こころざし ふかくそめてし をりければ きえあへぬゆきの はなとみゆらむ
心ざし ふかくそめてし をりければ 消えあへぬ雪の 花と見ゆらむ
よみ人知らず
ある人のいはく、前太政大臣の歌なり
心を深く染めて待ちわびているから、なかなか消えない枝の雪が花に見えるのだろうか。
美しく咲き誇る花を心待ちにしている自分の思いを詠んだ歌です。枝の雪を花に見立てる手法はひとつ前の 0006 と同じですね。
この歌では、「よみ人知らず」として歌を記したあと、前太政大臣作との説もある、との左注が付けられています。前太政大臣とは、藤原良房のこと。藤原北家、左大臣藤原冬嗣の子で、皇族以外で初めて摂政となった人物。藤原北家隆盛の礎を築き、子孫が次々と摂政・関白となって権勢を誇りました。
歌人としては、このあと 0052 に正式に良房作とされる歌が出てきますが、勅撰集への入集はこの一首のみのようです。
としふれば よはひはおひぬ しかはあれど はなをしみれば ものおもひもなし
年ふれば よはひは老ひぬ しかはあれど 花をし見れば もの思ひもなし
これで7番まで。一日一首アップしてきて、一週間続けることができました。このまま細々とでも続けていきたいものです。