内閣総理大臣安倍晋三の発言は政治の世界とともに国内の不安定さを醸成している
櫻井 智志
言語の発生について、哲学者芝田進午氏は、「労働の組織的過程」(それは「労働の技術的過程」との統一としてとらえられていく)を重視している。言語は、人々が協業によって労働過程をより綿密で大規模に発達させることと言語の発生によって生成・発展されたとする。
しかし、安倍政権の総理は、「嘘・ごまかし・逆ギレ」「詭弁」によって粉飾された政治言語しか使えない。このことは、安倍晋三自民党総裁という閉じた集団内でなら、まだ嗤ってすませられるかも知れない。内閣総理大臣として国内の「最高?」権力者としての安倍晋三が使う言語は、国内の社会状態に直接影響を及ぼしている。その点で、孫崎享氏の下記の評論には刮目するものがある。
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【孫崎享のつぶやき】
リテラ『嘘、ごまかし、逆ギレ、開き直り…安倍首相「今年のトンデモ発言」ランキング』(抜粋)
2015-12-30 08:093
かつて、日本政治においては首相の発言には厳しいチェックがなされた。
それは当然のことであろう。政治の最高責任を担う者には責任がある。
しかし、安倍首相になって発言はあまりにもいい加減で嘘と詭弁に満ちている。それも原発や、集団的自衛権と言う重要な政策に関する発言である。
代表的なのは福島原発に関する発言である。ブエノスアイレスで開催された9月7日のIOC(国際オリンピック委員会)で委員の質問に対し
「結論から言うと、まったく問題ない。(ニュースの)ヘッドラインではなく事実をみてほしい。汚染水による影響は福島第一原発の港湾内の0・3平方キロメートル範囲内で完全にブロックされている。
福島の近海で、私たちはモニタリングを行っている。その結果、数値は最大でも世界保健機関(WHO)の飲料水の水質ガイドラインの500分の1だ。これが事実だ。そして、我が国の食品や水の安全基準は、世界で最も厳しい。食品や水からの被曝(ひばく)量は、日本のどの地域でも、この基準の100分の1だ。
健康問題については、今までも現在も将来も、まったく問題ない。完全に問題のないものにするために、抜本解決に向けたプログラムを私が責任をもって決定し、すでに着手している。」
そして集団的自衛権の問題で、日本人の母子らしい人が乗った米国の船を《防護できない》としたパネル。これを指しながら首相はいう。「紛争国から逃れようとしているお父さんやお母さん、おじいさんやおばあさん、子どもたち。彼らが乗る米国の船を今私たちは、守ることが出来ないのです」「この議論は国民の皆さま一人一人に関わる現実的な問題であります」と言ったが、米国国務省ホームページでは、「 危機に於いて我々の優先は米国市民を助けることである。貴方方は米国政府が雇いあげたり非商業輸送手段に、米国市民でない友人や家族を連れ込むことを期待すべきではない」「ヘリコプターや米軍運搬手段や軍事エスコートがついた米国雇用輸送手段は現実と言うよりハリウッドの脚本である」と記述した。
しかし、安倍政権になり、言論界は安倍首相の発言を批判することはない。
大手メディアは安倍首相の発言を問題視して報ずることはほとんどない。
この中、リテラが『嘘、ごまかし、逆ギレ、開き直り…安倍首相「今年のトンデモ発言」ランキング』を掲載したので紹介する。(http://lite-ra.com/2015/12/post-1830.html
これを見れば、安倍首相が如何にいい加減な首相であるか、そしてそれをほとんど報じてない日本の大手新聞が如何に安倍広報メディア化しているかがわかる。
★1位
「我々が提出する法律についての説明はまったく正しいと思いますよ。私は総理大臣なんですから」
(7月15日、衆院特別委員会で)
堂々の1位は、やはりこれしかないだろう。権力を握った人間の強烈すぎる思い上がりが、ここまで見事に表現されている言葉は歴史を見わたしてもそうそうないはずだ。この「私は総理大臣なんですから」という一言で、わたしたちはこの国がどのような状態にあるのかを知ることができる。そう、総理大臣の意のままに法律がつくられ、疑義が呈されても聞く耳をもつつもりはない、とはっきり国民は突きつけられているのだ。これは安倍首相による明確な「独裁者」宣言である。
★2位
「我が軍の透明性を上げていくことにおいては、大きな成果を上げている」
(3月20日、参院予算委員会で)
その「歴史に謙虚」であることを自負する安倍首相の口からこぼれ出た言葉が、この思わず血の気が引く「我が軍」発言だ。言わずもがな自衛隊は軍隊とは認められていないし、軍の保持は憲法に反する。だが、どうやらこの人の頭のなかでは、すでに自衛隊は「我が軍」であるらしい。
★3位
「政治家は歴史に対して、謙虚でなければならない、というのが、私の信念であります」
(9月11日、ネット番組『櫻LIVE』生出演時に)
