https://webronza.asahi.com/politics/articles/2022030200005.html コロナ対策徹底批判【第四部】~上昌広・医療ガバナンス研究所理事長インタビュー⑰ 佐藤章 ジャーナリスト 元朝日新聞記者 五月書房新社編集委員会委員長 2022年05月12日 論座
この国の「専門家」と称する人たちはコロナウイルス対策をほとんどすべて間違えた。今も間違え続けているが、その過ちを決して認めようとしない。過去の過ちを弥縫(びほう)するごまかしの「対策」を提言し、自民党政権はその「対策」を黙認してきた。誤った「対策」の発信源である厚生労働省の医系技官を取材する厚労省記者クラブの医療記者たちの批判の目は鈍く、「感染症ムラ」に棲息(せいそく)する「専門家」は国民を誤導し、メディアで素人のような「解説」を続ける。
絶望的な「怠惰トライアングル」の下で、日本は世界の流れから決定的に取り残されている。臨床医でありながら世界最新の医療知識を渉猟し、内外の医療界にも詳しい医療ガバナンス研究所理事長の上昌広氏に、この国の「専門家」のあり方について具体的に話を聞いた。
「感染症ムラ」の本音そのままのコメント
――政府の分科会会長の尾身(茂・地域医療機能推進機構理事長)さんや会長代理の脇田(隆字・国立感染症研究所所長)さん、押谷(仁・東北大学大学院教授)さんたちについてはこれまでいろいろ話をお聞きしましたが、もう一人、川崎市健康安全研究所所長の岡部信彦さんもこの分科会とその前の専門家会議に顔を出していますね。岡部さんは2020年3月10日に東京・内幸町の日本記者クラブで記者会見をしているのですが、ぼくもそれに参加して質問したんですよ。
私のメモによると、私の質問と岡部氏の答えは次のようなものであった。
――日本の検査体制は韓国とは対照的に見える。韓国は積極的にPCR検査をして積極的にコロナウイルスを抑え込んでいこうとする考えのようだが、日本の場合はPCR検査をあまりしないで、自粛を要請するスタイルだ。
今、検査を受けられずに自宅で熱に苦しむ人たちを指して「検査難民」という言葉まで出てきているが、医療の原則から言えば韓国のやり方の方が理にかなっているのではないか。
岡部 日本では発熱すると90%以上の人が検査を受ける。それで検査というものに非常に重きを置くわけだが、インフルエンザを見ても、症状が出ていないのに陽性の結果が出る人もいる。だから、その人が陰性だったからと言って大丈夫とは医学的には言い切れない。そういう検査の限界部分を知らなければならない。
韓国が、感度とか時間とかどのくらいの検査をしているのかわからないが、日本の場合は相当厳密な体制でやっている。
心配だという人も含めて検査をやるということになると全部やることになってしまう。それは不可能だ。だから私は、少なくとも症状のある人が検査の対象になるのではないか、と申し上げている。
岡部さんは別のインタビューに対しても「私ならば何を重視するかと言えば、重症者の早期発見と早期治療、それによる早期の拡大予防です。軽い人も症状のない人もすべからく心配だから検査をしていくということはやめた方がいい」(2020年1月30日、バズフィードジャパン)と言ったり、「(流行が長引いた)その時には症状が軽い人には目をつぶるという覚悟が社会になくてはなりません」(同3月6日、同)と語ったりしています。
PCR検査を抑制していこうという「感染症ムラ」の本音をそのまま出したようなコメントです。軽症者でも無症状者でも感染させてしまうことがわかっている現在から見れば異様なほど無意味な答えですが、当時でも「検査と隔離」という感染症対策の基本を踏み外したコメントですね。
上昌広 徹頭徹尾、患者目線ゼロ、無意味なコメントです。私は保健所長から聞いていますが、感染研ではなくて保健所のPCR検査というのは、コンタミネーション(混入)で失敗しまくって、擬陽性がいっぱい出るんです。PCR検査というのは感度が高いので、簡単に他の異物のコンタミで汚染させてしまうんですね。だから、検査センターとかは完全な機械化をしたりして、極力汚染を防いでいるんですね。だけど、保健所なんかはそういうところに投資できないので無理なんですよ。
