(十一月五日、室戸岬へ)
おほらかにおしよせて白波
ごろごろ浜
水もころころ山から海へ
銃後風景
おぢいさんおばあさん炭を焼いてゐる
旅はほろほろ月が出た
旅のからだをぽりぽり掻いてゐる
病みて旅人いつもニンニクたべてゐる
(室戸)
わだつみをまへにわがおべんたうまづしけれども
あらなみの石蕗の花ざかり
松はかたむいてあら波のくだけるまゝ
蔦がからまりもみづりて電信棒
われいまここに海の青さのかぎりなし
秋ふかく分け入るほどはあざみの花
墓二つ三つ大樟のかげ
落葉あたたかく噛みしめる御飯のひかり
いちにち物いはず波音
野宿さま/″\
こんやはひとり波音につつまれて
食べて寝て月がさしいる岩穴
枯草ぬくう寝るとする蠅もきてゐる
月夜あかるい舟があつてそのなかで寝る
泊るところがないどかりと暮れた
すすき原まつぱだかになつて虱をとる
かうまでよりすがる蠅をうたうとするか
水あり飲めばおいしく洗ふによろしく
波音そのかみの悲劇のあと
太平洋に面して
ぼうぼううちよせてわれをうつ
現実直前の力。
大地を踏みしめ踏みしめて歩け!
(「かうまでよりすがる蠅をうたうとするか」という歌に遍路ではなければ分らない気持ちを見ました。歩き遍路には蠅やアブが付きまとうことがあります。それも延々とついてくるのです。私もついつい遍路の身でありつつアブを払ってしまったことがあります。此の句の気持ちはいたいほどよくわかります。最後の「太平洋に面して ぼうぼううちよせてわれをうつ 現実直前の力。大地を踏みしめ踏みしめて歩け!」という句もよくわかります。太平洋の何メートルもの山のような荒波が迫ってくるとさらわれそうになり、ついつい大地を踏みしめて、という気持ちになるのでしょう。室戸の海岸の厳しさです。)
おほらかにおしよせて白波
ごろごろ浜
水もころころ山から海へ
銃後風景
おぢいさんおばあさん炭を焼いてゐる
旅はほろほろ月が出た
旅のからだをぽりぽり掻いてゐる
病みて旅人いつもニンニクたべてゐる
(室戸)
わだつみをまへにわがおべんたうまづしけれども
あらなみの石蕗の花ざかり
松はかたむいてあら波のくだけるまゝ
蔦がからまりもみづりて電信棒
われいまここに海の青さのかぎりなし
秋ふかく分け入るほどはあざみの花
墓二つ三つ大樟のかげ
落葉あたたかく噛みしめる御飯のひかり
いちにち物いはず波音
野宿さま/″\
こんやはひとり波音につつまれて
食べて寝て月がさしいる岩穴
枯草ぬくう寝るとする蠅もきてゐる
月夜あかるい舟があつてそのなかで寝る
泊るところがないどかりと暮れた
すすき原まつぱだかになつて虱をとる
かうまでよりすがる蠅をうたうとするか
水あり飲めばおいしく洗ふによろしく
波音そのかみの悲劇のあと
太平洋に面して
ぼうぼううちよせてわれをうつ
現実直前の力。
大地を踏みしめ踏みしめて歩け!
(「かうまでよりすがる蠅をうたうとするか」という歌に遍路ではなければ分らない気持ちを見ました。歩き遍路には蠅やアブが付きまとうことがあります。それも延々とついてくるのです。私もついつい遍路の身でありつつアブを払ってしまったことがあります。此の句の気持ちはいたいほどよくわかります。最後の「太平洋に面して ぼうぼううちよせてわれをうつ 現実直前の力。大地を踏みしめ踏みしめて歩け!」という句もよくわかります。太平洋の何メートルもの山のような荒波が迫ってくるとさらわれそうになり、ついつい大地を踏みしめて、という気持ちになるのでしょう。室戸の海岸の厳しさです。)