結論を先に言っておきます。『明治維新以来わずか150年の間に突然日本は有史以来の滅亡の危機に何度も立たされる羽目に陥った。これは尋常ではない。明治の神仏分離により神仏一体により培われてきた日本的霊性が破壊され、日本国体の基礎が破壊された為の混乱である。日本国を再度立ち直らせるためには神仏一体の国体を再構築するしかない。』
一、明治以来の日本の危機とは、いまさらいうまでもないことですが、
・㈠日清・日露戦争、㈡首都を壊滅させた関東大震災、㈢太平洋戦争と人類史上初の二度にもわたる原爆被爆、㈣敗戦による天皇制廃止の危機・米ソによる日本分割統治の危機、㈤東日本大大震災と東日本全体を廃墟となす恐れのあった原発事故、㈥中国・ロシア・北朝鮮の深刻強烈な脅威の台頭、㈦今後確実とされる首都直下型大地震・東南海大地震の発生、㈧何よりの危機は日本人のかってないほどの精神的退廃、です。
・明治以降わずか150年の間に、このように日本国そのものが存亡の危機に何度も立たされ続けているということは尋常ではありません。いままでの歴史にはなかったことです。単に偶然が重なったとは言えない深刻さを秘めています。これは「日本国の基盤そのものが崩壊をはじめたため」、としか言いようがありません。単なる偶然の一致と人は言うでしょうが、ではなぜそういう危険な偶然の一致が明治維新以降何度も起きるのかを考えると、この原因は千数百年にわたる日本の神仏一体の精神基盤を明治維新でむりやり分離し壊したことにより日本人の精神構造が分裂し更にはそれにより国体が破壊されているため、としか考えられません。が
二、以下まず神仏一体が日本の国体の基礎であったことの例証を示していきます。
・、まず例えば、西行は伊勢で「さかきばに心をかけむ ゆうしでを おもえば神も仏なりけり」と詠み、西行物語には「胎金両部を統合される大日如来様は伊勢の内宮では胎蔵界大日となり、外宮では金剛界大日となり、並び祀られている」という趣旨の記述もあります。
以前の日本ではこういう神仏一体論が常識であったと思われます。
・、こういう神仏一体論の根拠の一つとして、御大師様の記と伝えられる「天地麗気記」があります。この最初には以下の様に記されてあります。
『天神七葉(国之常立神(くにのとこたちのかみ)豊雲野神(とよぐもぬのかみ)宇比邇神(うひぢにのかみ)・須比智邇神(すひぢにのかみ)角杙神(つぬぐいのかみ)・活杙神(いくぐいのかみ)意富斗能地神(おおとのじのかみ)・ 大斗乃弁神(おおとのべのかみ)淤母陀琉神(おもだるのかみ) ・阿夜訶志古泥神(あやかしこねのかみ)伊邪那岐神・伊邪那美神)は過去七佛(毘婆尸仏; 尸棄仏; 毘舎浮仏; 倶留孫仏; 倶那含牟尼仏; 迦葉仏; 釈迦仏)の転じて天の七星(貪狼、巨門、禄存、文曲、廉貞、武曲、破軍)とあらわる。地神五葉(天神七代に続き、神武天皇以前に日本を治めた5柱の神。天照大神・天忍穂耳尊(あまのおしほみみのみこと)・瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)・彦火火出見尊(ひこほほでみのみこと)・ 草葺不合尊(うがやふきあえずのみこと)は現在の四佛(宝幢、開敷華王、無量寿、天鼓雷音)に遮那(大日如来)を加増して五佛となす。化して地の五行神(土神=ハニヤスヒコノカミ ・火神 =カグツチノカミ・金神=カナヤマヒメノカミ・水神=ミズハノメノカミ ・木神=ククノチノカミ)となる。供奉の十六葉の大神大小尊は賢劫の十六尊なり。おもうに昔因地にいまして菩薩の道を行じたまふ。時に千たび生まれ、萬たび生まれて百葉より百世を重ね千千に旦って國を守ります神に座ます。・・伊弉諾尊ハ金剛界。俗躰、男形ニシテ、馬鳴菩薩ノ如ク、白馬ニ乗テ、手ニ斤(はかり)ヲ持チテ、一切衆生ノ善悪ヲ、之ヲ量リタマフ。伊弉冊尊ハ胎蔵界。俗躰、女形ナリ。但シ阿梨樹王ノ如シ。荷葉ニ乗ジテ説法、利生ス」と述べ、この諾冊二尊が「幽契ヲ為シテ一女三男ヲ所産ス。一女トハ天照皇太神」・・』
・、各神社の参詣曼荼羅には必ず神仏が一体として描かれてきています。例えば春日曼荼羅には春日社の四所明神等から本地の仏様(お釈迦様、弥勒、地蔵、十一面観音)として現れる様子が書かれていますし、富士参詣曼荼羅にも頂上には阿弥陀様が描かれています。