岡部さんはこういう事情を本当に知らないのか、あるいは強弁しているのか、保健所がしっかりしているのに検査会社はいい加減だと、何の根拠もなく言い続けてきたんです。テレビはそれをそのまま流しているんですよ。
地方衛生研究所の「法定化」を目指したワケ
――岡部さんは東京慈恵医大を卒業して、小児科医や米国のヴァンダービルド大学で研究員などをした後、感染研に迎えられるんですね。そして、感染研の感染症情報センターのセンター長から現在の川崎市健康安全研究所所長に就任します。
この川崎市の研究所というのは地方衛生研究所(地衛研)の一つですよね。ということは、「感染症ムラ」の中でよくあるパターンである、感染研から地衛研への天下りの一つと見てもいいのでしょうか。
上 そうです。岡部さんがよく言っていたのは、とにかく地衛研の法的根拠をしっかり見つけなさい、ということです。地衛研というのは大臣通知か何かが根拠になっていて、法的根拠がない。つまり、自治体は地衛研を置いても置かなくてもいい。岡部さんが言いたいのは、それをしっかり法的根拠に基づくものにして、天下り先を増やしなさいということです。
――記者会見で岡部さんがちょっと言ったことを記憶しているんですが、「地方の研究所をもっと充実させる、それが私の仕事だったんだけども、いまだそれを果たせず忸怩(じくじ)たる思いがある」というような趣旨のことをちょこっと話していました。
これは、天下り先をもっとしっかり確保しろという意味だったのですか。
上 そういうことです。政府への提言書で「地衛研の法定化」という言葉が入ったこともありますよ、たしか。それをやれば天下り先が増える。「感染症ムラ」の人たちは本当にそういうことを考えていますよ。
――岡部さんは2019年度に3330万円の科研費をもらってますよね。岡部さんは研究をされているのでしょうか。
上 こんなものは普通、もらわないですよ。それに値する研究をしているとは思えません。
――岡部さんと言えば「感染症ムラ」の中でも“顔役”と見られています。記者会見が終わった後で、マスコミ各社やフリーランスの記者たちが岡部さんと名刺交換するために長い列を作りました。
ぼくも名刺交換した後、記者たちが一言どういう会話をするか関心があったので岡部さんの隣でずっと聞いていたんですが、皆さん「岡部さんとお近づきになりたい」というような質問ばかりで、やはり日本では「ムラ」の顔役は強いんだな、と改めて感じました。最後に「インタビューを受けてくれませんか」とお願いしたんですが、岡部さんは「インタビューの中身にもよりますね」と警戒していましたね。
上 怖いからイヤなんでしょう。
――岡部さんは「症状が軽い人には目をつぶるという覚悟が社会になくてはなりません」というようなものすごい発言をしています。しかし、症状が軽い人に目をつぶってしまったら、そこから感染がどんどん広がってしまうじゃないですか。ちょっと考えただけでも矛盾に気が付くようなことをどうして言うのでしょうか。
上 めちゃくちゃですね。こういうことは臨床医であれば、絶対に言ってはいけません。やはり異常だと思います。捻じ曲がったエリート意識としか言いようがないですね。
舘田・東邦大学教授の驚くべき発言
拡大衆院内閣委の参考人質疑で発言する日本感染症学会理事長の舘田一博・東邦大教授=2021年1月29日
――それから、分科会にも専門家会議にも入った舘田一博・東邦大学教授についてもお聞きしたいのですが、この人の言動も驚くほどおかしいんじゃないですか。前の日本感染症学会の理事長だったんですが、『日経メディカル』2020年4月6日号でこんなことを言っているんですよ。
「PCR検査については、原則、『入院治療の必要な肺炎患者で、ウイルス性肺炎を強く疑う症例』に対して行うべきとしており、軽症者への検査は推奨していません。『心配だから検査してほしい』と言われて軽症例を全て検査していては、それこそ医療崩壊につながりかねません」
前の岡部さんの発言と同工異曲ですね。しかし「医療崩壊」を心配するのなら、軽症者への検査を徹底しても「崩壊」しないだけの医療体制の再構築に力を尽くすべきではないでしょうか。軽症者への検査をしなければ、コロナウイルスは日本社会を跋扈し放題になってしまうじゃないですか。これが日本感染症学会理事長の発言なのかと思ってしまいます。
上 その通りだと思います。
