田辺元「懺悔道としての哲学」より「・・・我国に、国家主義の清算を課する連合国中にも、民主主義と社会主義との協調は決して解決せられた事実ではなく、寧ろ今後に課せられた問題たるのであって、それが満足の解決に達せざる限り、多くの矛盾が内外からこれらの国々を悩ますことも避けがたい。民主主義国も社会主義国もまた、それぞれに懺悔すべきものをもつのである。もし我国が復興の世界歴史的使命をになうものありとすれば、この両主義のいずれでもなくして、しかも両者に自由に出入する第三の道を発見し実践するにあると考うべきではないか。果たしてしからば懺悔道はひとり我国民の哲学たるのみならず、人類の哲学でもあるのでなければならぬ。人類は総に懺悔を行じて、争闘の因たる我性の肯定主張を絶対無の媒介に転じ、宥和協力して解脱救済へ相互を推進する絶対平和において、兄弟愛の歓喜を競い高める生活にこそ、存在の意味を見出すべきではないか。世界歴史の転換期たる現代の哲学は、特に懺悔道であるべき理由をもつといっても、それは必ずしも我田引水ではあるまい・・」
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