ゆきふりて としのくれぬる ときにこそ つひにもみぢぬ まつもみえけれ
雪降りて 年の暮れぬる 時にこそ つひにもみぢぬ 松も見えけれ
よみ人知らず
雪が降り、年の暮れになって初めて、最後まで紅葉することのない松の気高さがわかることだ。
色とりどりの花や綺麗に色づく木の葉などに目を奪われていたものが、雪が降り、年が変わる時期になって、凛として姿を変えることのない松の高貴さ、気高さに改めて気づいたという歌。論語子罕編の一節が元となっています。
子曰歳寒然後知松柏之後彫也
子曰わく、歳寒くして然る後に松柏の彫むに後るるを知る。
気候が寒くなって初めて、他の草木がしおれてしまっている中にあって、松や柏は枯れずに残っているのが分かる。同様に困難に際して初めて、学問修養に努めている者の真価が分るのである。
あらたまの としのをはりに なるごとに ゆきもわがみも ふりまさりつつ
あらたまの 年のをはりに なるごとに 雪もわが身も ふりまさりつつ
在原元方
毎年、年の終わりになるたびに雪は降り、わが身も年老いていくことだ。
「あらたまの」は、「年」「月」「日」などにかかる枕詞。「ふり」は「降り」と「古り」の掛詞ですね。一年の終わりを詠んだ歌が続いて、巻第六「冬歌」も残り三首です。