【現代思想とジャーナリスト精神】

価値判断の基軸は自らが判断し思考し実践することの主体であるか否かであると考えております。

年の終わりに

2015-12-31 21:00:46 | 転載と私見
東京新聞転載
【私説・論説室から】


恩義は生きる時が来る
2015年12月23日

 ドイツの難民受け入れ現場を取材した。報じられてはいたが、これほどまでとは思わなかった。難民たちからの、ドイツに対する感謝と称賛だ。
 メルケル首相は、ハンガリーなどで冷たい仕打ちを受けていた難民の積極的受け入れを表明し、ドイツの市民らは、難民の世話を焼くため奔走している。
 シリア人男性難民は「メルケルは私たちのマザーだとみんな言っている。ドイツ人は誠実だ」と流ちょうな英語でまくし立てた。アフガニスタン男性難民は「自分たちの国には学校も教育システムもない。大統領は国に戻れと言うが、絶対に嫌だ」と語気を強めた。
 ドイツ人も難民に好意的な人ばかりではない。難民は今後、差別などで嫌な思いをすることもあるだろう。しかし、戦火を逃れ、つらい思いをしている時に助けてもらった恩義を、忘れることはないはずだ。
 難民の中からもテロリストや犯罪者が出てくるかもしれないが、不心得者に対してはまず、難民社会が怒りの声を上げるだろう。
 難民の世話をするドイツ人を手伝うため、通訳などを買って出る難民もいる。ドイツが危機に陥った時には、難民が力になってくれるに違いない。
 難民を受け入れる負担は重いが、今回のことでドイツは大きな力を得る、と確信した。              
(熊倉逸男)


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私見


ドイツは、義によって戦争国家から再建を前進させている。
日本は安倍政権によって、アメリカへの義理で再び戦争国家をめざしているとしか思えない。お話にならない。独裁政治は最後が悲劇的な結末になることを、高校世界史程度の知識なら若者たちでも知っている。

【孫崎享のつぶやき】及び小生の「私見」

2015-12-31 11:32:23 | 転載と私見
~孫崎享、かく語りき~

①孫崎享さんへのコメント・メッセージ

孫崎享様
私が先生を知ったのは、色平哲郎氏を通じてです。ご著作を拝読して、「孫崎享のつぶやき」メルマガを購読しております。それをフェイスブックのページ「国民的統一戦線への探求」とmixiのコミュニテイ『「孫崎享氏のつぶやき」に学ぶ』とに毎日、コメント「私見」をつけて転載させていただいております。重要な時には、ブログ「【現代と思想】~ジャーナリスト精神」にも掲載しております。

私のような支持者もおります。どうぞお体に気をつけて、来年もご指導をよろしくお願い申し上げます。先生のような思想家でもあり、社会科学者でもあり、「日刊ゲンダイ」のような大衆性もある重要なメディアに発信されているかたは現代日本には稀有であり、貴重な存在です。来年も私なりにまなび、少しでも周囲に発信しつづけます。
2015/12/31            櫻井 智志拝


②本文
【孫崎享のつぶやき】
《本年一番発信したかった事。日本史、真珠湾攻撃ほどの愚策はない。「少し頭を使えば破壊的な結果になる」、今原発再稼働、TPP,集団的自衛権、少し頭を使えば間違いだという事が解るではないか》
2015-12-31 07:312



本年一番発信したかった事。日本史、真珠湾攻撃ほどの愚策はない。「少し頭を使えば破壊的な結果になる」、今原発再稼働、TPP,集団的自衛権、少し頭を使えば間違いだという事が解るではないか



 私は本年『日米開戦の正体』を書いた。3万部位印刷された。期待したほど読まれなかった。今後も多分読まれることはないであろう。

 ただ次のものはぜひ知って欲しいと思う。この本の冒頭部分を記述する。

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何故今真珠湾攻撃を学びたいと思ったのか。真珠湾攻撃は日本歴史の最大の愚

