ヤンのことばかり書いて来たので、帝国のことも書こう。
若くして帝国で元帥の座にのぼりつめたラインハルトはこんなことを考える。
参謀がほしい──ラインハルトの願望はこのところ強まる一方だった。
彼の望む参謀とは、必ずしも軍事上のものとはいえない。
それならラインハルト自身とキルヒアイスで充分だ。
むしろ政略・謀略方面の色彩が濃い。
これからは、宮廷に巣喰う貴族どもを相手に、その種の闘争が、はっきり言えば陰謀やだましあいが増えるだろう、とラインハルトは予想している。
とすると、その方面における相談の相手としてはキルヒアイスでは向いていないのだ。
これは知能の問題ではなく性格や思考法の問題なのである。
政治的にのし上がっていくためには陰謀やだましあいが必要なんですね。
これを似合う相談相手としてキルヒアイスは善良すぎるとラインハルトは考えている。
そんなラインハルトの心の中を読んで登場したのがオーベルシュタインだった。
ここでのラインハルトとオーベルシュタインの駆け引きが面白い。
オーベルシュタインは言う。
「私は憎んでいるのです。ルドルフ大帝と彼の子孫と彼の生みだしたすべてのものを……ゴールデンバウム朝銀河帝国そのものをね」
「銀河帝国、いや、ゴールデンバウム王朝は滅びるべきです。
可能であれば私自身の手で滅ぼしてやりたい。
ですが、私にはその力量がありません。
私にできることは新たな覇者の登場に協力すること、ただそれだけです。
つまりあなたです。帝国元帥、ローエングラム伯ラインハルト」
ラインハルトもゴールデンバウム王朝打倒を企んでいるのだが、
オーベルシュタインの誘いに簡単には乗らない。
もしかしたら罠かもしれないからだ。
だから言う。
「キルヒアイス、オーベルシュタイン大佐を逮捕しろ。
帝国に対する不逞な反逆の言辞があった。
帝国軍人として看過できぬ」
これに対してオーベルシュタイン。
「しょせん、あなたもこの程度の人か……。
けっこう、キルヒアイス中将ひとりを腹心と頼んで、あなたの狭い道をお征きなさい」
ここで原作では地の文でこう書いている。
半ば演技、半ば本心の発言だった。
オーベルシュタインは、ラインハルトが自分を試しているのか、本心で謀反人と考えているのかを探っているのだ。
もしラインハルトが本心で謀反人と考えているのなら、オーベルシュタインの賭けは失敗したことになる。
オーベルシュタインは、逮捕を命じられたキルヒアイスにも語りかける。
「キルヒアイス中将、私を撃てるか。
私はこの通り丸腰だ。それでも撃てるか?
撃てんだろう。貴官はそういう男だ。
尊敬に値するが、それだけで覇業をなすに充分とは言えんのだ。
光には影がしたがう……。
しかしお若いローエングラム伯にはまだご理解いただけぬか」
オーベルシュタイン、カッケー!
「お若いローエングラム伯にはまだご理解いただけぬか」と言ってのけた!
