修験宗旨書・・・21
頭襟秘決第一通(山伏のつける頭襟は即五智の宝冠)
夫れ山伏とは大日遍照の智身、凡身即佛の覚体なり。故に頭襟とは即五智の宝冠なり。秘記にいわく、頭とは無明所生の頂上、襟とは無明能生の妄心なり。その形、宝形なるは五智円満の内証を顕し、黒色は最初の無明を表す。無明とは黒闇煩悩の義、十二の縮(古くは布の12のひだを集めて一か所で結んだ)は衆生所具の十二因縁を表す。縮を一所に括ることは、因縁結集の義、前八分にこれを着することは不動頂上の八葉が頭襟の中にあることを表す。
問う、何が故ぞ無明等の十二因縁を以て當道修行の表像と為るや。
答、十二因縁とは要をとって之を謂はば煩悩業苦の三道なり・・・煩悩とは過去過去無明の業体、業とは現在所造の悪業、苦とは未来所感の罪苦なり。然るにいま修験の立義は、煩悩業苦の三道を転ぜずして忽ちに三徳秘蔵の妙理・三身万徳の覚位を証す。三徳とは一に法身の徳(中道・理体)、二に般若の徳(智慧・巧用)、三に解脱の徳(坐禅三昧)。然れば則ち、十二因縁生の流転を動ぜずして、還って十二聖位の果徳を開いて、迷は則ち三道の流転、悟りは則ち果中の勝用なり。無明法性法界に遍て無二なり。自身他身一如にして平等なり。之を悟る者は常に五智円満の台に遊び、之に迷うものは鎮に三界煩悩の泥に沈む。実に是凡聖不二真妄和合の理なり。この実義を顕さんがために十二の縮を取って頭襟と号し、之を著す。
問う、長頭襟とはその所由如何?
答え、是に二種あり、一には螺髪形、二には卍形なり。初めに螺髪形とは前に之を結ぶ、長さ五尺なり(五智なり)、黒色は発心不変の色相なり。優婆塞形の山伏之を著す。即ち仏身相好の螺髪形を表す、之を佛部の山伏と号す。次に卍形とは、後にこれを結ぶ。長さ八尺(不動頂上の八葉を卍と顕す、卍とは八葉なり)。摘髪の山伏之を著す、金剛部の山伏と名く。即、わが心蓮の胎蔵を顕し、己身不とうの金剛を示す。裏書にいわく、巻頭襟とは上求菩提の位なり。度衆の新客これを用いる。頭襟とは下化衆生の位なり。先達位に至ってこれを用いうる。右修験即極の内証、當位仏果の源底なり。未修行の輩にこれを示すべからず。
頭襟秘決第一通(山伏のつける頭襟は即五智の宝冠)
夫れ山伏とは大日遍照の智身、凡身即佛の覚体なり。故に頭襟とは即五智の宝冠なり。秘記にいわく、頭とは無明所生の頂上、襟とは無明能生の妄心なり。その形、宝形なるは五智円満の内証を顕し、黒色は最初の無明を表す。無明とは黒闇煩悩の義、十二の縮(古くは布の12のひだを集めて一か所で結んだ)は衆生所具の十二因縁を表す。縮を一所に括ることは、因縁結集の義、前八分にこれを着することは不動頂上の八葉が頭襟の中にあることを表す。
問う、何が故ぞ無明等の十二因縁を以て當道修行の表像と為るや。
答、十二因縁とは要をとって之を謂はば煩悩業苦の三道なり・・・煩悩とは過去過去無明の業体、業とは現在所造の悪業、苦とは未来所感の罪苦なり。然るにいま修験の立義は、煩悩業苦の三道を転ぜずして忽ちに三徳秘蔵の妙理・三身万徳の覚位を証す。三徳とは一に法身の徳(中道・理体)、二に般若の徳(智慧・巧用)、三に解脱の徳(坐禅三昧)。然れば則ち、十二因縁生の流転を動ぜずして、還って十二聖位の果徳を開いて、迷は則ち三道の流転、悟りは則ち果中の勝用なり。無明法性法界に遍て無二なり。自身他身一如にして平等なり。之を悟る者は常に五智円満の台に遊び、之に迷うものは鎮に三界煩悩の泥に沈む。実に是凡聖不二真妄和合の理なり。この実義を顕さんがために十二の縮を取って頭襟と号し、之を著す。
問う、長頭襟とはその所由如何?
答え、是に二種あり、一には螺髪形、二には卍形なり。初めに螺髪形とは前に之を結ぶ、長さ五尺なり(五智なり)、黒色は発心不変の色相なり。優婆塞形の山伏之を著す。即ち仏身相好の螺髪形を表す、之を佛部の山伏と号す。次に卍形とは、後にこれを結ぶ。長さ八尺(不動頂上の八葉を卍と顕す、卍とは八葉なり)。摘髪の山伏之を著す、金剛部の山伏と名く。即、わが心蓮の胎蔵を顕し、己身不とうの金剛を示す。裏書にいわく、巻頭襟とは上求菩提の位なり。度衆の新客これを用いる。頭襟とは下化衆生の位なり。先達位に至ってこれを用いうる。右修験即極の内証、當位仏果の源底なり。未修行の輩にこれを示すべからず。