――さらに驚いたのは、日本感染症学会そのものが2020年4月2日に舘田さんの発言と同趣旨の提言を出していたんですね。
「重症者の治療体制を維持するため、軽症者に対してはPCR検査を推奨せず、自宅安静による対応を求める」と。これは真に驚愕すべき内容ではないですか。軽症者を放っておけばそのうちの何割かは重症者に移行するわけだし、自宅に放置したその軽症者から、家族を通じて社会全体にコロナウイルスが広がってしまいます。
上 その通りです。感染症学会はその提言をホームページから消したようですよ。ネットには残っていますけど、ホームページからはリンクできないようにしましたね。あまりに格好悪いと思ったんでしょう。
――この提言を見た時、ぼくは本当に驚きました。
上 笑えますね。感染症を専門にしている知人は驚き、あきれ果てていましたよ。
――しかし、日本感染症学会は日本全国8000人以上の感染症専門家が集まっている学会なわけでしょう。それが、こんなデタラメな提言を出すというのは前代未聞ではないですか。
上 本当にそこなんですよ。つまり、デタラメな人がトップをやれば、デタラメな結果になるということなんです。
――誰が理事長かということでそんなに変わるものなんですか。
上 変わります。日本では極めて属人的な問題なんです。海外ではこういうことはあまりないです。外国のテレビで、感染症学会の理事長が政府審議会の役員になっているなんて見たことないでしょう。
この形は日本の戦争中、統制経済を進めるために始めたんです。業界団体を束ねると、統制するには楽じゃないですか。本来は医師一人一人に発しなければならないんだけれども、理事長一人に言えばいい、という形なんです。
そうすれば感染症のドクターの総意なんか必要ないんです。たとえば理事長が勲章が欲しいと思えば、その理事長個人の思いで役人に寄り添って行ってしまうんですよ。この国の科学の弱いところですよね。
――全然だめな体制ですね。
製薬企業から講演料など多額のお金が……
上 この表を見てください。これは「探査報道」を目指す「Tansa」と私が理事長の「医療ガバナンス研究所」が共同で作った「製薬マネーデータベース」です。
「Tansa」は2017年2月に前身のワセダクロニクルとしてスタート。朝日新聞社会部や特別報道部に在籍していた渡辺周氏を編集長として、訴訟リスクや時間、手間暇のかかる取材を基にした「調査報道」を第一に掲げている。「製薬マネーデータベース」の作成には3000時間をかけ、製薬企業から医学関係の大学教授などに渡った資金がすぐに検索できるようになっている。
舘田さんには、2018年の1年間で製薬企業の講演料などで合計852万円が渡っていますね。講師やコンサルティング、原稿執筆や監修などで合計83件です。薬屋のアルバイトで大変にお忙しいのでしょう。
これで大学の教授や感染症学会の理事長をやっていたわけですから。政府の分科会だか専門家会議だかに出ている時間はあるんでしょうか。コロナウイルスのことを考えたり研究したりする時間なんてないでしょう。
こういう人は分科会から外さなければいけませんね。それに、お金をもらっている「製薬会社ランキング」を見てください。トップのファイザーから284万円、続いてアステラス薬品から85万円、第一三共から82万円などと続きますね。
――ファイザーからこんなにもらってるんですか。
上 そうです。ファイザーからこんなにもらってる人がファイザーのワクチンの評価をしてはだめでしょう。
――本当ですね。これは完璧におかしい。
上 こんなものもありますよ。ベッドなど寝具の会社とメディカルアドバイザー契約を結んだ、というようなことが公表されています。朝日新聞の「GLOBE+」というウェブメディアにも、舘田さんのコメントとともに寝具のことが出ていますね。
――小さく「PR」と出ていますね。一瞬「ステマ」かと思いました。
上 布団屋の宣伝でも何でもやるわけです。
――そういう人がどうして日本感染症学会の理事長になれるんでしょうか。
上 よくわかりませんが、薬屋さんからお金をひいてくることができるからでしょうか。そして、布団屋でも何でも、次から次へとアドバイザー契約を結んでいるんです。
