をしとおもふ こころはいとに よられなむ ちるはなごとに ぬきてとどめむ
惜しと思ふ 心は糸に よられなむ 散る花ごとに ぬきてとどめむ
素性法師
花が散るのを惜しいと思う心を糸に撚り合わせることはできないだろうか。それができるなら、花一つ一つを撚った糸で縫い合わせて散るのをとめたい。
花が散らないよう、落花を惜しむ心の糸で縫い合わせてしまおうという発想。0076 には、同じく素性法師の、恨み言の一つも言いたいから、誰か花を吹き散らす風の宿を誰か教えてくれという歌がありますが、落花を惜しむという誰しもが抱く気持ちの表現ではあっても、その発想は独特で、素性法師の歌風と言えるかもしれません。