藤井聡太王将が全8冠独占まで残すタイトルは名人、王座2つになった。
名人戦はすでに挑戦権を得ている。8日、A級順位戦プレーオフを制し、初出場を決めた。第1局は4月5日開幕で、渡辺明名人と7番勝負を争う。王座戦は5番勝負が例年9月開幕。こちらは現在、永瀬拓矢王座(30)への挑戦権を16人で争う挑戦者決定トーナメントに出場する10人を決める2次予選が進行中。タイトルホルダーの藤井は、トーナメントからの出場となる。
難関と言えるのがこのトーナメントだ。挑戦権獲得には4連勝する以外にない。7番勝負なら3敗、5番勝負なら2敗まで許されるが、トーナメントには負けが許されない怖さがつきまとう。昨年度は1回戦で敗退している。
全8冠独占は最短で今秋となるが、その間に消化しなければいけない防衛戦も息は抜けない。名人戦と並行して4月11日、叡王戦が開幕する。挑戦者は菅井竜也八段(30)に決定。対戦成績5勝3敗で、藤井にとってタイトル戦初の振り飛車党だ。
例年6月から始まる棋聖戦はベスト8が出そろいつつある。王位戦も6人ずつが総当たりする紅、白組2組の挑戦者決定リーグが2回戦に突入。7番勝負は例年6月末から7月にかけて始まる。
最短コースを探っても、王座戦挑戦権を得るまでに、名人4勝、叡王3勝、棋聖3勝、王位4勝のタイトル戦14勝に、王座戦トーナメントの4勝と、合わせて18勝が必要。このトーナメントは例年4月末から7月にあり、その期間が、名人戦以降の4タイトル戦と重なる。
さらに永瀬へ挑む5番勝負での3勝。全8冠独占には21勝が求められる。王将、棋王のダブルタイトル戦になった冬を越えても厳しい戦いは続く。
羽生善治九段(52)は95年度、当時の全7冠を25歳で独占した。前年度に史上初の6冠になり、最後の1冠を懸けて王将戦で谷川浩司17世名人(60)に挑んだが、3勝3敗の第7局で敗れた。7冠実現には1年2カ月かかった。
藤井聡太王将は渡辺明棋王(38)との棋王戦 五番勝負を「時間配分はこれまでと比べるとうまくいった」と手応えを口にしつつも、「複雑な局面でも俯瞰(ふかん)的に捉えて判断する力が足りていない場面が多かったので、名人戦では課題意識を持ってやっていきたい」と、“7冠目”に目を向けた。