今回の逮捕は、15年12月~18年7月に中東日産からSBAに送金された1500万ドル(約16億8900万円)のうち、SBAからGFIに送金された500万ドル(約5億6300万円)に対する特別背任容疑ですが、SBA→GFIの送金額約3650万ドル(約40億円)より少ない金額での逮捕となったことなどから、地検が5回目の再逮捕のカードを持っている可能性があるようです。さすがにこれほど逮捕されれば、1つは有罪になるでしょう。更にここにきて浮上しているのが、米国資金の没収です。ゴーン被告側にとっては最悪の結果ですが、不正利得であれば致し方ないでしょう。要は諦めが悪く、悪あがきをしたため、本来なら1つの罪で済むところを4,5も罪状がつながり、最後には米国資産没収迄発展しそうなのです。ここまで、具体的にお金の流れ掴まれていれば、世論はもちろん敵です。弁護士費用も破産に追い打ちをかけるでしょう。
以下抜粋コピー
保釈中だった日産元会長、カルロス・ゴーン氏(65)が新たな特別背任容疑で再逮捕された。「オマーン・ルート」着手や、アメリカの捜査「参戦」までの大筋の流れは、昨年11月30日から私が書いてきたシナリオ通りだ。
600億円を銀行ごとアメリカに収奪された経験のある私は、ゴーン氏と家族の財産が、アメリカに没収される展開まで考えている。ゴーン一族にとっては最悪の展開だが、「名経営者」と謳われたゴーン氏が逮捕後に打った悪手の連発が招いたものである。
今日4月11日は、逮捕されていなければゴーン氏が「真実をお話しする」日だった。代わって、私がゴーン氏の悪手(打つべきではなかった手)の数々についての解説をしたい。
4月4日、東京地検特捜部が「オマーン」を舞台にした新たな特別背任容疑で、ゴーン氏を再逮捕した。4回目の逮捕となったここまでの展開は、『元経済ヤクザが大胆指摘! 「ゴーン氏逮捕にちらつく米国の影」(18年11月30日)』や、19年1月23日の『元経済ヤクザも驚愕「ゴーン事件、カネの流れから見えて来るもの」(19年1月23日)』などで書いた内容と大筋で一致する流れとなっている。
まずは、現時点での報道を元に、今回の容疑内容を時系列で整理しよう。
----------
●09年1月、ゴーン氏はオマーンの日産車販売代理店「スハイル・バハワン自動車」(SBA)のオーナー、スハイル・バハワン氏から約30億円を私的に借り入れる
●この直後からゴーン氏は中東日産にSBAからの代金支払いの長期間猶予と、猶予中の金利を大幅にディスカウントすることなどを指示した。SBAの特別優遇により、日産の逸失利益は10年間で約81億円にのぼる
●12年~17年にかけて、ゴーン氏の指示により「中東日産」から、SBAに毎年500万ドル(13年のみ700万ドル)、総計3200万ドル(約35億円)が、「報奨金」の名目で振り込まれた。(使われたのはゴーン氏が決算権を持つ「CEOリザーブ」)
●15年、SBAの経理担当幹部がレバノンに「投資会社」を名目にした、ペーパーカンパニー「グッド・フェイス・インベストメンツ」(GFI)を設立。(GFIはゴーン氏が実質的に保有して、資金移転の拠点とされている)
●設立直後から、SBAからGFIに計約3650万ドル(約40億円)が送金された
●15年、ゴーン氏の妻キャロル氏が代表を務めるビューティー・ヨットが設立
●GFIからは、妻が代表のビューティー・ヨットに約9億円、息子が代表を務める「ショウグン・インベストメント」に約30億円が送金された
----------
今回の逮捕は、15年12月~18年7月に中東日産からSBAに送金された1500万ドル(約16億8900万円)のうち、SBAからGFIに送金された500万ドル(約5億6300万円)に対する特別背任容疑によるものだ。SBA→GFIの送金額約3650万ドル(約40億円)より少ない金額での逮捕となったことなどから、地検が5回目の再逮捕のカードを持っている可能性があることも自動的に導き出せる。
特捜部が扱う事件についての報道が、地検サイドからのリークに依拠したものであることは、「暗黙の了解」だ。検察側の主張に世論を誘導するために、地検が虚実を交えて「関係者」として報道をさせるのはいつもの手口。そこは割り引いて捉える必要がある。
それでも今回の事件は「疑う余地が少ないだろう」というのが、黒い経済界の評価だ。送金額、送金時期、送金先の会社名、使い込んだ内容などがあまりにも具体的で詳細であるからだ。同時に特捜部はかなりの「物証」を押さえていると私は考えている。
