平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

相棒10 「フォーカス」~報道カメラマンの魂

2011年12月08日 | 推理・サスペンスドラマ
 特ダネを狙う報道カメラマンの殺害事件。
 このカメラマン・有沢広明(比留間由哲)は金のためなら、何でもする男?
 通り魔の犯行が行われていても写真を撮ることを優先する? 写真展を行うためにゆすりをする?
 しかし、実際は違っていた。
 通り魔の写真は撮ったが、被害者はピンぼけ。通行人にフォーカスしている。
 それは、外国人に暴行され、有沢の写真がきっかけて自殺した女性・内海佳苗のことが頭をよぎったから。
 あるいは無関心な通行人を告発したかったから。
 ゆすりも行なっておらず、持ってきた口止め料を返していた。
 写真展は自費。借金。
 仲間の報道カメラマンに拠れば、通常、報道カメラマンはスクープ写真を金にするだけで、写真展などやらないらしい。

 これらの行動を行っていた有沢の真意は何か?
 以下、ネタバレ。

 それは報道カメラマンとしての<良心><魂>。
 自分の写真で自殺した女性・内海佳苗への<謝罪>だった。
 有沢は佳苗のことで苦しんでいた。報道カメラマンとしての自分と葛藤していた。

 まず通り魔事件。
 有沢は、本当は通り魔の被害者助けに行きたかったのだが、スクープ写真で金を稼がなくてはならなかったので写真を撮った。
 良心を持った有沢がかろうじて出来たことは、被害者をピンぼけで写すことだった。
 
 そして写真展。
 有沢は、佳苗への<謝罪>を行おうとしていた。
 作品『罪』。
 それは、報道陣に囲まれる佳苗の写真→飛び降り自殺する佳苗の写真→自殺した佳苗の遺体を前でがっくり肩を落とす谷川(佐川満男)の写真→ブランコで笑っている佳苗の写真だった。
 有沢は、この四枚の写真を発表することで、<マスコミに曝される被害者の苦しみ>を描き、<謝罪>を行おうとしていたのだ。

 今回は、報道カメラマン・有沢の表と裏を描いた。
 お金目的のダーティな報道カメラマンの裏にあった<良心><表現者魂>。
 見事な人物描写だ。
 それがひとつのドラマにもなっている。

 推理ドラマとしても面白い。
 今回は事件の真相が二転三転、四転する。

 1. 有沢殺しの犯人として、口止め料300万を払おうとしていたストーカー男が容疑者として浮かび上がる。
 2. 真犯人の警官の谷川。通り魔事件を黙って見過ごしたことを有沢にゆすられたことによる犯行と断定される。
 3. 谷川の動機はゆすられたことではなかった。佳苗の遺体の写真が公開されることを妨げるための犯行だった。
 4. しかし、有沢が発表しようとしていたのは、前述の作品『罪』だった。

 といった具合だ。
 こんなふうに四転されると、作品はどんどん面白くなる。
 有沢の<報道カメラマンの魂>の描写といい、見事な作劇だと思います。

※追記
 有沢の表と裏を表す描写は他にもある。
 部屋に飾ってあった<佳苗の飛び降り自殺>の写真。
 神戸(及川光博)は、自分のスクープ写真を飾って悪趣味だと言ったが、実は有沢にとっては<戒め>だった。
 この写真を常に目にすることで、罪の意識を忘れないようにしていたのだ。



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