挙です。世界の戦争を学んだ者なら、全ての人間が真珠湾攻撃は愚挙だという事に同意すると思います



 ジェフリー・レコード著『アメリカはいかにして日本を追い詰めたか』とい

う本があります。米国陸軍戦略研究所(U.S.Army War Collage, Strategic

Studies Institute)内のレポートの訳です。この本の評価は別として冒頭、米

国陸軍戦略研究所所長グラス・ラブレースの言葉が記載されています。

・日本が1941年に下した米国攻撃の決断は全く合理性に欠け、ほとんど自殺行為であったと考えられる。アメリカは日本の10倍の工業生産力を持っていた。もちろん日本がアメリカ本土を攻撃することは出来るものではない。そんな国と戦って日本は勝算があると考えたのだろうか。太平洋方面で我が国と戦えば負けることは解り切ったことだった。日本が我が国と戦うと決めた歴史的事実を一体どう説明したらよいであろうか。

・ディーン・アチソンは1941年には国務次官補であり経済担当をしていた。彼は真珠湾攻撃以前につぎを語っていた。

「我が国を攻撃すれば、日本にとって破壊的な結果になることは、少し頭を使えば、どんな日本人にでも解ることだ。」

 その通りと思います。日本の10倍の工業生産力を持った米国と戦争すれば、

「少し頭を使えば破壊的な結果になる」のです。

しかし、当時の国家の中枢の人は詭弁を使いました。「民主主義国家の米国は永い戦争に堪えられずに途中でやめる」という詭弁で、日本を破壊に導きました。

 日本は真珠湾攻撃に突入し、自らの選択で第二次大戦に入って行きました。

あらためて、戦争被害をみてみたいと思います。

山川出版社の『詳説日本史』には次の記述があります。

「空襲での被害は家屋の全焼が約221万戸、死者約26万人に達し、主要な生産施設が破壊されました」

「沖縄戦では日本軍の戦死者は5万5000名に達し、一般市民も10万人以上が戦没した」

 更に『資料太平洋戦争被害調査報告』(中村隆英編東大出版)は次のように記述しています。

「太平洋戦争における死者は厚生省の発表によると310万人余(内軍人軍属230万人、沖縄住民を含む在外邦人30万人、内地での戦災死亡者50万人)と考えられている。国富被害は総計約653億円」

 「全国の直接的物的被害額約486億円(仮に日銀の卸物価価格数の倍率でみると最近地で10兆円―1995年―、繊維業は敗戦時の設備能力は昭和16年の20-40%、化学工業は35-60%に縮小した)

 平成天皇もまた、2013年12月80歳の誕生日に際しての記者会見で「この戦争による日本人の犠牲者は約310万人と言われています」と発言されました。

 この被害を招いた契機は真珠湾攻撃です。ですから真珠湾攻撃は日本最大の愚策です。



 今日本は真珠湾攻撃という愚策に何故突き進んでいったかを学ぶ理由があるでしょうか。大いにあると思います。自民党政権で、原発、TPP,集団的自衛権など少し頭を使えば破壊的な結果になることは解ることです。それでもこの政策の推進に突き進んでいます。



 今真珠湾攻撃という日本歴史上最大の愚策に至った道を考察する必要があるのでしょうか。

真珠湾攻撃は1941年12月7日に起こった事件です。

 73年も前の出来事です。

 その時代を、今、振り返ることに意義があるでしょうか。

 私はあると思っています。

 今日、日本人の誰もが「真珠湾攻撃」は愚かしい行動であったと思っています。

 では何故、この愚かしい選択をしたのでしょう。

 考えてみると、「愚かしい選択」は、実は、今まさに日本が行おうとしていることではないでしょうか。

 今の日本の状況を見てみたいと思います。

2012年12月26日第2次安倍政権が成立しました。

 この政権は日本を新しい道へと導き始めます。

 安倍首相は「私は戦後レジームから脱却をして、(戦後)70年が経つなかで、今の世界の情勢に合わせて新しいみずみずしい日本を作っていきたい」と発言しています。

 でも一寸不思議なのです。

 戦後の日本は酷い国、大幅の修正を要する国だったのでしょうか。

 戦後、日本は平和国家として、そして経済の発展に努力をしました。長らく米国に次いで世界第二の経済大国にまでなりました。世界の歴史の中で奇蹟と思われる事態です。国内の社会制度も整い、世界でも有数の安全で暮らせる国でした。2014年5月15日日経新聞は「世界保健機関は15日、2014年版の「世界保健統計」を発表、12年の男女合わせた日本の平均寿命は84歳で、前年に続き首位を維持した」と報じました。「男女合わせた日本の平均寿命は世界一」と言われる国が何故、急に方向転換しなければならないでしょう。