「製薬マネーデータベース」によれば、2018年に舘田氏がお金を受け取った製薬企業はファイザーを筆頭に全部で15社。全体の医師平均3社に比べて圧倒的に多い。同じように、受け取り件数は医師平均3.9件に対して舘田氏は83件。受け取り金額は医師平均28万円に対して852万円だった。受け取り製薬マネーに関して舘田氏は突出している、と言える。
専門家の匂いがしない発言
――これはひどいですね。しかし、マスコミはこういうことを知らないようです。舘田さんは、テレビで専門家然として素人がしゃべるようなことをしゃべっているんですね。
上 あの人たちの話を聞いていて、専門家の匂いがしないんですよ。尾身さんとか岡部さんとか舘田さんは本当におかしいと思いますよ。たとえばコロナウイルス対策を通じて世界は決定的に変わってきてしまっているのに、日本はこういう人たちのせいで、決定的にダメージを食らっているんです。
――分科会の構成メンバーを見ても、あとはもう感染症の専門外の人たちばかりですから。絶望としか言いようがないですね。
上 あとは基本的に各組織の当て職ですから。医系技官制度をなくしてしまわなければいけないんです。こういうメンバーを選んでいるのは医系技官自身ですから。医系技官そのものである尾身さんのような人は淘汰されていく仕組みに変えないとだめなんです。
前にも言いましたが、医系技官制度というのは「天下の裏口入学」です。この制度に医系技官はしがみつき、政治家や記者たちが寄り添っていく。これが日本の今の現実です。尾身さんや岡部さん、舘田さんというような人たちが成功事例となるので、優秀な若い人はイヤになっちゃっています。
――日本にとって本当にマイナスですね。
上 「感染症ムラ」に棲むこういう人たちの素顔を示さないと、この問題は見えません。覚悟もなければ力量もない。それなのに、なぜこんな責任あるポストに就いているのでしょうか。
新型コロナ「専門家」・医系技官と政治家の隠微な関係~上昌広氏に聞く
コロナ対策徹底批判【第四部】~上昌広・医療ガバナンス研究所理事長インタビュー⑯
感想;
医系技官とお抱え専門家は自分たちのことを国民より優先し、それに従う政治のトップ、そして犠牲者が国民というようです。
政治を変えないと胡坐をかいてふんぞり返っているのでしょ。
衆議院議長のお給料がたった100万円/月と発言した細田氏。
コロナで困窮者が増え、自殺者も増えているというのに。
この国の「専門家」と称する人たちはコロナウイルス対策をほとんどすべて間違えた。今も間違え続けているが、その過ちを決して認めようとしない。過去の過ちを弥縫(びほう)するごまかしの「対策」を提言し、自民党政権はその「対策」を黙認してきた。誤った「対策」の発信源である厚生労働省の医系技官を取材する厚労省記者クラブの医療記者たちの批判の目は鈍く、「感染症ムラ」に棲息(せいそく)する「専門家」は国民を誤導し、メディアで素人のような「解説」を続ける。
絶望的な「怠惰トライアングル」の下で、日本は世界の流れから決定的に取り残されている。臨床医でありながら世界最新の医療知識を渉猟し、内外の医療界にも詳しい医療ガバナンス研究所理事長の上昌広氏に、この国の「専門家」のあり方について具体的に話を聞いた。
「感染症ムラ」の本音そのままのコメント
――政府の分科会会長の尾身(茂・地域医療機能推進機構理事長)さんや会長代理の脇田(隆字・国立感染症研究所所長)さん、押谷(仁・東北大学大学院教授)さんたちについてはこれまでいろいろ話をお聞きしましたが、もう一人、川崎市健康安全研究所所長の岡部信彦さんもこの分科会とその前の専門家会議に顔を出していますね。岡部さんは2020年3月10日に東京・内幸町の日本記者クラブで記者会見をしているのですが、ぼくもそれに参加して質問したんですよ。
私のメモによると、私の質問と岡部氏の答えは次のようなものであった。
――日本の検査体制は韓国とは対照的に見える。韓国は積極的にPCR検査をして積極的にコロナウイルスを抑え込んでいこうとする考えのようだが、日本の場合はPCR検査をあまりしないで、自粛を要請するスタイルだ。
今、検査を受けられずに自宅で熱に苦しむ人たちを指して「検査難民」という言葉まで出てきているが、医療の原則から言えば韓国のやり方の方が理にかなっているのではないか。
