月夜に衣うつところ
からころも うつこゑきけば つききよみ まだねぬひとを そらにしるかな
唐衣 うつ声聞けば 月清み まだ寝ぬ人を そらに知るかな
月夜に衣をうつところ
衣を砧で打つ音を聞くと、月のさえわたった夜に遠くにいる夫を思い、まだ眠れずにいる妻の姿がそれとなく察せられることよ。
隔地にいる夫を思いながら妻が衣を打つ情景は、漢詩や唐絵によく見られる構図のようです。018 もそうでしたね。
この歌は新勅撰和歌集(巻第五「秋下」 第323晩)にも採録。新勅撰和歌集は、古今集から新古今集までのいわゆる「八代集」の次、通算で9番目の勅撰和歌集で、ベースとなった撰歌と仮名序は藤原定家の手になります。