福聚講

平成20年6月に発起した福聚講のご案内を掲載します。

弘法大師の護国思想と曼荼羅

2017-09-16 | 頂いた現実の霊験
「弘法大師の護国思想と曼荼羅」(中村涼應、幸真「正統曼荼羅の研究」(NHK出版))
「真言密教では即身成仏と共に大切に考えられているのが護国思想である。大師にはとりわけ「仁王経」による護国思想が見られる。

大同四年(809)四月の嵯峨天皇即位後、翌年十月には大師は国家のために仁王大法を修することを上表されている。「その将来するところの経法の中に、仁王経、守護国界経、佛母明王経等の念誦の法門あり。佛、国王の為に特にこの経をときたもう。七難を摧滅し、四時を調和し、国を護り、家を護り、己をやすんじ、他をやすんず、この道の秘妙の典なり。(性霊集巻四)

・・天長二年東寺を賜り教王護国寺とする。国王を教化して国を守るという鎮護国家建設の構想の出発点でもある。講堂には不空訳「仁王護国般若波羅蜜多経陀羅尼念誦儀軌」等にもとずき、五佛、五菩薩、五明王を安置した。そして同七月には仁王講を行い其の功徳が有情無常一切に及ぼし、悟りの世界にはいることをねがっておられる。すなわち大師の理想国家は正法治国家であり、・・究極のもくてきは各々の心に密厳国土を建設することにあった。・・

東寺には大師在世時の感得像とつたえられる木像彩色の僧形八幡神像が安置されている。・・・八幡神は延暦二年(783)には次のような託宣を降される「神吾は無量劫の中、三界に化生し、修善方便し衆生を導き救ふ。吾が名は是れ大自在王菩薩なり。宜しく今号を加へて、護国霊験威力神通大自在王菩薩といふべし。古佛の垂迹なり。大悲の御身なり。佛位にて説くをば、経教と仰ぎ奉り、神道にして宣ふおば、託宣と称す。真実なるものなり。虚妄ならざるものなり。・・・誓願にまかせて神道を示して、朝家を守り奉るてへり。吾は慈悲をもって本誓となす。寺務・社務の司に、非法のあるときは、寂光土にかえるべし。吾が躰は有もまた空もまた只正道をもって躰と為すてへり(宇佐八幡御託宣集)。」すなわち大師感得とされる東寺、神護寺の僧形八幡神像は出家した「護国霊験威力神通大自在王菩薩(注)」を意味する。神仏習合のさきがけともいえる八幡神のすがたである。
・・・
そして東寺の彩色曼荼羅は如来内証智の開顕であり、これは大地、国王を護る「教王護国寺」にまつられ、「赤紫綾地金銀泥曼荼羅」は天帝皇祖に天長地久を願うものであり、「神護國祚真言寺」(神護寺)にまつられることになる・・・」


(注)護国霊験威力神通大自在王菩薩二について、神道集では「宇佐八幡宮事
宇佐八幡宮は豊前国に鎮座する。
宇佐由来記によると、豊前国宇佐郡山谷の辺に八頭の老翁が化現した。 大神比義という人が五穀を絶って奉幣し「あなたがもし神ならば、我が前に顕れて名乗りたまえ」と祈願した。 この時、八頭の老翁の姿が消えて二三歳の小児と成り、竹の葉に乗って「我は日本人皇十六代誉田天皇である。名は護国霊験威力神通大自在王菩薩と号す」と託宣した。」とあります。

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