秘密安心往生要集・・3/42
(一、仏法の安心に三品あること)。
問、諸宗に安心とて口授相伝あり。真言宗に於いては如何が安心決定すべきや。且臨終の用心等、具に示し玉へ。
答、夫れ仏法の安心に三品あり。上は即身成仏頓悟涅槃。中は願いに随って十方の浄土に往生するなり。下には永く悪道を離れて見佛聞法、常に人天にありて、勝快楽を受くるなり。
真言行者は皆必ず即身成仏を期すれば、中下二品の悉地は求めざれども自ら円満するなり。然れども即身成仏は上根上智宿福深厚の人、機教相応するにあらざれば叶ひがたし。されば如来入滅の後、天竺支那日本にて諸宗の祖師の中に即身成仏し玉へるは、弘法大師一人のみなり。龍猛菩薩は歓喜地を証じて極楽浄土に往生し、無著菩薩世親菩薩は兜率の内院に往生し玉へり。
(「入楞伽經第九巻」「如來滅度後、當に未來に人あるべし………南大國中に大徳比丘あり、龍樹菩薩と名け、能く有無の見を破し、人の爲めに我が法の大乗無上を説き、歡喜地を證して、安樂園に往生せん」
「西域記第五,阿踰陀國條下」「城西南五六里,大菴沒羅林中,有故伽藍,是阿僧伽(唐言無著)菩薩請益導凡之處。無著菩薩夜昇天宮,於慈氏菩薩所受瑜伽師地論、莊嚴大乘經論、中邊分別論等」。)
然れば三品の中に今は中品の安心を示さん。中品の悉地を得ば、上品下品も亦自ら成就すべし。