福聚講

平成20年6月に発起した福聚講のご案内を掲載します。

四国八十八所の霊験・・・その106(最終回)

2019-01-14 | 四国八十八所の霊験
その3、 我々は「縁」の海にいること

 「文明の崩壊」(シャレド・ダイヤモンド)は過去いかに多くの文明がその構成員のエゴと社会の愚かさでみずから崩壊していったかを具体的に分析しています。
 戦争、テロ、環境破壊、暴力・・我々は過去の崩壊文明とおなじ道をたどろうとしています。
 「個」の論理と「宇宙」の論理、「個」の救済と「宇宙」の救済が一致していないところに崩壊する文明の共通点があるのです。自分さえよければ他者は犠牲にしてもよいという現代の風潮はまさにこれです。

 遍路は十善戒をまもることになっています。
 十善戒とは
一、不殺生
二、不ちゅう盗
三、不邪淫 
四、不妄語
五、不綺語
六、不悪口
七、不両舌 
八、不慳 
九、不瞋恚
十、不邪見
です。これらは個人も救われるし全体も救われる思想です。この根本には自分も他者も大日如来だという思想があります。
 このように個人と全体の両者の救済を包摂する考えを持つ仏教はめずらしい宗教です。
 仏教を非科学的と見る向きもありますが最先端の素粒子論宇宙論はどんどん仏教理論に近付いています。

 たとえば仏教では(具体的には倶舎論の)宇宙は虚空に有情の業から一陣の風が起こることから生じ、それが二十劫という長い時間かけて火難水難等で壊れ、何も無い時間が二十劫続く。
そのあとまた二十劫かけて生じる。
 このようにして宇宙は生滅をくりかえすとされています。

 このあたりは川合光「超ひも理論」(講談社現代新書)にいう「宇宙は「無」から生じビッグバン、ビッグクランチ(収縮から無)の繰り返しである」とする宇宙論がそっくりになってきています。

 また「超ひも理論」によると私たちの4次元宇宙は10次元宇宙のなかに無数にある膜宇宙のひとつにすぎないともいわれています。
 4次元の中の更に一部しか分からない我々の知覚など10次元宇宙からみればゼロに等しいということです。
 インフレーション理論の逆三角形の宇宙創成イメージは個々の真言行者の行う観法にそっくりです。
(先に述べた阿字観にでてきます)。カリフォルニア大学のフリシチョフ・カプラは「タオ自然学」のなかで述べています。「「相対性理論の時空の世界は本質的にダイナミックな世界であってここでは物体は「過程」である。(諸行無常)。現在無数の素粒子が知られているが今日これらの素粒子は「粒子」と呼べなくなった。「客観的実在は消滅してしまった(ハイゼンベルグ)(諸法無我)。」
万物は他のすべてとつながっておりすべての自然現象は究極的に相互に関連している。宇宙は相互に関連しあった一つの全体であり、その中のいかなる部分も他に比べて根源的ではない。あらゆる部分の特性は他のすべての部分の特性によって決定される。あらゆる部分が他のあらゆる部分の物事の結果である。いわば個々の部分が他のすべての部分を「含む」のである。出来事一つ一つが全宇宙に影響されている。」


 我々や宇宙すべては重々無尽の縁で繋がっています。
 四国遍路で24番最御崎寺のあたりで若者遍路にバス代を接待したらその人はなんと私にお遍路をすすめた広島の大師寺西嶋師の信者さんだったということがありました。

 西嶋師は昨年大日経の講伝を受けるため高野山にのぼったところ普門院でばったり二十七年ぶりに再会し、それ以来交誼をお願いしているという不思議な関係にある人でもあります。(
 探している句なども大蔵経のたまたま開いたページにぱっと出てくることがあります。
 さきの大般若経のところなどそうです。最近では何十年も前の俗世の職場の人とばったり会い法話原稿をたのまれるということが相次ぎました。

私が最近行をさせていただいた奈良の観音寺には玉城康四郎東大名誉教授の
「不可思議のえにしの海に うかびぬる ともに命の ともずなを解く」
という句がかけてありました。
 森羅万象皆不思議な縁で時空を越えて重々無尽につながっているといっているのです。
 

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