東京では大企業でもリモートワークを大規模に導入し、オフィススペースを大胆に削減しようとする動きが加速しているようです。しかし、賃貸借契約上の縛りがあり、今後、3年程度かけて徐々に進みそうです。この流れはオフィス近辺の飲食業・コンビニ業にも多大な影響を与えそうで、予断が許せる状況ではありませんが、水商売と思えば、時代の流れに流されても、致し方無いでしょう。生活者が本当に必要としている業種・職種は繁栄し、立地条件のみに頼っていた店は淘汰されるという厳しい現実が待っているのです。いずれにしても、3年ぐらいの期間をかけオフィス需要は一変するはずです。
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コロナ禍によるオフィス需要の減退という世界的な現象が、東京でも顕在化し始めた。より良い職場環境を求めて増加していた移転の商談は一変、在宅勤務の広がりでその多くが止まっている。大規模開発真っ只中の渋谷では解約も目立ち始め、東京のオフィスビル淘汰選別が静かに進行しつつある。
<渋谷に異変、スタートアップが解約> 100年に1度と言われる大規模な再開発が進む渋谷のオフィス市場に異変が起き始めたのは昨年秋ごろ。それまでは需要が過熱し、空室率も他地区より低かったが、ここにきて入居者を募集する告知が目立ち始めた。オフィス仲介大手の三幸エステートによると、7月の都心5区の平均空室率1.2%に比べ、渋谷区内は1.94%まで上昇、コロナ感染が拡大し始めた3月ごろから急速にその差が拡大している。 長らく若者の遊び場だった渋谷は、2010年代前半から東急 <9005.T>が中心となって再開発に着手。昨年には米グーグルの日本法人が複合施設「渋谷ストリーム」に入居するなど、IT企業が集積する「日本のシリコンバレー」に生まれ変わりつつあった。国内で人手不足が深刻化する中、働き手をつなぎ留めるため、より快適なオフィス環境を求める企業に人気の移転先となっていた。 渋谷のオフィスブームに変化をもたらした要因の1つは、新型コロナウイルスの感染拡大だ。折からの景気減速と業績のブレーキに加え、感染抑制策として遠隔勤務(リモートワーク)が広がったことで、まずは意思決定の速い小さめの企業がこの街から去り始めた。 東急のビル運営事業部の福島啓吾・主査によると、逆にコロナで業績を伸ばした企業からは、渋谷のランドマーク的な存在のビルに入居したいという需要もあるという。しかし、「市場全体として縮小の動きが多いのは事実」と、福島氏は話す。「スタートアップなどの身軽に動ける会社はリモートワークがしやすく、解約をしているのは100坪より小さいテナントが中心だ」という。
<NYでもロンドンでも> 感染症の世界的な流行でオフィス需要が減退しているのは、渋谷に限った話ではない。ニューヨークのマンハッタンでもロンドンのシティでも、現実のオフィス空間で働くという当たり前だったことが、働き方の変化によって突如として想像しにくくなってしまった。 ニューヨークの不動産調査会社グリーン・ストリート・アドバイザーズは、同市の商業不動産価格はコロナ禍で1割下落したと試算している。 東京では渋谷以外に目を移しても、変化が出始めている。 ここ10年間ほぼ右肩上がりだった東証REIT(リート)指数<.TREIT>は、国内でコロナの感染が広がり始めた今年2月中旬ごろから急落。4月末に底を打ったものの、コロナ前の水準には程遠い。 不動産賃貸を手掛ける三菱リアルエステートサービスでは、オフィスリースの商談がなかなか成約につながらないとしている。「これまで圧倒的にオフィス拡張の相談が多かったが、足元で縮小・分散の相談が出てきた」と、長政亮・ビル営業部プロジェクト推進課長は言う。同社が6月半ばに実施した顧客調査によると、コロナ感染拡大に伴い、オフィス移転計画の見合わせ・保留・選定延期など、事実上ストップさせた企業は半数近くに上った。さらに在宅勤務を進める企業が増えた結果、中長期的にオフィス賃貸面積の圧縮を検討している企業が54%あることが分かった。
<既存の契約が解約に縛り> IT大手の富士通<6702.T>はリモートワークを大規模に導入し、オフィススペースを大胆に削減しようとしている。首都圏に持つオフィス総面積80万平方メートルの50%を削減する方向だ。「もうコロナ前の働き方に戻ることはない」と、人事総務部の森川学シニアディレクターは話す。 富士通にとって、リモートワーク強化の新たなオフィス戦略はコロナ対策という一時的なものではない。今後は取引先に常駐する現場従業員を除く8万人近くの社員を基本的に自宅勤務とし、決まった場所と時間に毎日出社する制約を取り払う。その一方で、社員が立ち寄れるよう、自宅近くにサテライトオフィスを増やす方向だ。 こうした動きを反映し、東急でも沿線などに展開するシェアオフィスへの問い合わせがコロナの感染拡大以降に増加している。今年3月末時点で契約社数は300社を越えたが、足元はさらに10%程度のペースで契約数が伸びているという。 だが、現在のオフィスを実際に解約する動きは、東京全体で見るとまだ大きなうねりとはなっていない。3-5年程度の契約期間満了までは違約金の支払いコストが重いためだ。今もオフィス賃料は一坪2万8000円台で安定して推移している。 契約の縛りが企業の新たな動きを抑制している格好だが、逆に言えば、解約の増加は3年程度かけて徐々に進むことになりそうだ。東京のオフィスビル淘汰は、水面下で進行しつつある。