「人間の寿命を決定するのは、筋力と筋肉量」である。
なかなか運動は続かないという方々も多いと思いますが、健康のためには、体を鍛えて筋力や筋肉量を増やすことが、とても効果的なのです。
高齢者の筋肉量と筋力を調査した研究では、70代の男女2292人を6年以上フォローし、寿命と筋肉量、筋力の関係が調査された。
その結果、驚いたことに大腿四頭筋(太もも)の筋力と握力が寿命にかかわっていたのです。CT(コンピュータ断層撮影)などで測定した筋肉量は、寿命とは関係なかったのです。海外の結果ですが、九州大学の疫学研究でも同様の結果が報告されています。日本で最も免疫研究で定評のある久山町研究で、1988年から2007年にかけて、2527人の40歳以上の男女を、握力の強さによって3群に分けて調査しました。その結果、握力の最も低い群と比べて、握力の高い群では死亡率が低下することがわかりました。
※久山町研究とは九州大学医学部が1961年から、福岡市に隣接した糟屋郡久山町(人口約9,000人)の住民を対象に脳卒中、心血管疾患などの疫学調査を行っている。久山町住民は全国平均とほぼ同じ年齢・職業分布を持っており、偏りのほとんどない平均的な日本人集団である。研究の発端は、日本の死亡統計の信憑性に疑問が投げかけられたことにある。当時、脳卒中はわが国の死因の第1位を占めていた。なかでも、脳出血による死亡率が脳梗塞の12.4倍と欧米に比べて著しく高く、欧米の研究者からは「誤診ではないか」との声が上がった。しかし、それを検証するための科学的なデータがなかった。そこで日本人の脳卒中の実態解明を目的として始まったのが久山町研究だった。