福聚講

平成20年6月に発起した福聚講のご案内を掲載します。

四国遍路日記(山頭火)・・その18

2014-03-25 | 法話
十一月二十一日

早起、すぐ上の四十四番に拝登する、老杉しんしんとして霧がふかい、よいお寺である。
同宿の同行から餅を御馳走になったので、お賽銭を少々あげたら、また餅を頂戴した、田舎餅はうまい、近来にないおせったいであった、宿のおばさんからも月々の慣例として一銭いただいた。八時から九時まで久万町行乞、銭十三銭米二合、霧の中を二里ちかく歩いてゆくと三坂峠、手足の不自由な同行と道連れになり、ゆっくり歩く(鶏を拾った話はおかしかった)、遍路みちはあまり人通りがないと見えて落葉がふかい、桜の老木が枯れて立っている、椋の大樹がそそり立っている、峠が下りになったところでならんでお弁当を食べてから別れる、御機嫌よう。
山が山に樹が樹に紅葉をひろげてうつくしさったらない、いそいで四十六番参拝、長い橋を渡って、森松駅から汽車で松山へ、立花駅から藤岡さんの宅へとびこんだのは六時頃だったろう、ほっと安心する。
人のなさけにほごれて旅のつかれが一時に出た、ほろ酔きげんで道後温泉にひたる、理髪したので一層のうのうする、緑平老のおせったいで、坊ちゃんというおでんやで高等学校の学生さんを相手に酔いつぶれた! それでも帰ることは帰って来た!
奥さん、たいへんお手数をかけました、……のんべいのあさましさを味う、……友情のありがたさを味う。

大宝寺


朝まゐりはわたくし一人の銀杏ちりしく
お山は霧のしんしん大杉そそり立つ


へんろ宿


お客もあつたりなかつたりコスモス枯れ/″\
霧の中から霧の中へ人かげ
雑木紅葉のかゞやくところでおべんたう
秋風あるいてもあるいても



蓮月尼 宿かさぬ人のつらさをなさけにて朧月夜の花の下臥
(山頭火は45番岩屋寺から44番大宝寺、46番浄瑠璃寺へとお参りしたようです。46番までお参りしたならすぐ横のあるいて数分の47番八坂寺もお参りすればよかったのにと思いますが帰心矢の如しだったのでしょう。)
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