だが、改めて私が指摘したいのは、「らつ腕」と評価されたゴーン氏の経営者としての資質についてだ。
ゴーン氏が、一連の黒い資金移動に手を染めたきっかけは、08年のリーマン・ショックにより、投資していた「通貨デリバティブ」が巨大な評価損を抱えたことと報じられている。
しかしリーマン・ショックは、その前年に起こったサブプライム問題の発端「BNPパリバ・ショック」から連鎖する形で発生した。したがってパリバ・ショックの瞬間から、通貨の投資を行うなら「円高一択」でしかありえなかった。それなのにゴーン氏が通貨デリバティブで巨額損を抱えたというのは、莫大な金額の輸出入を行う日産のトップにしては、あまりにもお粗末な読みだったと言えるだろう。
為替の動きを読む能力が絶望的に足りなかったゴーン氏の「投資の焦げ付き」はこれだけではないと、私は考えている。その根拠は、この時の「ジュファリ氏からの差し入れ」と、「バハワン氏への借金」がほぼ同じ時期に起こっていることだ。
ゴーン氏の損失に対して「新生銀行」は新たな担保を求め、損失に対して「ロスカット」(強制決算)をしなかったのだから、「怖くてうるさい」借入先ではないことは明らかだ。ゴーン氏の巨額借り入れの時期が重なっていることと合わせれば、「投資の焦げ付き」は他にあったと考えなければ説明がつかないのではないか。
1月には、ゴーン氏がオランダにある「日産・三菱BV」を通じて、他の取締役が知らない700万ユーロ(約9億円)の支払いを受けたと、フランス経済誌が報じている。特捜部は「オマーン・ルート」の流れとは無関係な国、スイスに捜査幇助を依頼したが、「ダッチ・コネクション」を疑っている可能性は十分にある。そうなれば新たな「債務」が出てくる可能性もあるだろう。
また、経営者としての資質という意味では、特捜部の捜査に対するゴーン氏のリスクマネジメントにも問題があると、私は考えている。その第一のミスは「最初の弁護士の選択」だ。私がゴーン氏の立場なら、逮捕された直後に「国選弁護人」を指定していた。なぜか。
改めて説明することでもないだろうが、刑事事件の被疑者・被告人は、原則として逮捕後、「私選弁護人」か「国選弁護人」を選ぶことになる。国選弁護人に頼る場合は、弁護士に払うお金がない被告のケース……と一般的には思われている。だが法定刑が3年以上の懲役や公判前整理手続きが必要な事件では、(一定の条件を満たせば)国選にすることも可能だ。
たしかに国選弁護人の場合、だれが担当するかは裁判所が選任するので、当たり外れがある。頼りない弁護士にあたるのは不安だからということで、私選弁護人を選ぶのが普通だ。
だが、今回のような国際的に注目を集める事件の場合、裁判所は公平な公判維持のため、それこそ国の威信をかけて人選を行うはずだ。巨大企業・日産を舞台にした国際金融犯罪ということであれば、名を売るために「私がゴーン氏の弁護人になります」と立候補してくる弁護士も多く集まるだろう。うまくいけば、海外の弁護士資格も持っていて、国際的な経済犯罪の弁護経験があり、英語が話せる弁護士が選べたかもしれない。結果論だが、自分で選ぶよりも、よっぽどこの事件にふさわしい弁護士に巡り合えたのではないか。
今回、ゴーン氏らがどのような経緯で弁護士を選んだのかは明らかでないが、日本国内での実績を選考の基準にしたのだな、という印象だ。この事件は国境を越えた経済事件である。「後の祭り」ではあるが、現在のゴーン氏が置かれている状況を考えると、国選にしておけばよかったのでは……と思ってしまうのだ。
ゴーン氏の悪手はこれだけではない。私は、今回の事件においてゴーン氏が容疑を「全面的に否認」したことが、決定的な落ち度であったと、考えている。
結論から言えば、否認ではなく「完全黙秘」を貫けばよかったのだ。後述するが、両者は似て非なるものである。
取り調べとは、有罪を成立させたい捜査側と、無罪を勝ち取りたい容疑者側が証言を取り合うゲームだ。容疑者が沈黙した時、捜査側は裁判で沈黙に勝てるだけの決定的な物証を探すことになる。
「否認」とは、その物証を前に、自らの言葉で突きつけられた事実を否定的に説明する行為だ。容疑者が否認すれば、検察側はそれを打ち消す新たな目標と証拠を探すことになる。
