すまのあまの しほやくけむり かぜをいたみ おもはぬかたに たなびきにけり
須磨の海人の 塩焼く煙 風をいたみ 思はぬ方に たなびきにけり
よみ人知らず
須磨の海人が塩を焼く煙が、風が強いために思わぬ方向にたなびくように、あの人の心も思ってもみなかった人の方にたなびいてしまったことだ。
風次第であらぬ方向にたなびく煙に準えて、愛しい人の心変わりを嘆く詠歌と解釈しましたが、自分の心変わりを詠んだとも、また、男性の歌とも女性の歌ともとらえられますね。鑑賞者の思いを映して味わえば良いというところでしょうか。万葉集採録の類歌もご紹介しておきましょう。
しかのあまの しほやくけぶり かぜをいたみ たちはのぼらず やまにたなびく
志賀の海人の 塩焼く煙 風をいたみ 立ちはのぼらず 山にたなびく
(万葉集 巻第七 第1246番)