岡部 日本では発熱すると90%以上の人が検査を受ける。それで検査というものに非常に重きを置くわけだが、インフルエンザを見ても、症状が出ていないのに陽性の結果が出る人もいる。だから、その人が陰性だったからと言って大丈夫とは医学的には言い切れない。そういう検査の限界部分を知らなければならない。
韓国が、感度とか時間とかどのくらいの検査をしているのかわからないが、日本の場合は相当厳密な体制でやっている。
心配だという人も含めて検査をやるということになると全部やることになってしまう。それは不可能だ。だから私は、少なくとも症状のある人が検査の対象になるのではないか、と申し上げている。
岡部さんは別のインタビューに対しても「私ならば何を重視するかと言えば、重症者の早期発見と早期治療、それによる早期の拡大予防です。軽い人も症状のない人もすべからく心配だから検査をしていくということはやめた方がいい」(2020年1月30日、バズフィードジャパン)と言ったり、「(流行が長引いた)その時には症状が軽い人には目をつぶるという覚悟が社会になくてはなりません」(同3月6日、同)と語ったりしています。
PCR検査を抑制していこうという「感染症ムラ」の本音をそのまま出したようなコメントです。軽症者でも無症状者でも感染させてしまうことがわかっている現在から見れば異様なほど無意味な答えですが、当時でも「検査と隔離」という感染症対策の基本を踏み外したコメントですね。
上昌広 徹頭徹尾、患者目線ゼロ、無意味なコメントです。私は保健所長から聞いていますが、感染研ではなくて保健所のPCR検査というのは、コンタミネーション(混入)で失敗しまくって、擬陽性がいっぱい出るんです。PCR検査というのは感度が高いので、簡単に他の異物のコンタミで汚染させてしまうんですね。だから、検査センターとかは完全な機械化をしたりして、極力汚染を防いでいるんですね。だけど、保健所なんかはそういうところに投資できないので無理なんですよ。
岡部さんはこういう事情を本当に知らないのか、あるいは強弁しているのか、保健所がしっかりしているのに検査会社はいい加減だと、何の根拠もなく言い続けてきたんです。テレビはそれをそのまま流しているんですよ。
地方衛生研究所の「法定化」を目指したワケ
――岡部さんは東京慈恵医大を卒業して、小児科医や米国のヴァンダービルド大学で研究員などをした後、感染研に迎えられるんですね。そして、感染研の感染症情報センターのセンター長から現在の川崎市健康安全研究所所長に就任します。
この川崎市の研究所というのは地方衛生研究所(地衛研)の一つですよね。ということは、「感染症ムラ」の中でよくあるパターンである、感染研から地衛研への天下りの一つと見てもいいのでしょうか。
上 そうです。岡部さんがよく言っていたのは、とにかく地衛研の法的根拠をしっかり見つけなさい、ということです。地衛研というのは大臣通知か何かが根拠になっていて、法的根拠がない。つまり、自治体は地衛研を置いても置かなくてもいい。岡部さんが言いたいのは、それをしっかり法的根拠に基づくものにして、天下り先を増やしなさいということです。
――記者会見で岡部さんがちょっと言ったことを記憶しているんですが、「地方の研究所をもっと充実させる、それが私の仕事だったんだけども、いまだそれを果たせず忸怩(じくじ)たる思いがある」というような趣旨のことをちょこっと話していました。
これは、天下り先をもっとしっかり確保しろという意味だったのですか。
上 そういうことです。政府への提言書で「地衛研の法定化」という言葉が入ったこともありますよ、たしか。それをやれば天下り先が増える。「感染症ムラ」の人たちは本当にそういうことを考えていますよ。
――岡部さんは2019年度に3330万円の科研費をもらってますよね。岡部さんは研究をされているのでしょうか。
上 こんなものは普通、もらわないですよ。それに値する研究をしているとは思えません。
――岡部さんと言えば「感染症ムラ」の中でも“顔役”と見られています。記者会見が終わった後で、マスコミ各社やフリーランスの記者たちが岡部さんと名刺交換するために長い列を作りました。
ぼくも名刺交換した後、記者たちが一言どういう会話をするか関心があったので岡部さんの隣でずっと聞いていたんですが、皆さん「岡部さんとお近づきになりたい」というような質問ばかりで、やはり日本では「ムラ」の顔役は強いんだな、と改めて感じました。最後に「インタビューを受けてくれませんか」とお願いしたんですが、岡部さんは「インタビューの中身にもよりますね」と警戒していましたね。