よく「ふつうの国になる」という台詞が吐かれますが、何故これまでの日本の在り様を捨てなければならないのでしょうか。

BBCの調査で最も好ましい国で、2006年から2012年までに日本は4回も世界一位になっています。「戦後レジームから脱却」を掲げた安倍政権の下、日本は第5位に転落しました。

 日本が世界から評価されていた時に、何故「戦後レジームから脱却」を図らなければならないのでしょうか。

 この本を今、ざっと見ている人の中には自民党の支持者もいると思います。安倍首相の支持者もいると思います。

 でも、「どの政党を支持するか」、「どの政治家を支持するか」という議論をとりあえず横において、本当に今の選択が正しい選択なのでしょうか。

 2011年3月11日原発事故と言う戦後最大の事故を日本は経験しました。

何故事故が起こったか、十分な現場検証すら行なわれていません、

しかし、政府は着々と、再稼働の準備を整えています。本当に日本の未来を考えてのことでしょうか。

小泉元首相は講演で「安全神話が“嘘”だったことは大事故で判明した。“他の電源に比べて原発コストは安い”との論も“嘘どころか一番の『金くい虫』だ”と反論。“被害の賠償。廃炉までには40年─50年かかること。安全対策。作業員の確保。最終処分場確保にいたってはいまだにない”と述べ、推進論がこれらをコストに入れない“甘さ”を追求しました(2014年7月7日ロイター)。

原発推進者でこれに反論した人はいたでしょうか。

2005年2月23日、石橋克彦神戸大学教授が衆議院予算委員会公聴会で次のように述べました。

「アメリカでは地震現象というのは、地震というのは原子力発電所にとって一番恐ろしい外的要因であるというふうに考えられております。地震の場合は複数の要因の故障といって、いろんなところが振動でやられるわけですから、それらが複合して、多重防護システムが働かなくなり、最悪の場合にはいわゆるシビアアクシデント、過酷事故という炉心溶融とか核暴走とかいうことにつながりかねない訳であります。」

 原発推進者でこれに反論した人はいたでしょうか。

 TPP(「環太平洋戦略的経済連携協定」)への参加問題では「参加しないと日本は世界の孤児になる」(米倉経団連会長)や「円高への抵抗力高めるために参加必要」(古賀連合会長)や「世界でもまれて競争力磨く志を再び」(2011年元旦日本経済新聞社説)のような論は聞かれたと思います。

 私は平成25年5月2日参議院予算委員会で、次の論を展開しました。

「TPPは日本の将来を決める大きな岐路です。

今日の外交問題で最も重要な課題であると言えます。

TPPにはさまざまな問題があるがISD条項は国家の主権を揺るがす重大課題

です。

・これまでの経済交渉は国家対国家でした。

 ISD条項によって、企業が国家を直接訴える。裁判では企業は巨額の資金を投入します。

 裁判の基本理念は経済活動で、受け入れ国の法律や制度で期待する利益が得られなかった時に訴えることが出来るというものです。

・健康、土地活用、政府調達、知的財産権、規制、税等広範な分野が対象になるとみられています。

皆さんに質問します。次のケースをどう考えるか 

 政府が企業に廃棄物処理施設許可を与えたが、有毒物資による近隣の村の飲料水汚染等で癌患者が多数発生する等、危険性が提訴され地方自治体が施設利用の不許可処分にした。

有害毒性の指摘がある添加物を持つガソリンの輸入を禁止した。

薬品は副作用があり、その調査を十分しなければならないが、新薬の特許申請に対して、臨床実験が十分でないとして、許可を与えなかった。(具体的に各々のケースで企業がISD条項で国家を訴え巨額の賠償金を獲得)

