をしとおもふ こころはいとに よられなむ ちるはなごとに ぬきてとどめむ
惜しと思ふ 心は糸に よられなむ 散る花ごとに ぬきてとどめむ
素性法師
花が散るのを惜しいと思う心を糸に撚り合わせることはできないだろうか。それができるなら、花一つ一つを撚った糸で縫い合わせて散るのをとめたい。
花が散らないよう、落花を惜しむ心の糸で縫い合わせてしまおうという発想。0076 には、同じく素性法師の、恨み言の一つも言いたいから、誰か花を吹き散らす風の宿を誰か教えてくれという歌がありますが、落花を惜しむという誰しもが抱く気持ちの表現ではあっても、その発想は独特で、素性法師の歌風と言えるかもしれません。
はなのいろは うつりにけりな いたづらに わがみよにふる ながめせしまに
花の色は うつりにけりな いたづらに わが身世にふる ながめせしまに
小野小町
長い雨の間に花は色あせてしまった。それと同じように、長い時の経過とともに私の身もむなしく年老いてしまったことだ。
百人一首にも収録され、改めての説明や解釈など要しないほどに良く知られた歌ですね。「ふる」は「降る」と「経る」、「ながめ」は「長雨」と「眺め」の掛詞で、その昔、高校生の頃に初めて和歌の技法を習う際にも題材とされていた記憶があります。
作者の小野小町は、詳しい系譜は不明ですが、9世紀頃に活躍した女流歌人で六歌仙、三十六歌仙の一人。古今和歌集には18首が入集しています。絶世の美女として名高く、今も「●●小町」という言葉に名を残している。。。などということも説明不要ですね。 笑