弘法大師七箇の御誓願
第一の願にのたまはく、
我、今生にしばらくも住せし所には日々の化身を降して、有縁の衆生を加持護念して、現当の所願を成ぜしめん。
第二の願にのたまはく、
末世に到りてこの山もし退廃せん時、我れ定中より法を興して教行利人退転なからしめん。
第三の願にのたまはく、
我が滅後の弟子、幾百千万ありと雖も師はすべて我一人なり。我が形像を見、我が教えを聞きて我が在世の思いを為さば、我れ定慧の力をもって彼等を摂取して種智を円満せしめ、乃至竜華の證明にあずからしめん。
第四の願にのたまはく、
たとえ我が山に詣でざる輩も遥かに念じて我を慕い、信を尽くして恭敬せば、我れ明らかに知見して必ず大果を結ばしめん。
第五の願にのたまはく、
夫れ我が山は両部不二、法性の浄土なり。胎蔵の峯には金剛の塔聳え、金剛の塔の中には両部の諸尊不二を示す。我れ亦た眷属の金剛善神を率して常に曼荼羅の界会を成せるなり。もし信あって登らん者は、過去の功徳の勝れたるを歓ぶべし。もし信なくして詣でざらん者は、過去の功徳の拙きを歎くべし。現当二世の福、専らこの山に在り。疑いを生ずることなかれ。
第六の願にのたまはく、
我が滅後に信あらんものは、我が名号を聞いて恩徳を思念せよ。仏法の恵命を継いで竜華の扉(とぼそ)を開かしめん。
第七の願にのたまはく、
我が山は皇城の大鎮護なり。帝皇南面の徳を鎮めて宝祚の万歳(まんぜい)を誓う故に、天下の南に在りて騫ず(かけず・・そこなわず)、崩れざるものなり。
(「弘法大師七箇の御誓願」は「御遺言」のなかから江戸時代にまとめられたものです。)
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