憲法は国会が最高機関としていますが、ISD条項はこの法律を裁くのです。

日本では最高裁の判決が最上位です。ISD条項はこの判決を裁くのです。」

こうした懸念に対してTPP推進派の人は答えていたでしょうか。

答えていないのです。

私の発言なんて大したことはありません。それでも、こうした論を発する私に、東京第16区選出の大西議員が衆議院総務委員会で私のTPP発言を「とんでもない発言」とレッテルを張り、NHK会長に「こうしたとんでもない発言をする人をNHKは出すのですか」と詰問している状況です。ついでに言えば大西議員はTPP反対で当選した議員です。

原発、TPP発言で言論人は次々締め上げられているのです。



 集団的自衛権の論議の中で、安倍首相は邦人保護を行う米軍を自衛隊が守らなければならないといいました。しかし、米国国務省は緊急事態で米国が外国人を救出することはないと述べています。



集団的自衛権で自衛隊を海外で戦闘できる組織にしようとしています。

イラク戦争やアフガニスタン戦争は明らかに失敗でしたが、どうしてこういう戦争に自衛隊が参加しなければならないのでしょうか。

 安倍首相は2014年5月15日の記者会見でパネルを使って、「今や海外に住む日本人は150万人、さらに年間1,800万人の日本人が海外に出かけていく時代です。その場所で突然紛争が起こることも考えられます。そこから逃げようとする日本人を、同盟国であり、能力を有する米国が救助、輸送しているとき、日本近海で攻撃があるかもしれない。このような場合でも日本自身が攻撃を受けていなければ、日本人が乗っているこの米国の船を日本の自衛隊は守ることができない」と説明しました。

 これを受けて、5月.19日付産経新聞は「7割が集団的自衛権を容認 日本人輸送の米艦船護衛73・1%が支持」と報じました。6月1日読売新聞は「邦人輸送の米艦防護 “賛成”75%」と報じました。

でも一寸考えてみてください。軍艦は戦うためにあります。有事では軍艦の最大目的は敵と戦う事です。この中、外国人の救出を行う余裕があるのでしょうか。

辻元清美氏は自分のブログで次のように報じました。

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本日6月11日、衆議院外務委員会で辻元清美が集団的自衛権について質問をし、次を明らかにしました。

・安倍総理が集団的自衛権行使の事例として繰り返す「戦争時に米輸送艦によって邦人が輸送された事例」は、過去に存在しないと、外務省は認めた。

・米国政府は他国の政府に対して「すべての外国政府は、自国民の避難についての計画を立て、また米国政府の手段に依存しないこと」を求めていることを、官房副長官は認めた。

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更に、米国国務省のサイトで領事部の「旅行(TRAVEL)」という項目で避難に関するサイトで次を掲載しています。

問:「米国市民でない私の家族や友人はどうなるのか。貴方方は脱出を助けるのか」

答:「危機に於いて我々の優先は米国市民を助けることである。貴方方は米国政府が雇いあげたり、非商業輸送手段に、米国市民でない友人や家族を連れ込むことを期待すべきではない」

問:「避難時にどうして米軍軍用手段を使わないのか」

答:「ヘリコプターや米軍運搬手段や軍事エスコートがついた米国雇用輸送手段は現実と言うよりハリウッドの脚本である」

安倍首相が説明したように、日本人を米国の軍艦を避難させる、自衛隊がそれを守るというシナリオは成立していないのです。

安倍首相がパネルで説明した時、ちょっと待ってくれ、それはおかしい事だ」と大手メディアは問題提起したでしょうか。

しませんでした。

ではそういう声はなかったのでしょうか。よくよく見るとあったのです。

予想外の人が発言していました。大橋巨泉です。大橋巨泉は自分のことを「『巨泉は左だから』と片付けようとする人がいるけど、競馬やマージャンをテレビで推奨した男のどこが左だっていうんだよ」と言っています。

週刊現代6月7日号は「大橋巨泉の今週の遺言」で次を報じました。

「5月15日、安倍首相は記者会見、集団的自衛権の説明。紙芝居のようなパネル、その内容たるや、「大ウソ」や「スリカエ」に満ち、見ていて気持ちが悪くなった。率直な感想は、「この人は本当に悪い人だな」である。