・そうしてさらに、日本国の危機の時は、常に神仏一体で祈りが捧げられてきました。蒙古襲来では全国の神社仏閣で神仏一体となった祈願が行われています。一例として八幡愚童記には蒙古襲来時に叡尊上人等七百人の浄侶が石清水八幡で、「大般若一部、最勝王経百部、仁王講百座、・・一切経転読」「狩尾社に・・理趣経転読・・」等の結果神風により蒙古が撃退された、とあります。このように危機の時は神社でも密教の修法を行うことは常識であったのです。
・、明治維新までは天皇の即位式は神仏一体でした。天皇は密教の即位灌頂をうけられ大日如来の印信も授かっておられました。皇室も神仏一体の信仰を持っておられ宮中には仏間がありました(御所には仏間である「御黒戸」や観音様を祀った「二間」がありました)。天皇陛下はご退位されると法体となられ『法皇」と称され、皇族方も出家される例が多く見られました。天台座主となられた皇族もおおくおられますし、宮門跡寺院もおおくあります。皇族は崩御されると泉涌寺に葬られ御位牌もつくられています。
三、しかし一転して、明治維新で廃仏毀釈がとなえられ、多くの寺寺が廃絶され、皇室からも仏教儀式を取り上げられました。千年以上続いてきた天皇陛下の即位灌頂も廃止されました。
四、その結果、日本の基盤が破壊され明治以降日本が何度も滅亡の危機にさらされていることは先にのべたとおりです。
五、それでは、どうすればいいのか、簡単です。神仏一体の信仰を国民各層が取り戻せばよいのです。
・家庭では仏壇と神棚をお祀りする。これは大きくなくても壁掛け式でもいいのです。
・地域では神社仏閣を一体としてお祀りする。神事・仏事には神社仏閣そろって相互に祝いあう。住民は地元の神社仏閣を常にコースでお参りする。
・近畿地方では主要な神社仏閣が網羅されて「神仏霊場会」が発足しています。こういうところを日本中の人がお参りする事も大切です。
・社会的指導層もそれぞれの組織内で神仏を一体でお祀りする。松下幸之助・出光佐三等成功者はみな神仏一体の信仰者でした。
・政治家も神社仏閣を一体でお参りする。
・できれば皇族方も神社仏閣を一体でお参りしていただく。
・そしてこれが一番むつかしいのですが、即位灌頂の復活とまではいかなくても陛下に神社仏閣を一体でお参りいただければこれにまさる国運回復策はない、と思われます。今のように陛下の最も大切な宮中神事すら宮内庁が十分認識しているとは言えない状態では大変難しいことではありますが・・。
六、そしてこういう神仏一体の信仰による「霊性の再覚醒」により、日本は世界史において重要な使命をはたしうる民族になれるのではないでしょうか。
参考として田中智學と鈴木大拙の一文を載せます。
・田中智學は「日本國體の研究(大正9)」で「(日本民族は)世界中のあらゆる民族を願にかけて一つの『道』の下に服従させることを仕事として立つところの世界的大優秀民族であるからどんなものでも消化的に征服しおおせる力を有して居る。只、「道」を以て世界を従へるのである。・・道は日本の道でなくて、「世界の道」である。・・・扨その日本民族が『道』を以て世界を統一するといふのは畢竟どんな風にするのであるか、・・所謂天業民族たる日本國民が・・・その「日本國體」をみずから実行して模範を宇内に示すのである。(つまり領土による征服でなく精神的指導者となることが日本の使命)」といい、
・鈴木大拙は『日本的霊性(昭和十九年)』で「鎌倉時代になって日本人は本当に霊性の生活に目覚めたといへる。平安時代の初めに伝教大師や弘法大師によりて据ゑつけられたものが大地に落付いてそれから芽を出したといへる。・・平安朝の四百年も決して無駄ではなかった、何れも鎌倉時代の為の準備であった。・・ここで美しき思想の草花が咲きだした。そして七百年後の今日にいたるまでそれが大体において吾等の品性・思想・情調を養ふものになってきた。今後恐らくはかうして養はれて来たことが基礎と成って其の上に世界的な新しきものが築かるることと信ずる。ここに今日の日本人の使命がある。」としています。