くもりびの かげとしなれる われなれば めにこそみえね みをばはなれず
くもり日の 影としなれる われなれば 目にこそ見えね 身をば離れず
下野雄宗
いわば曇り日の影法師のように、ほのかにあなたに寄り添う影となった私ですから、目には見えませんが、あなたのそばを決して離れません。
寄り添っていたい思いを、相手の影になると喩える歌は 0528、0619 にもありましたが、「くもり日の影」と表現しているところが本歌の白眉。そこにあることが目にくっきりとは見えないけれど確実に存在している、というところでしょうか。
作者の下野雄宗(しもつけ の をむね)がどういう人物かは、わかっていません。古今集入集はこの一首のみで、勅撰集全体を見ても他に採録歌はありません。