上 怖いからイヤなんでしょう。
――岡部さんは「症状が軽い人には目をつぶるという覚悟が社会になくてはなりません」というようなものすごい発言をしています。しかし、症状が軽い人に目をつぶってしまったら、そこから感染がどんどん広がってしまうじゃないですか。ちょっと考えただけでも矛盾に気が付くようなことをどうして言うのでしょうか。
上 めちゃくちゃですね。こういうことは臨床医であれば、絶対に言ってはいけません。やはり異常だと思います。捻じ曲がったエリート意識としか言いようがないですね。
舘田・東邦大学教授の驚くべき発言
拡大衆院内閣委の参考人質疑で発言する日本感染症学会理事長の舘田一博・東邦大教授=2021年1月29日
――それから、分科会にも専門家会議にも入った舘田一博・東邦大学教授についてもお聞きしたいのですが、この人の言動も驚くほどおかしいんじゃないですか。前の日本感染症学会の理事長だったんですが、『日経メディカル』2020年4月6日号でこんなことを言っているんですよ。
「PCR検査については、原則、『入院治療の必要な肺炎患者で、ウイルス性肺炎を強く疑う症例』に対して行うべきとしており、軽症者への検査は推奨していません。『心配だから検査してほしい』と言われて軽症例を全て検査していては、それこそ医療崩壊につながりかねません」
前の岡部さんの発言と同工異曲ですね。しかし「医療崩壊」を心配するのなら、軽症者への検査を徹底しても「崩壊」しないだけの医療体制の再構築に力を尽くすべきではないでしょうか。軽症者への検査をしなければ、コロナウイルスは日本社会を跋扈し放題になってしまうじゃないですか。これが日本感染症学会理事長の発言なのかと思ってしまいます。
上 その通りだと思います。
――さらに驚いたのは、日本感染症学会そのものが2020年4月2日に舘田さんの発言と同趣旨の提言を出していたんですね。
「重症者の治療体制を維持するため、軽症者に対してはPCR検査を推奨せず、自宅安静による対応を求める」と。これは真に驚愕すべき内容ではないですか。軽症者を放っておけばそのうちの何割かは重症者に移行するわけだし、自宅に放置したその軽症者から、家族を通じて社会全体にコロナウイルスが広がってしまいます。
上 その通りです。感染症学会はその提言をホームページから消したようですよ。ネットには残っていますけど、ホームページからはリンクできないようにしましたね。あまりに格好悪いと思ったんでしょう。
――この提言を見た時、ぼくは本当に驚きました。
上 笑えますね。感染症を専門にしている知人は驚き、あきれ果てていましたよ。
――しかし、日本感染症学会は日本全国8000人以上の感染症専門家が集まっている学会なわけでしょう。それが、こんなデタラメな提言を出すというのは前代未聞ではないですか。
上 本当にそこなんですよ。つまり、デタラメな人がトップをやれば、デタラメな結果になるということなんです。
――誰が理事長かということでそんなに変わるものなんですか。
上 変わります。日本では極めて属人的な問題なんです。海外ではこういうことはあまりないです。外国のテレビで、感染症学会の理事長が政府審議会の役員になっているなんて見たことないでしょう。
この形は日本の戦争中、統制経済を進めるために始めたんです。業界団体を束ねると、統制するには楽じゃないですか。本来は医師一人一人に発しなければならないんだけれども、理事長一人に言えばいい、という形なんです。
そうすれば感染症のドクターの総意なんか必要ないんです。たとえば理事長が勲章が欲しいと思えば、その理事長個人の思いで役人に寄り添って行ってしまうんですよ。この国の科学の弱いところですよね。
――全然だめな体制ですね。
製薬企業から講演料など多額のお金が……
上 この表を見てください。これは「探査報道」を目指す「Tansa」と私が理事長の「医療ガバナンス研究所」が共同で作った「製薬マネーデータベース」です。
