろん、『とはずがたり』にだってもっと格調高い場面はいくらでもあるので、何でわざわざ前斎宮のエピソードを選んだのだろう、という疑問は残りますね。
※筆綾丸さんの下記投稿へのレスです。
好色一代女 2022/02/01(火) 17:02:11
小太郎さん
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00238.html
問題作成者(大学教員?)には変態と変人が多いとはいえ、改正民法(成年年齢)の施行は2022年4月1日で、現行民法下では、実施日(2022年1月15日)現在の高校3年生は殆ど18歳の未成年ですから、そんなエッチな問題を出してもいいの、各都道府県の青少年健全育成条例に違反するのではないか、というような気がしないでもなく、誰かが文科省を相手に訴訟を提起したら、案外、面白くなるかもしれないですね。
とはいえ、来年の受験生は晴れて成年者になるので、西鶴『好色一代女』等からも堂々と出題できる、ということになりますか。
蛇足
「甘の御衣などはことごとしければ、御大口ばかりにて」は、現代風に意訳すれば、「ズボンを脱ぎ捨て、あらわなパンツ姿で」といった感じで、院の姿が目に浮かぶようです。
小太郎さん
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00238.html
問題作成者(大学教員?)には変態と変人が多いとはいえ、改正民法(成年年齢)の施行は2022年4月1日で、現行民法下では、実施日(2022年1月15日)現在の高校3年生は殆ど18歳の未成年ですから、そんなエッチな問題を出してもいいの、各都道府県の青少年健全育成条例に違反するのではないか、というような気がしないでもなく、誰かが文科省を相手に訴訟を提起したら、案外、面白くなるかもしれないですね。
とはいえ、来年の受験生は晴れて成年者になるので、西鶴『好色一代女』等からも堂々と出題できる、ということになりますか。
蛇足
「甘の御衣などはことごとしければ、御大口ばかりにて」は、現代風に意訳すれば、「ズボンを脱ぎ捨て、あらわなパンツ姿で」といった感じで、院の姿が目に浮かぶようです。