マイクル・イネスの Lament for a Maker(1938年)読了(邦題『ある詩人への挽歌』)。
スコットランドの田舎町キンケイグ。当代の領主ラナルドはケチで非道な嫌われ者。ある冬の夜、そのラナルドが住まいのエルカニー城の胸壁から転落死する。折しもそれは、姪のクリスティンと、ラナルドが長らく嫌っていたその恋人ニールの結婚を許すからと、ラナルド自身がニールを城に招いた夜。ラナルドの部屋に呼ばれるニール。二人の間に一体何が・・・
本書の冒頭、靴職人の老人イワン・ベルが語るスコットランド訛りがあまりに手強くて(しかもそれが全体の1/3くらい続く)、正直途中で読むのをやめようかと思ったほど。もっとも、モルト好きにはお馴染み、"Loch"(ロッホ)が「湖」、"Ben"は「山」、"Glen"は「谷」と分かるので我慢しつつ、そうこうして語り手が次々と変わるうち、気付くと一気に物語に引き込まれていた。
凝ったプロットだが、それがよく練られているからだろう、真相が明らかになる過程が無理なく配備されていて、勿論どんでん返しもあり、読みながら心地よい高揚感が続く。
江戸川乱歩10選(1952年)の第5位は伊達ではない。素晴らしい。
Michael Innes,
Lament for a Maker
(Kindle)
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます