福聚講

平成20年6月に発起した福聚講のご案内を掲載します。

  物体はその実体を失った

2020-12-16 | 法話

「相互依存の概念から直接『空性』の概念が生まれる。これは虚無を意味するのでなく、固有の存在の不在を意味する。すべてが相互依存している以上何者もそれ自体では定義されず、存在しえない。それ自体で独立して存在する本来的特性という概念はもはやあてはまらない。ここでもまた量子力学は驚くほど似た言葉使いをする。ボーアとハイゼンベルグによれば我々は最早、速度や位置のように明確に定義された特性を持つ現実の存在としての原子や電子について語ることは出来ない。原子や電子はモノやコトの世界ではなく、潜在性の世界を形作るものとして考えるべきである。物質と光の性質そのものも、相互依存関係の働きとなる。つまり、その性質はもはや本来的なものではなく、観測者と観測される対象との間の相互作用によって変わりうるのだ。我々が「粒子」と呼ぶ現象はわれわれが観測しないときは光の形をとっている。測定や観測なされるやそれはまた粒子の衣をまとう。・・・出来事を意味する『サンカーラ』という仏教概念とぴったり重なるように、量子力学は物体の概念を測定つまり「出来事」の概念に従属させることで徹底して相対化する。・・物体はその実体を失ったのだ。」「掌の中の無限」(マチウ・リカール(分子生物学者にしてチベット仏教僧侶)とチン・スアン・トアン(ヴァージニア大教授(天体物理学)共著)


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