北関東への記録的洪水が起こり多数の不明者の安否が気遣われていた夜、なんと安倍首相は自身の応援団である櫻井よしこと日本会議会長・田久保忠衛が出演するネット番組に生出演。そのなかで飛び出したのが、この発言だ。
★4位
「私の考え方をそこで述べることは言論の自由だ」
(3月3日、衆院予算委員会で)
昨年末の衆院解散の当日に『NEWS23』(TBS)に生出演し、VTRの街頭インタビューに対して「これ、問題だ」と文句をつけた安倍首相。その後、自民党は在京キー局各社に「報道圧力」文書を送りつけたが、この『NEWS23』での発言を国会で問われた際、安倍首相はなんと「私の言論の自由」と言いつのったのだ。
しかも信じられないのは、再度、国会で民主党・細野豪志議員から“為政者が番組への圧力を言論の自由と主張するのは人権の侵害だ”と反発を受けたときの返答だ。安倍首相はニヤニヤと笑いながら、ひと言「圧力と考える人なんて、私、世の中にいないと思いますよ」。さらに得意げにこう畳みかけた。
「番組の人たちは、それぐらいで萎縮してしまう。そんな人たちなんですか? 情けないですね、それは。極めて情けない」
圧力をかけている張本人が何を言うか、と思うが、さらに安倍首相はこうも言った。
「その後も私はテレビに出たときに、あのときのことを例として挙げられ、私は当該テレビのアナウンサーから非難された。それは当然非難してもいいですよ。当然、報道の自由ですし、言論の自由」
この「当該アナウンサー」とは、現在、降板の危機にさらされている膳場貴子キャスターのことだ。本サイトでは何度も伝えているように、膳場キャスターの降板の裏には安倍政権からの強い圧力の存在があるといわれている。「報道の自由、言論の自由」と言いながらやっていることは真逆、報道の自由を踏みにじるあるまじき行為なのだ。つまり安倍首相は、「オレの言論の自由こそが最優先で守られるべき」と考えているのだろう。
悪寒が走る話だが、現実はこの安倍思考のまま着実に動いている。現に先日、安倍首相に目の敵にされてきた古舘伊知郎が『報道ステーション』(テレビ朝日)から降板することを発表した。いよいよ「言論の自由」は、この男に独り占めされてしまうのかもしれない。
★5位
「『安倍は生意気なヤツだから今度殴ってやる』と言う不良が来て、いきなり前を歩くアソウさんに殴りかかった。私もアソウさんを守る。これは今度の法制でできる」
(7月7日、ニコニコ生放送『安倍さんがわかりやすくお答えします!平和安全法制のナゼ?ナニ?ドウシテ?』で)
もう何を言っているのか、何を言いたいのかさっぱりわからない。安倍首相は安保法制を「ていねいに説明する」と何度も繰り返したものの、口から出てきたのはこの通り、無茶苦茶なたとえ話ばかりだった。
なかでも国民が呆れかえったのは、フジテレビのニュース番組生出演時に披露した「アメリカの火事」というたとえ話だった。安倍首相は得意満面で“総理肝入り”の模型までスタジオに持ち込んだが、それを使って展開したのは、こんな話だった。
「アメリカの家が燃えて、横にある離れにも火が燃え移っても、日本は何もしない。でも、離れの火がぎゅーときて、日本の家が燃えたら日本の消防士がはじめて出てくるけど、これからは風向きでアメリカの離れの火が日本の家まで来そうなら、日本の消防士は道の上から離れの消火活動ができる。でも、アメリカの家までは行かない」
★6位
「ISILと闘う周辺各国に、総額で2億ドル程度、支援をお約束します」
(1月17日、日エジプト経済合同委員会でのスピーチで)
すべては安倍首相の中東訪問、エジプトでのこの発言がきっかけだった。安倍首相はこのとき「イラク、シリアの難民・避難民支援、トルコ、レバノンへの支援をするのは、ISILがもたらす脅威を少しでも食い止めるためです」と、はっきり“難民支援ではなくIS打倒のため”と宣言。当然、この発言はISの逆鱗にふれ、湯川遥菜さんと後藤健二さんの殺害予告がなされてしまったのだ。
しかも悪質なのは、このときすでに後藤さんがISに拘束されているという事実を官邸は掴んでいた、という点だ。
★7位
「早く質問しろよ!」
(5月28日、衆院特別委員会で辻元清美議員に向かって。機雷掃海のリスクについて指摘する辻元清美議員に「早く質問しろよ!」とイライラした調子で声を張り上げた。)
★8位
「戦争法案などといった無責任なレッテル貼りはまったくの誤りだ」
(5月14日、安保法案閣議決定後の記者会見で)
★9位
「難民受け入れは人口問題として申し上げれば、我々は移民を受け入れる前にやるべきことがある。それは女性や高齢者の活躍であり、出生率を上げていくにはまだまだ打つべき手がある」
(9月30日、国連総会の一般討論演説後の記者会見で)
★10位
「第三の矢は的に届いていないとの批判を受けるが、私は大学時代、アーチェリー部だった。私の矢は必ず当たる」
(5月2日、ロサンゼルスでの日米交流関係者との昼食会で)