広島から巨人に移籍した「Vの使者」丸選手を待ち受けているのは打てば神様、三振すれば戦犯というマスコミとファンの反応です。過去には、すっかりメンタルを疲弊させたかつてのFA選手たちは多かった。移籍が注目されればされるほど、特に移籍1年目は他球団の攻め方も違う。打たれた投手の方もスポーツニュースでクローズアップされるから、目の色を変えて向かってくる。今後、丸選手を襲う相手投手の徹底した厳しい内角攻めも、巨人の大型FA野手にはつきものだ。死球による思わぬケガにも要注意です。事実カープの主力投手にはえぐるような厳しい内角をつくと公然している投手もいます。今年の巨人と広島の得点力の差は広島カープが96点多い。今季109得点もした丸加入により、長野、亀井、陽の各外野手のうち2人がレギラーから外れる可能性があり単純に戦力アップとはいきません。逆に広島カープは丸の穴をチャンスと捉え、盗塁王、首位打者、ホームラン王など飛躍的に成績を伸す可能性がある野間、西川、バティスタなどの選手がいます。丸の移籍がどちらに傾くか、プロテクト名簿とも絡み混とんとしています。
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広島からFA宣言した丸佳浩(29)を5年総額35億円規模となる史上最大級の条件で口説き落とした巨人には過去、24人のFA選手が在籍した。そのうち、野手は11人。いずれも、同じように三顧の礼をもって迎えられ、「Vの使者」として期待された。しかし、移籍1年目に優勝の美酒を味わったのは、落合、江藤、小笠原、村田、片岡の5人のみ。前年より成績を落とした選手が多い。「清原がいい例です。常勝西武の4番として、5年18億円と当時としては破格の条件を手にして巨人に入った。のちに本人が『キャンプ前の自主トレからの数カ月で10年分の取材を一気に受けた』と振り返っていたが、常に何十、何百という報道陣に追いかけられ、開幕前には精神的に参ってしまっていた。毎日毎日同じような質問を浴びせられ、グラウンドを離れても世間の目にさらされる。西武時代の注目度とは天と地で、『常に誰かに見られている感じ。気が休まらない』とグチっていたものです。それでも、移籍1年目は本塁打と打点こそ前年を上回ったものの、優勝争いから脱落した後に帳尻合わせで積み重ねたような数字。チャンスで凡退するシーンが多く、結局、チームも4位でV逸。打てば神様、三振すれば戦犯というマスコミとファンの反応に、すっかりメンタルを疲弊させた結果です」(巨人OB)
❷今シーズン規定打席に到達した外野手が亀井善行だけであり、長野久義、陽岱鋼と他のレギュラークラスも高齢化している現状を考えると、この補強が来シーズンはプラスに働くことは間違いない。ただ、それでも長期的に見ると良い面ばかりでもない。石川慎吾、重信慎之介、立岡宗一郎といった中堅クラスの選手の出場機会が減り、世代交代が進まないことが一つ。巨人は炭谷、丸と二人のFA選手を獲得したことによって人的補償での選手流出も大きな痛手になる。人的補償のプロテクト枠は28人だが、実績のある選手が多い巨人でこれからの成長が期待される有望な若手選手が漏れることは大いに予想される。
投手では貴重なサウスポーである中川皓太、池田駿、大江竜聖、野手では実績のある山本泰寛、二軍の主力である和田恋、松原聖弥などが外れる可能性もある。2013年オフに広島から大竹寛を獲得した際には一岡竜司が人的補償で移籍し、今では完全に一岡の方がチームにとって欠かせない存在となっている。今回のFAでも“第二の一岡”が西武、広島に流出することも十分に考えられるだろう。
では、巨人はどのような道を目指せば復活を遂げることができるのだろうか。それにはやはり原監督がかつて行ったような積極的な若手の抜擢と育成が欠かせない。二度のリーグ三連覇を達成した第二次政権では小笠原道大、ラミレス、村田修一、杉内俊哉などの外様の選手の活躍もあったが、ドラフト上位で獲得した坂本勇人、長野、内海哲也、西村健太朗、澤村拓一、菅野智之がしっかり戦力となり、また山口鉄也、松本哲也といった育成出身の選手も見事な活躍を見せていた。今シーズンのレギュラー陣を見てもその遺産で戦っている印象が強く、生え抜きで中心選手にとなっている新しい力は岡本和真くらいしか見当たらない。岡本に次ぐ新戦力を発掘し、育てることが覇権奪回には必要不可欠であろう。
最初の監督就任時には43歳だった原監督も来年で61歳を迎える。年齢を考えても長期政権の可能性は低く、このオフの補強を見ても早期に結果を残すことが求められているがゆえの焦りが見え隠れするのが現状である。