「Tansa」は2017年2月に前身のワセダクロニクルとしてスタート。朝日新聞社会部や特別報道部に在籍していた渡辺周氏を編集長として、訴訟リスクや時間、手間暇のかかる取材を基にした「調査報道」を第一に掲げている。「製薬マネーデータベース」の作成には3000時間をかけ、製薬企業から医学関係の大学教授などに渡った資金がすぐに検索できるようになっている。
舘田さんには、2018年の1年間で製薬企業の講演料などで合計852万円が渡っていますね。講師やコンサルティング、原稿執筆や監修などで合計83件です。薬屋のアルバイトで大変にお忙しいのでしょう。
これで大学の教授や感染症学会の理事長をやっていたわけですから。政府の分科会だか専門家会議だかに出ている時間はあるんでしょうか。コロナウイルスのことを考えたり研究したりする時間なんてないでしょう。
こういう人は分科会から外さなければいけませんね。それに、お金をもらっている「製薬会社ランキング」を見てください。トップのファイザーから284万円、続いてアステラス薬品から85万円、第一三共から82万円などと続きますね。
――ファイザーからこんなにもらってるんですか。
上 そうです。ファイザーからこんなにもらってる人がファイザーのワクチンの評価をしてはだめでしょう。
――本当ですね。これは完璧におかしい。
上 こんなものもありますよ。ベッドなど寝具の会社とメディカルアドバイザー契約を結んだ、というようなことが公表されています。朝日新聞の「GLOBE+」というウェブメディアにも、舘田さんのコメントとともに寝具のことが出ていますね。
――小さく「PR」と出ていますね。一瞬「ステマ」かと思いました。
上 布団屋の宣伝でも何でもやるわけです。
――そういう人がどうして日本感染症学会の理事長になれるんでしょうか。
上 よくわかりませんが、薬屋さんからお金をひいてくることができるからでしょうか。そして、布団屋でも何でも、次から次へとアドバイザー契約を結んでいるんです。
「製薬マネーデータベース」によれば、2018年に舘田氏がお金を受け取った製薬企業はファイザーを筆頭に全部で15社。全体の医師平均3社に比べて圧倒的に多い。同じように、受け取り件数は医師平均3.9件に対して舘田氏は83件。受け取り金額は医師平均28万円に対して852万円だった。受け取り製薬マネーに関して舘田氏は突出している、と言える。
専門家の匂いがしない発言
――これはひどいですね。しかし、マスコミはこういうことを知らないようです。舘田さんは、テレビで専門家然として素人がしゃべるようなことをしゃべっているんですね。
上 あの人たちの話を聞いていて、専門家の匂いがしないんですよ。尾身さんとか岡部さんとか舘田さんは本当におかしいと思いますよ。たとえばコロナウイルス対策を通じて世界は決定的に変わってきてしまっているのに、日本はこういう人たちのせいで、決定的にダメージを食らっているんです。
――分科会の構成メンバーを見ても、あとはもう感染症の専門外の人たちばかりですから。絶望としか言いようがないですね。
上 あとは基本的に各組織の当て職ですから。医系技官制度をなくしてしまわなければいけないんです。こういうメンバーを選んでいるのは医系技官自身ですから。医系技官そのものである尾身さんのような人は淘汰されていく仕組みに変えないとだめなんです。
前にも言いましたが、医系技官制度というのは「天下の裏口入学」です。この制度に医系技官はしがみつき、政治家や記者たちが寄り添っていく。これが日本の今の現実です。尾身さんや岡部さん、舘田さんというような人たちが成功事例となるので、優秀な若い人はイヤになっちゃっています。
――日本にとって本当にマイナスですね。
上 「感染症ムラ」に棲むこういう人たちの素顔を示さないと、この問題は見えません。覚悟もなければ力量もない。それなのに、なぜこんな責任あるポストに就いているのでしょうか。
新型コロナ「専門家」・医系技官と政治家の隠微な関係~上昌広氏に聞く
コロナ対策徹底批判【第四部】~上昌広・医療ガバナンス研究所理事長インタビュー⑯
感想;
医系技官とお抱え専門家は自分たちのことを国民より優先し、それに従う政治のトップ、そして犠牲者が国民というようです。
政治を変えないと胡坐をかいてふんぞり返っているのでしょ。
衆議院議長のお給料がたった100万円/月と発言した細田氏。
コロナで困窮者が増え、自殺者も増えているというのに。