今日弘仁三年六月七日は大師が嵯峨天皇に「狸毛の筆を奉献」された日です。
性霊集巻四の「筆を奉献する表」です。
「筆を奉献する表」「狸毛の筆四管。真書一。行書一。草書一。写書一。右伏して昨日の進止を奉わってかつ筆生坂井名清川をして造り得て奉進せしむ。空海、海西において聴き見しことかくのごとし。その中に、大小・長短・強柔・斉尖なるものは、字勢の粗細に随ってすべて取捨するのみ。毛を簡ぶの法、紙を纏うの要、墨を染めて蔵めて用うること、ならびにみな伝え授け訖んぬ。空海自家にして試みに新作のものを看るに唐家に減らず。ただ恐らくは星の好み各別にして聖愛に允(かなわ)ざらんことを。自外の八分小書(八分という書体や小字体の書)の用、蹋書(せんしょ・模写)臨書の式、いまだ作ることを見ずといえども。口授を具足することを得たり。謹んで清川に附して奉進す。不宣。謹んで進つる。
弘仁三年六月七日 沙門空海進つる。」