日本人の母子らしい人が乗った米国の船を《防護できない》としたパネル。これを指しながら首相はいう。「紛争国から逃れようとしているお父さんやお母さん、おじいさんやおばあさん、子どもたち。彼らが乗る米国の船を今私たちは、守ることが出来ないのです」「この議論は国民の皆さま一人一人に関わる現実的な問題であります」だって。皆さん、こんな話聞いたことがありますか?米国の輸送船で紛争国から逃れた人など、かつて一人も居なかったはずだ」

首相よりも大橋巨泉の方が正しい発言をしている。この異常さにどれ位の人が気づいているでしょうか。



今安倍政権が「嘘と詭弁で政策を推進する」方針は真珠湾攻撃の決定の際と同じです。真珠湾では「民主主義国家の米国は長期の戦争に耐えられなくなる」という嘘の根拠に基づいて戦争に突入しました



集団的自衛権やTPP,原発などで安倍政権が行おうとしている方針は次の図式がなりたっています。

① 指導者が嘘や詭弁の説明をする、

② この嘘や詭弁で、本来は国民が望まない方向に政策を誘導する、

③ マスコミが調べれば嘘や詭弁であることが解るのにそれを検証せず、嘘、詭弁の拡散に努める

④ 国民はこの嘘や詭弁を信じ(信ずるふりをし)政策を容認する。

 これと同じ過程こそ、「真珠湾攻撃への道」の本質です。

 1945年8月15日トルーマン大統領は対日戦における空襲の効果について調査を命じます。

 調査委員会の定員は文官300名、将校350名、下士官500名です。大変な大部隊です。副委員長に「20世紀においてその著作が最も読まれた経済学者」と言われたガルブレイスが参加しています。

 この調査報告書は次のように記述しています。

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 開戦並びにフィリピン等に侵攻するという最終的決定は重要な地位にある全陸海軍指揮官並びに政府要人の完全なる意見の一致と積極的な承認によって定められたのである。実際に1941年10月までに行った次のごとき情勢判断に基づいている。

A 満州側面におけるロシアの脅威はドイツ軍のヨーロッパに於ける圧倒的勝利によって消滅した。

B 大英帝国は挽回することの出来ないほど守勢的立場にある、

C 米国およびその連合国が直ちに太平洋に展開しうる兵力、特に空軍兵力は十分に訓練さられ且動員さられた日本軍を阻止することが困難である。3,4か月の内に日本軍はビルマ、スマトラ、ジャワ等それから北にのびて千島に至る線で囲まれる全地域を占領しうるであろう

D ビルマ公路を切断された支那は孤立し和平を乞うであろう

E大英帝国の援助にやっきになり、更に真珠湾攻撃により痛撃を受けた米国は来るべき18カ月乃至2のうちには攻撃をとると十分なる兵力を動員しえない、この期間に円周防御線を堅固に構築し、且必要な前進飛行場並びに基地飛行場を建設することが可能となる。

Fこれら占領された強固な防御が戦争を継続する米国の決心をにぶらした反面、日本はポーキサイト、油等を獲得し、これらの物資を日本に輸出して加工し日本の生産並びに軍事機構を補給強化しうる

G民主主義国家としての米国の弱点は強烈に抵抗する日本の陸海軍人並びに飛行士によって与えられる大損害並びに連合国の脱落に直面しては全面的攻勢を維持することが出来ない。したがって米国は妥協して日本が最初に占領した地域の領有を許すであろう

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 報告書のAからGをみてどう感じられたでしょうか。

 ほとんど皆、間違っています。

 しかし、「開戦並びにフィリピン等に侵攻するという最終的決定は重要な地位にある全陸海軍指揮官並びに政府要人の完全なる意見の一致と積極的な承認によって定められた」のです。

 では当時、AからGの結論になるのは当然のことだったのでしょうか。

 真珠湾攻撃の翌日ルーズベルト大統領は議会で対日宣戦を求める演説をしています。

「昨日、1941年12月7日という日は屈辱のもとに生きる日となるでしょう。この日にアメリカ合衆国は日本帝国の海・空軍の意図的な攻撃に突然さらされたのです。

 合衆国はかの国と平和的な状態にありました。そして日本の懇願のもと合衆国は、太平洋の平和維持を目指して日本政府及び天皇と交渉中であったのです。 (省略)

