こぬひとを したにまちつつ ひさかたの つきをあはれと いはぬよぞなき
来ぬ人を したに待ちつつ 久方の 月をあはれと いはぬ夜ぞなき
訪問して来ない人を内心で待ちながら、月が美しいから起きているのだと虚勢を言わない夜はないのです。
一人で月を眺めながら、愛しい人の訪れを待つ女性の心中を詠んだ歌ですね。「久方の」は、ここでは「月」にかかる枕詞。「光」「天」「雨」「空」など、天空に関わる多くの語に掛かります。
この歌は、拾遺和歌集(巻第十八 「雑賀」 第1195番)にも入集しています