はるされば のべにまづさく みれどあかぬはな
まひなしに ただなのるべき はなのななれや
春されば 野辺にまづ咲く 見れどあかぬ花
まひなしに ただ名告るべき 花の名なれや
よみ人知らず
春が来ると野辺でまっさきに咲く、見飽きることのない花です。御礼もしないままにただ名告るべき花の名前ではありません。
1007 で「そこに白く咲いているのは何の花でしょうか」と問いかけられての返しの歌。本当に花の名を知りたかったわけではなく、一目で心を奪われた女性に語り掛けることが目的だったであろう 1007 に対して、見飽きることはないかもしれませんが名乗るほどの者ではありませんと、戯れに返答したというところでしょうか。