 陸海軍の最高指揮官として私は、国家防衛の為あらゆる手段を取るように命令を発しました。この措置は我々に対する攻撃がどのようなものであったかを全国民に常に思い出させることでしょう。

 この計画的な侵略を打ち負かす事にどれほど長い時間がかかろうとも、アメリカの民はその正義の力のもと、必ずや勝利を収めるでしょう。

 私は、我々はただ自国を護るだけではなく、このような形の危機が二度と我々を脅かす事のないようにしなければならないと主張致します。この主張を受けての議会と国民の意志は、もとより私は承知しております。」

 ルーズベルト大統領は「打ち負かす事にどれほど長い時間がかかろうとも、アメリカの民はその正義の力のもと、必ずや勝利を収めるでしょう」と言っています。「このような形の危機が二度と我々を脅かす事のないようにしなければならない」と言っています。

 こうした ルーズベルト大統領の発言は決して予想外のものではありません。当時の米国指導者層の発言をみれば、当然行う発言です。

 1941年8月ルーズベルト大統領とチャーチル首相が発表した太平洋憲章では、「“ナチ”の暴虐の最終的破壞の後」という文言が入っています。これはナチだけではなくて、3国同盟の日本も入ります。

しかし日本の評価は「民主主義国家としての米国の弱点は強烈に抵抗する日本の陸海軍人並びに飛行士によって与えられる大損害並びに連合国の脱落に直面しては全面的攻勢を維持することが出来ない。したがって米国は妥協して日本が最初に占領した地域の領有を許すであろうこと」と180度逆のことを述べています。

嘘なのです。

当時でも嘘であることが解るのです。

まさに「嘘だ」と解ることをあたかも事実のようにして推し進める、この体質が真珠湾攻撃に突き進んだ一番の問題と思います。

実はその現象は、正に、今の日本です。

集団的自衛権、TPP,、原発再稼働、消費税等に使っている論理と同じなのです。一番重要な論点を避ける。歪める。そしてありえない事実や、さして重要でない側面を強調し、本来執るべきでない政策を進める、それが今日の日本で強烈に復活しているのです。



 私達はどうして時の政権にやすやすと騙されるのでしょうか



 日本の指導者はどうして180度違うことを堂々と言えるのでしょう。

 そして国民はそれを唯々諾々と受け入れるのでしょう。

 最も明快にその回答を与えてくれたのが伊丹万作氏です。

伊丹万作氏は終戦のよく年1946年に「戦争責任者の問題」という論を発表しました。「騙される国民」を鋭く批判しました。

 主な論点を列挙します。

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・多くの人が、今度の戦争でだまされていたという。。おれがだましたのだといつた人間はまだ一人もいない。日本人全体が互にだましたりだまされたりしていた。

・新聞報道の愚劣さや、町会、隣組、警防団、婦人会といつたような民間の組織がいかに熱心にかつ自発的にだます側に協力していたか

・専横と圧制を支配者に許した国民の奴隷根性とも密接に繋がる

・我々は、いま政治的には一応解放された。しかしいままで、奴隷状態を存続せしめた責任を軍や警察や官僚にのみ負担させて、彼らの跳梁を許した自分たちの罪を真剣に反省しなかつたならば、日本の国民というものは永久に救われるときはないであろう。

・「だまされていた」といつて平気でいられる国民なら、おそらく今後も何度でもだまされるだろう。

「だまされていた」といつて平気でいられる国民なら、おそらく今後も何度でもだまされるだろう。

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 日本は今、伊丹万作氏がいう、「“だまされていた”といつて平気でいられる国民なら、おそらく今後も何度でもだまされるだろう」という時代に入っています。日本は戦前に似通った時代に入っているのです。

 伊丹万作氏と言ってもご存じない方がおいでになると思います。

 伊丹万作氏は映画監督、脚本家で日本映画の代表作『無法松の一生』の脚本を書いています。

彼は1946年9月21日に亡くなっていますから、「戦争責任者の問題」遺書のようなものです。