漢検一級 かけだしリピーターの四方山話

漢検のリピート受検はお休みしていますが、日本語を愛し、奥深い言葉の世界をさまよっています。

古今和歌集 0347

2020-10-11 19:19:36 | 古今和歌集

かくしつつ とにもかくにも ながらへて きみがやちよに あふよしもがな

かくしつつ とにもかくにも ながらへて 君が八千代に あふよしもがな


仁和の帝

 

 このようにこれからもあなたの長寿を祝いながら、私自身もとにかく長生きして、あなたの八千代の齢に接したいものだ。

 詞書には「仁和の御時、僧正遍昭に七十の賀たまひける時の御歌」とあり、作者が仁和の帝(第58代光行天皇)であることと、僧正遍昭の長寿を祝う歌であることが分かります。光行天皇の御製は 0021 に続いて二度目の登場。古今集への入集はこの二首となります。

 「かくしつつ」はさらっと読むと「隠しつつ」かと思ってしまいます(笑)が、「かく」は「斯く」で、「このように」の意の副詞。遍昭の長寿を祝う祝宴の場で、「これからも毎年このように宴を催し、自分も長生きしてあなたの長寿を祝い続けよう」と詠んだのですね。帝から臣下に対する最大限の祝意の表現でしょう。そうしてみると、同じく長寿を祝う歌である 0021 の「君」も、あるいは僧正遍昭を指していたのかとも思えてきますが、本当のところはわかりません。

 

 


古今和歌集 0346

2020-10-10 19:01:48 | 古今和歌集

わがよはひ きみがやちよに とりそへて とどめおきてば おもひいでにせよ

わが齢 君が八千代に とりそへて とどめおきてば 思ひ出にせよ

 

よみ人知らず

 

 私の残りの寿命をあなた様の八千代に続く歳月に譲り添えることができたならば、ご自身の長寿の折々に私を思い出してください。

 現代人にはとても分かりづらい歌なので、かなり意訳してみました。平均寿命が40歳程度だった当時、まずなによりも長寿が「お祝い」の対象であり、「自分の寿命を譲る」というのは最大限の祝意の表明だったようです。

 

 


古今和歌集 0345

2020-10-09 19:14:02 | 古今和歌集

しほのやま さしでのいそに すむちどり きみがみよをば やちよとぞなく

しほの山 さしでの磯に 住む千鳥 君が御代をば 八千代とぞ鳴く

 

よみ人知らず

 

 塩の山の差出の磯に住む千鳥が、あなたの御代がずっと続くようにと鳴いている。

 手元の書籍などでは、「しほのやま さしでのいそ」は地名であろうが不詳と記載されていますが、一方では「さしでのいそ」は山梨県笛吹川沿いの景勝地「差出の磯」とする解説も数多くあります。「差出の磯」は、古来よりたくさんの和歌に詠まれて来ました。


古今和歌集 0344

2020-10-08 19:26:08 | 古今和歌集

わたつうみの はまのまさごを かぞへつつ きみがちとせの ありかずにせむ

わたつうみの 浜の真砂を かぞへつつ 君がちとせの あり数にせむ

 

よみ人知らず

 

 海の浜辺の砂を数えながら、それをあなたの長寿の齢の数としましょう。

 「ありかず」は人の生きる年数、すなわち寿命のこと。浜辺の砂の数になるほどの長寿を願い、かつ祝う歌ですね。


古今和歌集 0343

2020-10-07 19:53:32 | 古今和歌集

わがきみは ちよにやちよに さざれいしの いはほとなりて こけのむすまで

わが君は 千代に八千代に さざれ石の いはほとなりて 苔のむすまで

 

よみ人知らず

 

 わが君には千代にも八千代にも、小石が成長して巌となり、そこに苔がむすまでずっと長寿でいていただきたいことよ。

 古今和歌集巻第七「賀歌(がか)」の冒頭を飾るのは、国歌「君が代」のもととなったこの歌。0003 でもご紹介済みのほか、本ブログでは2年半ほど前の記事「きみがよは ちよにやちよに」でも触れていますので、よろしかったらそちらもご参照ください。

 初句は現在の国歌が「きみがよは」なのに対して「わがきみは」。ここでの「君」は必ずしも帝や主君に限らず、長寿を祝おうとする相手のこと。後の写本では「きみがよは」となっているものが圧倒的に多いとのこと。また、第二句を「ちよにましませ」としている写本もあるようです。

 

 29首収録の「冬歌」よりもさらに少ない22首の「賀歌」。どうぞお楽しみください。 ^^