漢検一級 かけだしリピーターの四方山話

漢検のリピート受検はお休みしていますが、日本語を愛し、奥深い言葉の世界をさまよっています。

貫之集 080

2023-07-05 05:54:10 | 貫之集

こぬひとを したにまちつつ ひさかたの つきをあはれと いはぬよぞなき

来ぬ人を したに待ちつつ 久方の 月をあはれと いはぬ夜ぞなき

 

訪問して来ない人を内心で待ちながら、月が美しいから起きているのだと虚勢を言わない夜はないのです。

 

 一人で月を眺めながら、愛しい人の訪れを待つ女性の心中を詠んだ歌ですね。「久方の」は、ここでは「月」にかかる枕詞。「光」「天」「雨」「空」など、天空に関わる多くの語に掛かります。
 この歌は、拾遺和歌集(巻第十八 「雑賀」 第1195番)にも入集しています