福聚講

平成20年6月に発起した福聚講のご案内を掲載します。

「『チベットの死者の書』から学ぶもの・・・三浦順子(チベット関係翻訳家)」(大法輪、20,11)

2017-09-14 | 法話
「『チベットの死者の書』から学ぶもの・・・三浦順子(チベット関係翻訳家)」(大法輪、20,11)
「・・・(チベットはじめ仏教国では輪廻転生が仏教の大前提として信じられており、この輪廻からの解脱ができてはじめて至高不滅の幸福に至ることができるとされている。)そしてチベット密教の説くところによれば死と、中有のひとときこそ輪廻の苦から脱出できる貴重このうえない機会である。というのも死によって肉体を構成する地水火風の四つの元素の力が弱まり、一つ一つ溶解していくとともに、心の根源にして最も微細なこころ「本源なる光明の心」が立ち上ってくるからだ。この瞬間になされることはよかれあしかれその後に決定的な影響をもたらすという。・・もし死の瞬間に本源なる光明の心をとらえることができたならその修行者の肉体は死後数日経っても腐ることも死後硬直することもなく、まるで生きているかのように瞑想のポーズをとり続けるという。こうした状態をチベット語で「トウクダム」と呼びきわめて高い覚りを得たしるしとされている。凡人でも高僧の神通力や追善供養の力を借り(中有で供養すれば)阿弥陀仏の極楽浄土などの佛国土に、それが無理でも地獄や餓鬼といった悪趣を避け望みどおりの来世に生まれ変わることができるとされている。
ここで死者を導くための大切な枕経とされているのが「バルド・トウ―ドウル(中有における聴聞による大解脱)」である。これは中有にある意成身という意識のみでできた存在に「いまあなたはすでに死んで、中有のなかにいます。恐ろしい轟音が聞こえてくるでしょうがそれは仏の真言と思いなさい。寂静、憤怒の諸仏が強烈なイメージで次々顕現してくるでしょうが、それはあなたの本心から変化して現れたものに過ぎません。怯えないでそれはそれと認識しなさい、そうすればあなたは覚りを得て、六道輪廻の世界に戻らなくてすみます・・・」と読み聞かせ正しい道に導く。
ちなみにチベットの死者の供養は以下のようなものだ。人が死ぬとまず、高僧に頼み、死者の意識を頭頂の霊的な孔から引き出し、極楽浄土に送るという儀式をできるだけ早く行う。其の儀式が済むまでだれも遺体にさわってはならない。触れるとそこから死者の意識が抜け出て、あらぬところに転生してしまうからだ。中有の期間中は毎日、もしくは七日ごとに、意識だけの存在(意成身)に語りかけるために「バルド・トウ―ドウル」を読経してもらい、灯明、供物を並べて大掛かりな追悼供養を行う。日本では会葬者の都合で初七日や四十九日をきめてしまうがチベット人からすると死者のこれからの運命を決める大切な日取りを会葬者の都合で変更するなど論外であろう。・・・」

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