もちろんラインハルトは「光には影がしたがう」ことを理解している。
冒頭に書いたように「影」を求めていたからオーベルシュタインを参謀に抜擢する。
自分の本心を見抜いて賭けに出たオーベルシュタインの手腕も評価したことだろう。
権力闘争では「汚れ仕事」をする人間が必要なんですね。
リアルな政治学だ。
日本の野党にはこれが欠けている……。
一方、与党もなあ……。
世界でおこなわれている「汚れ仕事」と比べたら、底が浅くてお子ちゃまレベルだろう。
話を『銀英伝』に戻すと。
オーベルシュタインは自分の能力と限界がわかっている。
「私にはその力量がありません。
私にできることは新たな覇者の登場に協力すること、ただそれだけです」
キルヒアイスが権謀術数に向かないように、
オーベルシュタインが覇者になれないように、
人には能力の限界と役割がある。
田中芳樹先生の人間観は実にクールだ。
若くして帝国で元帥の座にのぼりつめたラインハルトはこんなことを考える。
参謀がほしい──ラインハルトの願望はこのところ強まる一方だった。
彼の望む参謀とは、必ずしも軍事上のものとはいえない。
それならラインハルト自身とキルヒアイスで充分だ。
むしろ政略・謀略方面の色彩が濃い。
これからは、宮廷に巣喰う貴族どもを相手に、その種の闘争が、はっきり言えば陰謀やだましあいが増えるだろう、とラインハルトは予想している。
とすると、その方面における相談の相手としてはキルヒアイスでは向いていないのだ。
これは知能の問題ではなく性格や思考法の問題なのである。
政治的にのし上がっていくためには陰謀やだましあいが必要なんですね。
これを似合う相談相手としてキルヒアイスは善良すぎるとラインハルトは考えている。
そんなラインハルトの心の中を読んで登場したのがオーベルシュタインだった。
ここでのラインハルトとオーベルシュタインの駆け引きが面白い。
オーベルシュタインは言う。
「私は憎んでいるのです。ルドルフ大帝と彼の子孫と彼の生みだしたすべてのものを……ゴールデンバウム朝銀河帝国そのものをね」
「銀河帝国、いや、ゴールデンバウム王朝は滅びるべきです。
可能であれば私自身の手で滅ぼしてやりたい。
ですが、私にはその力量がありません。
私にできることは新たな覇者の登場に協力すること、ただそれだけです。
つまりあなたです。帝国元帥、ローエングラム伯ラインハルト」
ラインハルトもゴールデンバウム王朝打倒を企んでいるのだが、
オーベルシュタインの誘いに簡単には乗らない。
もしかしたら罠かもしれないからだ。
だから言う。
「キルヒアイス、オーベルシュタイン大佐を逮捕しろ。
帝国に対する不逞な反逆の言辞があった。
帝国軍人として看過できぬ」
これに対してオーベルシュタイン。
「しょせん、あなたもこの程度の人か……。
けっこう、キルヒアイス中将ひとりを腹心と頼んで、あなたの狭い道をお征きなさい」
ここで原作では地の文でこう書いている。
半ば演技、半ば本心の発言だった。
オーベルシュタインは、ラインハルトが自分を試しているのか、本心で謀反人と考えているのかを探っているのだ。
もしラインハルトが本心で謀反人と考えているのなら、オーベルシュタインの賭けは失敗したことになる。
オーベルシュタインは、逮捕を命じられたキルヒアイスにも語りかける。
「キルヒアイス中将、私を撃てるか。
私はこの通り丸腰だ。それでも撃てるか?
撃てんだろう。貴官はそういう男だ。
尊敬に値するが、それだけで覇業をなすに充分とは言えんのだ。
光には影がしたがう……。
しかしお若いローエングラム伯にはまだご理解いただけぬか」
オーベルシュタイン、カッケー!
「お若いローエングラム伯にはまだご理解いただけぬか」と言ってのけた!
もちろんラインハルトは「光には影がしたがう」ことを理解している。
冒頭に書いたように「影」を求めていたからオーベルシュタインを参謀に抜擢する。
自分の本心を見抜いて賭けに出たオーベルシュタインの手腕も評価したことだろう。
権力闘争では「汚れ仕事」をする人間が必要なんですね。
リアルな政治学だ。
日本の野党にはこれが欠けている……。
一方、与党もなあ……。
世界でおこなわれている「汚れ仕事」と比べたら、底が浅くてお子ちゃまレベルだろう。
話を『銀英伝』に戻すと。
オーベルシュタインは自分の能力と限界がわかっている。
「私にはその力量がありません。
私にできることは新たな覇者の登場に協力すること、ただそれだけです」
キルヒアイスが権謀術数に向かないように、
オーベルシュタインが覇者になれないように、
人には能力の限界と役割がある。
田中芳樹先生の人間観は実にクールだ。