福聚講

平成20年6月に発起した福聚講のご案内を掲載します。

心は一つであるのに、なぜこの世にはいろいろの果報の違いが生じているのか

2020-07-05 | 諸経

Q「心は一つであるのに、なぜこの世にはいろいろの果報の違いが生じているのか。幸福な人がいれば不幸な人がおり、苦しんでいる人がいれば楽しんでいる人もいるのは何故か。」
A「真理は本来現象としてあらわれることはないのである。現象として現れる時は変化しているように見えることもあるが本来、真理は現象することもなければ現象するものもないのである。」

 以下、華厳経明難品から・縁起甚深について、和訳と原文。
文殊菩薩が覚首菩薩に問うて言うに、
「仏子よ、心の本性は一つであるのに、なぜこの世にはいろいろの果報の違いが生じているのでしょうか。幸福な人がいれば不幸な人がおり、肢体の完全なものがいれば不具な者がいる、端正なひとがいれば端正でない人もいる、苦しんでいる人がいれば楽しんでいる人もいる。そして差別を作り出しているもととなっている業は原因の深層意識(「心」)をしらないし、深層意識「心」は元となっている業をしらない。周囲の影響で形成される意識(「受」)は、その意識が蓄積される結果(阿頼耶識)を知らないし、結果はそのもととなる意識「受」を知らない。「心」(阿頼耶識)は「受」(阿頼耶識から転じて生じた眼識・耳識・鼻識・舌識・身識・意識・末那識)を知らないし、「受」は「心」(阿頼耶識)を知らない。因は縁を知らないし、縁は因を知らないのは何故だ。」

 これにたいして覚首菩薩は、次のように答える。
「衆生を教えみちびくために、あなたは、よくこの問題をたずねてくれた。わたしは世界のありのままのすがたを説こう。よくおききなさい。
 すべてのものは本質を持たない。本質を求めても分からない。従ってすべての存在要素は相互に他の要素のことは知らないのだ。
 たとえば、川の水は流れ流れてやむことがないが、その一滴一滴は、たがいに知らないように、すべての存在要素もまたそうである。
 また、灯の炎もえてしばらくもとどまらないが、そのなかのそれぞれの炎はたがいに知らないように、すべての存在要素もまたそうである。

大風がおこり触れるものすべてを動揺させるが風同士は相互に知らないようにすべての存在要素もまたそうである。
深い大地の地層は相互に支えあっているが相互に知らないように、すべての存在要素もまたそうである。
 眼・耳・鼻・舌・身心などは、苦しみをうけていると感じているが、しかし実際には、なんの苦しみも生じてはいないのである。
真理は本来現象としてあらわれることはないのである。現象として現れる時は変化しているように見えることもあるが本来、真理は現象することもなければ現象するものもないのである。 
 正しく思惟しよく洞察すれば、あらゆるものは空であり本質はないことがわかる。このような考えは顛倒してない清浄な法眼にうつるものである。
 虚妄といい虚妄でないといい、真実と云い真実でないといい、世間といい出世間ということなどは言葉上の仮の表現にすぎない。」


(原文・華厳経明難品・縁起甚深について)「爾時文殊師利菩薩、覺首菩薩に問うて言く、『佛子よ、心性は是れ一なるに云何ぞ能く種種の果報を生ずるや。或は善趣に至り、或は惡趣に至る。或は諸根を具し、或は不具なる者あり。或は善處に生じ、或は惡處に生ず。端正・醜陋・苦樂不同なり。業は心を知らず、心は業を知らず。受は報を知らず、報は受を知らず。心は受を知らず、受は心を知らず。因は縁を知らず、縁は因を知らず。智は法を知らず、法は智を知らず』。
爾時、覺首菩薩。偈を以て答て曰く、
『 衆生を化せんが為の故に 乃ち能く斯義を問へり。 諸法如實性を我説ん。仁よ、諦聽せよ。
諸法は不自在なり、 實を求むるに不可得なり。是故に一切の法は 二ともに相知らず。
譬へば駛水(しすい・急流)の流は 流れ流れて絶已むこと無けれども二倶に相知らず。 諸法も亦た如是なり。
亦、明燈の焔は 焔焔として暫も停らざれども二倶に相知らず。 諸法も亦た如是なり。
亦、長風起り 鼓拂して動勢生ずるも二倶に相知らず 諸法も亦た如是なり。
亦、深廣の地は 展轉として相依住するも二倶に相知らず、 諸法も亦た如是なり。
眼耳鼻舌身 心意諸情の根は此れに因て衆苦を轉ずるも而も實に無所轉なり。
法性は無所轉なれども 示現の故に有轉することあり。彼において示現なければ 示現にも所有なし。
眼耳鼻舌身 心意諸情の根は其の性は悉く空寂なれば 虚妄にして無眞實なり。
觀察して正思惟せば 有の者にも所有無し。
彼の見は顛倒ならず、 法眼清淨なる故に。
虚妄・非虚妄、 若は實、若しは不實も
世間・出世間も 但だ假言説あるのみ。』

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