うちわたす をちかたひとに ものまうすわれ
そのそこに しろくさけるは なにのはなぞも
うちわたす 遠方人に もの申すわれ
そのそこに 白く咲けるは 何の花ぞも
よみ人知らず
はるか遠くにいるお方に私は申し上げます。そこに白く咲いているのは何の花でしょうか。
ここから四首、旋頭歌(せどうか)が続きます。旋頭歌は「五・七・七・五・七・七」の六句からなる和歌で、万葉の時代にはすでに古い形式の歌と見なされていたようです。同じく六句からなる古い形式の和歌で、「五・七・五・七・七・七」の形を取る仏足石歌(ぶっそくせきか)という歌体もありますが、こちらは古今和歌集には採録されていませんね。
さてこの歌、直接の歌意はわかりやすいですが、単体で見ると「だからなに?」と言いたくなる、と言っては失礼でしょうか。^^;; 実は次の 1008 と問答をなす歌で、対で読むと本当に花の名を知りたいわけではなく、ふと見かけた女性への問いかけとそれに対する戯れの返事であることがわかります。