福聚講

平成20年6月に発起した福聚講のご案内を掲載します。

涅槃について、3

2016-02-18 | 法話
涅槃図
涅槃のご様子を描いたものが涅槃会や常楽会で掛けられる涅槃図です。主に大般涅槃経序品をもとに描かれています。2様式のものがあるといわれています。平安時代のものは釈尊が大きく描かれ会衆や動物は少ないのですが、鎌倉以降は釈尊を小さく会衆や動物を多く登場させているとのことです。最古のものは高野山金剛峰寺にある大涅槃図です。平安時代(応徳3年、1086年)に描かれたもので日本最大(約27M四方)でもあり国宝です。室町時代には宋のものが京都長福寺に伝わりこれを明兆殿司が手本として京都東福寺に大涅槃図を製作したとされます。また江戸時代には道益が版画涅槃図を製作し以後これが主流となったといいます。しかし、寺の数だけ涅槃図があるともいわれ、多くの寺で多様な涅槃図がつくられてきたことも確かです。護国寺本堂には18.8M×8.8Mの寛保二年(1743年)奉納の猫曼荼羅とよばれる大涅槃図が保管されてあり25年に一度のご開帳です。(数年前に隣の日大豊山高校の体育館でご開帳されたようです。)
お釈迦様の2月15日の入涅槃にあたり大音声が発せられまた大光明がありこのなかで世界に涅槃をつげられたのですがこれをきいて菩薩、比丘、国王、大臣など五十二類の神仏衆生が参集したとされます。これを五十二衆といいます。この様子が涅槃図にさまざまに書かれています。以下「国宝仏涅槃図(高野山霊宝館)」と「絵解き涅槃図(竹林史博)」等から主な登場人物を解説します。

・お釈迦様と摩耶夫人
お釈迦様は中央に北枕で右脇を下にして寝ておられます。これは仏教北伝の意とか生地ルンビニーが北であるためとか面を西に向けるためとかいわれています。このとき沙羅双樹が4本は花開き4本は枯れます。これを四枯四栄といい仏法が栄えることとお釈迦様が入滅されることを示すとされます。このときお釈迦様は阿難に水を所望されますがこれが末期の水のはじまりです。今の葬儀の北枕、末期の水,四本旗などみなお釈迦様の涅槃のご様子を模したものです。母君摩耶夫人は上方で阿那律に導かれ雲の乗り忉利天より降りてこられています。

・阿難
お釈迦様のすぐ前に倒れているのが多聞第一といわれた阿難尊者です。魔にかこまれて動けなくなったのをお釈迦様が文殊菩薩に命じて救助します(「憍陳如品」)。戻った阿難尊者はあまりの悲しみに気絶しています。阿那律が鉄鉢から水を注いで「阿難よたとえ佛は涅槃されても無上の法寶がある。精進して衆生を救い如来のご恩に報いよう」と諭し正気に戻らせます。

・阿那律
天眼第一といわれた阿那律は此の葬儀の主宰者です。さきの阿難を介抱するとともに上のほうでは雲に乗って忉利天から駆けつける母上摩耶夫人を先導しています。
・弥勒菩薩、地蔵菩薩、高貴徳王菩薩、普賢菩薩、文殊菩薩、観音菩薩、虚空蔵菩薩
これらの中には観音様など法華経にのっとって描かれた菩薩様もあります。いずれも宝冠をおつけになりお釈迦様の頭の周りを取り囲まれています。高貴徳王菩薩は大般涅槃経でお釈迦様の対告衆です。観音様の宝冠には阿弥陀如来がおられます。

・迦葉童子
宝床のすぐ下左に描かれます。大般涅槃経でお釈迦様の対告衆をつとめました。12歳といわれ双髻の童子のお姿です。

・耆婆
左下に俗服でかかれています。教団の主治医ともいうべき人です。父を弑した業による悪腫に苦しむ阿闍世王をお釈迦様のもとに連れてきます。ここで五逆罪を犯した阿闍世王さえも釈尊の大光明により膿は消え菩提心を生じます。ここに「悉有仏性」が象徴的にとかれます(梵行品)。阿闍世王はお城にかえったと大般涅槃経にあり、ここには描かれてない事が多いようです。

・阿修羅と帝釈天
阿修羅と帝釈天は常に戦っていますが阿修羅はお釈迦様の背のあたりに3面をもってかかれています。帝釈天は真ん中よりすこし左下に冠をつけた女性的なお姿で書かれます。聖行品でお釈迦様の前生の雪山童子を「諸行無常、是生滅法、生滅滅己、寂滅為楽」という偈で試すのが帝釈天です。

・執金剛神、密迹金剛神
山門にある仁王様のことで宝座の下両側に裸でおられます。仏様を守ることを本誓とします。
 
・難陀竜王、跋難陀竜王 
お釈迦様の降誕にあたり空から清浄な水を頭上に注ぎ灌頂したとされます。蛇が巻きつく状態で右下に描かれます。法華経に登場し仏法守護する八大竜王としてこのほかに娑羯羅竜王、和修吉竜王、徳叉迦竜王、阿那婆達多竜王、摩那斯竜王、優鉢羅竜王などがあります。

・善女竜王
左下に供物を捧げる男形で描かれます。さきの娑羯羅竜王の3女で清滝権現と同体です。密教では如意輪観音の化身とされます。お大師様は神泉園でこの善女竜王に祈り雨を降らせました。

・阿修羅 仏法を保護する八部衆の一人。赤髪、三面青黒色、憤怒裸形にかかれています。

・迦楼羅 仏法を保護する八部衆の一人。鳥の冠を被っています。

・緊那羅 仏法を保護する八部衆の一人。象の冠を被っています。

・摩睺羅伽 仏法を保護する八部衆の一人。蛇の冠を被っています。

・純陀
中央下から右に泣き伏している姿でかかれています。お釈迦様が最後に供養を受けられた相手です。此のときの茸料理がもとでお釈迦様がなくなったとされますがお釈迦様は「純陀は此の供養によって大利を得る」とおっしゃいます(大般涅槃経)。
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