為替の相場は「多くの人は、現在の1ドル113円台を見て、『いくら何でも65円はない』と考える。しかし、1990年4月の時点で1ドル160円前後だったドル円は、1995年4月に79円75銭になった。ドルは対円でほぼ半値になったのだ。それを考えれば、現在の1ドル113円が6年後に1ドル65円になっても不思議はない。それが相場だ」に語り尽くされているのかもしれません。一度あったことは2度あるです。世界経済がデフレの波に飲み込まれて、日本が一人勝ちする状況が起こればまさかもあり得ます。しかし、その前に日本は大型財政出動による一定の円安は見込まれますし、米経済もそう簡単には崩れないでしょう。表題の一㌦65円予想はあくまで「伝説の為替ディーラー」としてその名をとどろかせた若林栄四氏の予想です。経済・為替に絶対はなく、今後もランダムですので決めてかかるのは危険です。
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「2011年末から続いたドル高の波動は完全に終わった」
旧東京銀行(現三菱東京UFJ銀行)時代などに、「伝説の為替ディーラー」としてその名をとどろかせた若林栄四氏。最近では、2011年の円高から円安への転換をズバリ的中させたことでも知られる。現在、ワカバヤシFXアソシエイツ代表取締役である同氏は、今のドル円相場について、ベストセラーとなっている「覚醒する大円高」(日本実業出版社)で冒頭のように断言する。■ 歴史的に見てドル安の流れは止まらない。
それに続いて、若林氏の口から出た言葉は、さらに衝撃的だった。
2月に入り、ドルは一時1ドル110円台まで売り込まれた。足元では、ドル安は一服したようにも見える。だが、ドル安の流れはこれで止まらず、さらにドル安が進むと言うのだ。
「相場は波動なので、上がったものは下がり、下がったものは上がる。ドルは1ドル75円54銭という安値から約3年8カ月で、66%も上昇した。これだけ上がれば、今度は下がるのが自然の流れだ」。
過去、ドルが暴騰した後には必ず暴落が来ている。
第1次ドル暴騰は1978年10月から1982年10月で、この間、ドル円は1ドル176円から278円まで56%のドル高となり、その後は20%程度のドル暴落となった。
第2次ドル暴騰は1995年4月から1998年8月で、この時のドル円は、1ドル79円から147円まで85%のドル高になった後、31%のドル暴落となっている。
「今回は2011年10月から2015年6月までの66%ものドル高であり、その後のドル下落率が20~30%と想定すると、20%のドル安なら1ドル100円程度、30%のドル安なら1ドル88円程度までドル安円高になる。相場は一度走り出すと19カ月くらいは一方向に進むので、目先は2017年1月にかけて、1ドル88~100円のドル安は十分に起こりうる」
しかも、2017年1月前後でいったん反発したとしても、最終的にはドル安のクライマックスが2022年2月に示現すると若林氏は予測する。それが、1ドル65円という大円高だ。
「今、この数字を言っても笑われるだけだが」と前置きをしながらも、「黄金分割で計ったところ、1ドル65円は十分にありうる水準」と言う。
なぜ2016年末前後が、大きな節目になるのか。
「多くの人は、現在の1ドル113円台を見て、『いくら何でも65円はない』と考える。しかし、1990年4月の時点で1ドル160円前後だったドル円は、1995年4月に79円75銭になった。ドルは対円でほぼ半値になったのだ。それを考えれば、現在の1ドル113円が6年後に1ドル65円になっても不思議はない。それが相場だ」
しかし、気になるのは、この大円高が株式などのマーケットに及ぼす影響だろう。目先で見ても、1ドル88~100円までドル安が進めば、日本経済への影響は無視できない。株価の行方が気になるところだ。
「黄金分割の重要日柄(=日数、期間)のひとつに27年というのがある。これは162カ月の2倍に相当する。日経平均株価が平成バブル後の安値である7604円(当時)をつけた2003年4月は、バブル天井1989年12月29日の3万8957円からの160カ月目だ。誤差の範囲だが、ほぼ162カ月と見て良いだろう。そして、そこからさらに162カ月目が、2016年12月にあたる。ここに向かって、株価は再び下落する。
その時の日経平均株価は、場合によっては1万円を割り込むかも知れない。逆に言えば、27年という日柄が整理されれば、その後は上昇へと転じる可能性がある。したがって今、日本株の買いポジションを持っている投資家なら、今夏前後までの戻りでいったん、手持ちの日本株を売却。キャッシュポジションを高め、2017年1月から再び日本株のポジションを増やすべきだろう」。
ただ、無傷で済まないのが米国の株式市場だ。若林氏は、2022年にかけて米国経済が大デフレ局面に突入することを指摘する。その根拠を、米国の長期金利に求めている。
過去に遡って米国の長期金利を見ると、
1861年=6.45%(天井)
1901年~1902年=1.98%(底)
1920年=5.67%(天井)
1941年=1.85%(底)
1981年=15.84%(天井)
となっている。
■ 日本株が2017年初から上昇に転じるワケ
「天井をつけたのが1861年、1920年、1981年であり、インフレの60年サイクルとほぼ一致している。一方、底を付けたのは、インフレピークから見て40年半前後のサイクルだ。1920年から1941年は例外で、これは1920年がインフレの60年サイクルにあったからだが、1941年の底から1981年の天井までは、見事に40年半となっている。このサイクルをあてはめると、1981年の天井から2022年にかけて、金利が大底に向かって進む。この間、米国経済は大デフレに陥っているだろう」。
大デフレが進むなか、NYダウは「2016年12月末までに1万2500ドル。そこでいったん戻すだろうが、米国経済が大デフレに突入したことを確認したうえで、2022年第1四半期にかけて6700ドルまで下がる」というのが、若林氏の見方だ。
それにしても、米国が大デフレ、株価暴落に見舞われるなか、なぜ日本株は2017年1月から上昇に転じられるのか。
「日本は一足早く大デフレを経験した。下がり続けたものはいつか上昇に転じる。デフレも行き着くところまで行き、均衡が破れれば、物価の下落に歯止めが掛り、上昇へと転じる。その時、世界の投資家は日本の株式市場に注目し、日本株は長期上昇局面の入り口に立つ」
そのチャンスを逃さないようにするためにも、日本株のポジションを持つ投資家は、今のうちから徐々にキャッシュポジションを高めておくのが良さそうだ。
鈴木 雅光