平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

「光る君へ」 第31回「月の下で」~『源氏物語』誕生! 桐壺のモデルは定子。一条天皇は何を思う?

2024年08月19日 | 大河ドラマ・時代劇
 まひろ(吉高由里子)、ついに『源氏物語』を書く!
 ここに至るまでに紆余曲折がありましたね。
『カササギ語り』は消失。
 根が暗くて鬱陶しいまひろだから逆に書ける『明るくて楽しい話』は
 帝に献上するには軽すぎるということで、まひろ自身がボツに。

 では帝にふさわしい物語とは何か?
「ご乱心も人ですから。人とは何なのでございましょうか?」
 まひろは人間を描きたいと考えた。
 清少納言(ファーストサマーウィカ)が宮廷の光輝く部分だけを書いたが、
 まひろはもっと深い人間の心を描きたいと考えた。
 だから道長(柄本佑)から帝のまわりの人たちのエピソードを聞いて取材した。
 そこで出て来たのが──

『いづれの御時にか、女御、更衣あまたさぶらひたまひけるなかに、
 いとやむごとなき際にはあらぬが、すぐれて時めきたまふありけり。
 はじめより我はと思ひ上がりたまへる御方がた、めざましきものにおとしめ嫉みたまふ』

『源氏物語』の桐壺のことだが、モデルは定子(高畑充希)ですよね。
・帝にとんでもなく愛された女性
・周囲から嫌われ妬まれた女性
 桐壺=定子だ。
 定子が周囲から嫌われ妬まれたのは出家した身でありながら帝の寵愛を受けたから。
 違っている点は、桐壺が「やむごとなき際にはあらぬ」身分の低い女性であること。

 まひろ、攻めましたね。
 道長も読んで「これはちょっと。帝の御機嫌を損なう……」とためらった。
 定子がモデルの物語に対して一条天皇(塩野瑛久)は
「何だ、これは? 定子との美しい思い出を穢す気か!」と瞬間的に思った事だろう。
 だが、ふたたび読み直そうとした。
 物語は人の心の奥底に届くんですよね。
 心を抉り、心に深く刻まれることもある。
 エッセイ(=枕草子)だと、それはなかなか難しい。
 帝の正式な評価は次回。

 ちなみに『源氏物語』では、この後桐壺は死んでしまうわけだが、次に帝の心を奪うのは藤壺。
 藤壺とは彰子(見上愛)のことなのだろう。
 …………………………………………………………

 まひろと道長は安定した関係になった。
 何でも気軽に話せる関係。
 何気ないひと言で相手の考えていることを見抜いてしまう関係。
 もはや、ここに身分の違いはない。
 永年連れ添った夫婦だ。

 たとえば
「俺の願いを初めて聞いてくれたな」
 さりげない言葉だが、ふたりの年月を感じさせる。

 直秀(毎熊克哉)はふたりの共通の思い出だ。
 直秀はふたりの心の中で生きている。

 賢子を膝に乗せた道長は、まひろに出会った頃の事を思い出しているのかもしれない。
 というか、道長は賢子が自分の娘であることを知らないのか。

「誰かが今俺が見ている月を一緒に見ていると願いながら、俺は月を見上げてきた」
 これはまひろにとってパワーワードだ。
 なぜならまひろも同じ思いで月を見上げていたから。
 ふたりは月を見て、遠く離れたお互いのことを考えていた。
 …………………………………………………………

 というわけで、まひろがついに歴史の表舞台に出て来た。
・『源氏物語』は宮中のベストセラーに!
・倫子にバレる?
・明子は病床で道長が「まひろ」とつぶやいたことを知っている……。
・彰子はまひろとの出会いでどう変わるのか?


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4 コメント

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Unknown (TEPO)
2024-08-19 15:16:24
今回は『源氏物語』執筆にいたる背景を描き込む回。
あかね(→和泉式部)から詳細な『枕草子』評を聞き、写本を借りて徹底研究。
『枕草子』を超える文学作品を意識するまひろを描くことで、大石女史自身の『枕草子』『源氏物語』評価を展開する覚悟なのでしょう。
その後、弟惟規に「自分らしさ」を問い、遂には道長から一条天皇および摂関家の人間像について取材。
私にとって印象的だったのは、「それは人だからじゃ、と亡き夫に言われたことがございます」とのひと言。
ちらっと登場した宣孝の人間理解の深さが今回の鍵だったように思います。

実を言うと、私は一条天皇については「幼少時から道隆一家に囲い込まれて定子を溺愛した」という冷淡な見方しかできず、定子についても「個人的には良識的な人」というミニマムな道徳的評価にとどまり、この二人には全く感情移入できていませんでした。
従来の大河ドラマは基本的に政治闘争―武士が主人公の場合には実際の戦闘も含めて―がメインで、視聴する側も作者の意向に乗って主人公に感情移入し、若干の道徳的感想―特に主人公が「闇落ち」した場合―を加味するくらいが基本でしたので。
おそらく、「文学論」を主題化するような大河ドラマは本作が初めてなのではないでしょうか。

今後は「人でおわす」と認められた一条天皇の心を変えることができるのか、という形で、『源氏物語』が『枕草子』をどう超えてゆくのかが描かれてゆくのでしょう。
>「これはちょっと。帝の御機嫌を損なう……」とためらった。
おそらく一条天皇も一筋縄で『源氏物語』を受け入れるのではなく、最初は抵抗を示すのでしょう。
強い薬には「拒絶反応」もあるでしょうから。
しかしながら、結局一条天皇は『源氏物語』にハマるのでしょう。
次週から、まひろは彰子の側に仕えることになるようです。
帝が『源氏物語』目当てに彰子のもとを訪れるようにすることが目当てのようです。
返信する
まひろとききょう (2020-08-15 21:49)
2024-08-19 20:16:55
これまで仲がよかったまひろとききょうの関係性が、これからどう変化していくのか、個人的にはやはりそこが気になります。
「光と影の両方を書かないと、人が書けない」と考えるまひろですが、おそらくこれからは、自分自身やききょうの「光と影」にも対処せざるを得なくなるでしょう、さて、どうなるのか、どうするのか…
ちょっと意地悪な視点かもしれませんが。
返信する
 (コウジ)
2024-08-20 08:58:40
TEPOさん

いつもありがとうございます。

>「それは人だからじゃ、と亡き夫に言われたことがございます」
帝も「人」なんですよね。
恋に迷い、政治を疎かにするのも人だから。
人の温もりを求めるのも人だから。
一条天皇はこの点に共感して『源氏物語』にハマるのかもしれません。

>「文学論」を主題化するような大河ドラマは本作が初めて
ですよね。
Xでどなたかが書かれていましたが、今までの大河の盛り上がるシーンはいくさのシーン。ところが今作では、今回のまひろが源氏物語を書くシーン。
いくさのシーンでなくてもクライマックスを作れるんですよね。
今後の大河の作家さんの力量が問われる時代がやって来ました。
今までと同じでは視聴者は物足りなくなってしまいます。

>帝が『源氏物語』目当てに彰子のもとを訪れるようにすることが目当てのようです。
そうなんですね。
彰子も『源氏物語』にハマって、帝と彰子は『源氏物語』をネタに話を始めるのかもしれませんね。
返信する
認め合う可能性も (コウジ)
2024-08-20 09:15:42
2020-08-15 21:49さん

いつもありがとうございます。

まひろとききょう。
同じ文学者として認め合う可能性もありますよね。

桐壺のモデルは定子だと思いますが、まひろは定子のつらさや哀しみを桐壺を通して描きました。
「そう。中宮様はおつらかったのよ」「こういう文学観もあるのね」とききょうも共感するかもしれません。

ただ「紫式部日記」で紫式部は清少納言のことを「才を鼻にかけた嫌な女性」と評しているようで、これを脚本の大石静さんがどう解釈し、料理するのか?

あるいは、まひろは実質「道長派」「彰子派」になるわけで、政治的な部分で、ききょうは反発するのかもしれません。
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