第1問
ヨーロッパ列強により植民地化されたアジア・アフリカの諸地域では、20世紀にはいると民族主義(国民主義)の運動が高まり、第一次世界大戦後、ついで第二次世界大戦後に、その多くが独立を達成する。
しかしその後も旧宗主国(旧植民地本国)への経済的従属や、同化政策のもたらした旧宗主国との文化的結びつき、また旧植民地からの移民増加による旧宗主国内の社会問題など、植民地主義の遺産は、現在まで長い影を落としている。
植民地独立の過程とその後の展開は、ヨーロッパ諸国それぞれの植民地政策の差異に加えて、社会主義や宗教運動などの影響も受けつつ、地域により異なる様相を呈する。
以上の点に留意し、地域ごとの差異を考えながら、アジア・アフリカにおける植民地独立の過程とその後の動向を論じなさい。
解答は解答欄に18行以内で記し、必ず次の8つの語句を一度は用いて、その語句に下線を付しなさい。
カシミール紛争 ディエンビエンフー スエズ運河国有化
アルジェリア戦争 ワフド党 ドイモイ
非暴力・不服従 宗教的標章法(注)
(注) 2004年3月にフランスで制定された法律。「宗教シンボル禁止法」とも呼ばれ、公立学校におけるムスリム女性のスカーフ着用禁止が、国際的な論議の対象になった。
[解答]
独立過程について、戦争により独立したのが、ディエンビエンフーで大勝して仏から独立したベトナム、第一次大戦時アフガン戦争で英から独立したアフガニスタン、スカルノの下で蘭と戦い独立したインドネシアである。
平和的に民衆の力や情勢を利用して独立したのが、米の善隣外交下で10年後の独立を約束されたフィリピン、第一次大戦後の英の衰退で独立したビルマ、ワフド党と党を支持する民衆の力で英から独立したエジプト、ガンディーの非暴力・不服従運動や民衆の不買運動を通じて独立したインド、「アフリカの年」やその後の情勢下で独立した南アフリカ、コンゴ、アルジェリアである。
経済的従属から脱しようと試みたのがスエズ運河国有化で英・仏・イスラエルに攻め込まれたエジプト、開放的経済政策のドイモイを施行したベトナム、冷戦下で東西どちらか一方に依存して台頭を企図した開発独裁を行った国々である。
旧宗主国との文化的結びつきが強いのが、アパルトヘイトが施行された南アフリカ、アルジェリア戦争が勃発しムスリムの信仰が宗教的標章法で抑圧されたアルジェリアなど仏からの独立国である。
社会問題が起こったのがカシミール紛争が起きたインド、カタンガ州を巡って動乱が発生したコンゴである。