その良し悪しは別として、否認をすればするほど、検察側の力の込め具合が増すことになるのが現実だ。哀しいかな、裁判というのはそういう「ゲーム」なのである。しかし、完黙の場合、検察は集めた証拠が正しいのか、あるいは自分たちの筋書きや見立てが正しいのか間違っているのかさえ分からなくなる。無罪になることはないかもしれないが、少なくとも、今後の「ゲーム」を有利に進めることができるのだ。
ところがゴーン氏は容疑を否認し続けたうえ、保釈中の4月3日にTwitterアカウントを開設、「真実をお話しする準備をしています。4月11日木曜日に記者会見をします」とツイートした。黙っておけばいいものを、自らの言葉で説明しようとした。これは、このゲームのなかで最もやってはいけない悪手だ。話せば話すほど、検察側はその論拠を突き崩すための証拠を探すことになるのだから、保釈中に自分のことを話すつもりだったのは、愚の骨頂、と言えるだろう。
(4度目の逮捕に際して、弁護士はゴーン氏に黙秘を勧めたという。やはり黙秘こそが最大の武器なのだが、時すでに遅しだ。
一連のゴーン氏の対応は、本来「1」で済むべきものを、「4」「5」あるいは「6」に増やしていく悪手の連発だった、と私は考えている。4月4日の逮捕において、普段トヨタ車で護送することの多い特捜部があえて日産車を使うという「粋なはからい」をしたが、それこそが検察を悪い方向で刺激した証左だ(どうせやるなら、保釈時と同じように作業着で変装をさせてあげればいいのに……と私は苦笑したが)。
ゴーン氏の「挑発」に刺激されたのか、検察はさらなるカードを持とうと、アメリカに「捜査共助」を依頼した。国家を超える金の流れをつかむにはアメリカの協力が不可欠なのは言うまでもないが、私はアメリカを動かしてしまったことこそが、ゴーン氏らが悪手を連発したことが招いた「最悪の結末」だと私は考えている。
すでに何度も書いたが、国際間の送金はSWIFTシステム上で行われる。そしてテロ対策の名目で、人権を無視してSWIFT上にある金融の移転情報を開示させることができるのは、アメリカという国をおいてほかにない。
実際に、読売新聞4月5日朝刊の『流用容疑 米と捜査共助』は<米当局の協力でゴーン被告の息子がCEOを務める別の投資関連会社側の資料を調べたところ、GFIから流れた資金がゴーン被告の個人的な投資に充てられた疑いが浮上した>と伝えている。
また、妻キャロル氏の会社に流れた金が大型クルーザー「シャチョウ号」の購入資金に充てられたことなどの「検察側の新証拠」はゴーン氏のパソコンから押収されたと報じられている。 しかし、こうした記録が真実かどうかの裏取りするためには、実際の金の動きの解明が必要であることは言うまでもない。
ましてやゴーン氏は、一連の資金移転をアメリカの通貨「ドル」で行っている。ゴーン事件の捜査にアメリカが「参戦」したということは、これから先、ゴーン氏の金の流れがすべて丸裸にされる、ということを意味しているのだ。金の流れの解明が最も重要となる経済事件において、アメリカの参戦が決まった時点で、残念ながらゴーン氏は詰んだも同然、なのだ
そしてアメリカが捜査に参戦した以上、すでにゴーン氏の資金はすべて監視対象になっていると見るべきだ。たとえば、ゴーン氏の依頼を受けた第三者の手で資金をどこかに移動しても、新たな罪が生まれることになるだろう。犯罪資金の無慈悲な収奪がアメリカのお家芸であることは、石油で稼いだ600億円を銀行ごと没収された私が一番良く知っている。
日産はニューヨーク市場でADR(米国預託証券=米国で国外企業の株取引ができるように発行された証券)として取引されており、ゴーン氏の逮捕を受けて8%も株価が下落した。その原因であるゴーン氏の資産を没収する、「自国の健全な投資市場を混乱させた」という大義名分はすでに生まれているのだ。この後も悪手を打ち続れば、最悪の結末が待っているということを、ゴーン氏の関係者は肝に銘じた方がいい。
「株主に対する説明責任」の癖が抜けなかったのか、すべてにおいて悪手を連発してしまったゴーン氏。勝てるゲームではなかったかもしれないが、あえて一つの負けを選ぶというゲームの進め方をすれば、「アメリカの参戦」という最悪の結末だけは免れた可能性は大きい。罪状を認めることは、否認よりよほどマシな手段だ、ということだ。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます