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「原発事故と『食』市場」・コミュニケーション・差別」五十嵐泰正著 "復活させるには?”

2018-06-15 00:18:18 | 本の紹介
・2017年8月に消費者庁が行った調査によれば、福島県産の食品を避けている人は13.2%に過ぎない。しかし一方で、コメのように震災前より安い価格帯で取引されたり、カツオのように出荷量が激減していたりする福島県産の農林水産物は、実際に現在でもある。コメは2015年以降は基準値(100ベクレル/kg)を超える放射性物質を含むコメが見つかっていない。にもかかわらず、こうした状況が続くのは、やはり検査体制や放射線リスクを適切に理解していない、「無知な消費者の責任」なのだろうか。

・「風評」被害のもう一つの重要な要素である価格低下を見ていくと、賠償の存在が大きな影を落としているという指摘も多い。原発事故と相当因果関係が認められる場合、取引数量の減少または取引価格の低下による減収分を、「いわゆる風評被害」に係る営業損害として賠償を請求できる。そうした状況下で、賠償を受けとれる被災地の農林水産物に対して、強い価格下落の圧力が働く。買い手の量販店や小売店は、生産者の賠償金需給を前提として厳しい価格交渉を行い、生産者や加工業者の側も、買い叩きを受け入れやすくなってしまうのだ。

・カツオ漁業と福島県
早い時期から県内の漁業者が本格操業を開始いしている業種がカツオである。震災前はいわき市の小名浜港とその北約4kmに位置する中之作港の二港でほぼ全量が絞められていた。漁獲水域の確定が困難なカツオの場合、水揚げ港の所在する都道府県を産地とする例外規定での表示となることが、商売慣行上根強いのだ。
震災以降、福島県産のカツオは、築地市場に出荷しても買い手がつかなかった。小名浜港水揚げより高い銚子港に水揚げされるようになった。

・放射線をめぐるコミュニケーションで特に重要なのは、一見とりとめのない不安の背後にある悩みを理解し、いま求めている本当のニーズをくみ取ろうとする対話の力だという。

・福島県産品を意識して避ける消費者が4年間で約6%しか減っていないという消費者庁の調査結果に注目すれば、現実的に考えて、どんなにコミュニケーションを尽くしてもなお、中長期的に10%程度の消費者が福島県産品を避け続けるという可能性も考えられる。

・ハードルを下げてゆくこと
1)特に悪質な差別につながりやすいデマを科学とは別軸の論理で排除したうえで、
2)正常な判断を狂わせるデマを科学的知見から批判し、その発信源の責任を厳しく問うと同時に
3)タブー化の弊害を避けるため、異なるリスク判断に基づく選択を相互尊重のうえで対話を模索する。

感想
政府が出している基準は下回っているので、地元としては”なぜ販売が戻らないのか?”との思いが強いのでしょう。

基準を超えていると良くない。
基準を下回っていると問題ない。
しかし、この基準で0/100になるのではなく、連続なのだと思います。
どこかで基準を設けないとならないのです。

健康診断でのX線検査。
予防注射。
メリットとデメリットがあり、メリットがデメリットを越えたらデメリットがあってもそれを選択します。

ところが、食べ物は他にもあるので、基準内であってもわずかなデメリットがあっても選択するメリットがないのでしょう。
それと、政府が出している基準に対して、政府への信頼がないからもあると思います。
原発は安全だと強調してきた自民党政府、それが嘘だったことを知ったのですから。
エイズの非加熱製剤も問題ないと言ってきました。
そして森友学園、加計学園問題。
防衛庁の日誌。
政府のことが信用できないことも、元に復活しない背景にあるように思います。