観音經功徳鈔 天台沙門 慧心(源信)・・16/27
観音經功徳鈔下目録
一、三十三身の総釋の事
二、祇陀末利の事
三、三十三身の義の事
四、十九説法の事、同依報をも化し玉ふ事、布施の事。
五、禅那維那の姫の事
六、観音罪人の苦に代り玉ふ事、千眼の事。
七、聖観音の事
八、摂折二門の事
九、感應同時の事、定業轉不轉の事。
十、慈童仙人と成る事、持地の十法の事。
十一、自在の業の事、八万四千の事、無等等の事。
上は大悲抜苦の冥利をして、七難三毒の患累を遁るることをば明す。此れより下は大慈與樂の顕用をして現身説法の功力を得るを説くなり。
「無盡意菩薩白佛言。世尊。觀世音菩薩。云何遊此娑婆世界。云何而爲衆生説法。方便之力。其事云何。」此の文は第二番の問答なり。さて此れより下は現身説法の相を説く故に顕の利益といふなり。又大慈與樂の義なり。無盡意の問に三業の問あり。「云何遊此娑婆世界」とは身業を問ひ「云何而爲」等とは口業を問ひ、「方便之力」等とは意業の利益の相を問ふ。是則ち無盡意菩薩佛に対し奉り観音の三業利益の相を問ひ玉ふなり。
「佛告無盡意菩薩。善男子。若有國土衆生應以佛身得度者。觀世音菩薩。即現佛身而爲説法。應以辟支佛身得度者。即現辟支佛身而爲説法。應以聲聞身得度者。即現聲聞身而爲説法。」此の文は如来の答なり。此に三あり。初「佛告」より下は別答なり。次に「以種々形」等の十二字(以種種形遊諸國土度脱衆生。)は総答なり。次に「是故如等」より(是故汝等。應當一心供養觀世音菩薩)は供養を勧るなり。初めの別答といふは三十三身(仏身、辟支仏身、声聞身、梵王身、帝釈身、自在天身、大自在天身、天大将軍身、毘沙門身、小王身、長者方、居士身、宰官身、婆羅門身、比丘身、比丘尼身、優婆塞身、優婆夷身、長者婦女身、居士婦女身、宰官婦女身.婆羅門婦女身、童男身、童女身、天龍身、夜叉身、乾闥婆身、阿修羅身、迦楼羅身、緊那羅身、摩喉羅伽身、人非人身、執金剛神身)十九説法(仏身・辟支仏身・声聞身・以下六種「天」身の六説法、五種「人」身の五説法、四「衆」身の一説法、四「婦女」身の一説法、「童男童女」身の一説法、「八部衆」の一説、「執金剛神」の一説法。)の相なり。此れに付て又三業の答あるなり。「應以佛身得度者」等とは身業の利益の相をこたへ玉ふなり。さて「即現仏身声聞身」等とは身業の利益の相を答へ玉ふなり。さて「而為説法」といふは観音の口業の相を答玉ふなり。