正法眼蔵随聞記より、
人は必ず陰徳を積むべきである。陰徳を積めば必ず冥加利益がある。
設え泥木塑像の麁惡なものでも佛像を敬うべきである。黄卷赤軸の荒れた品でもお経を大切にすべき。
破戒僧であろうと僧を仰ぎ敬うべきである。
内心に信心を以って敬禮すれば必ずを得るのである。破戒僧の傷んだ経だからといって不信無禮なれば必ず罰を蒙る。
如來の遺法であるから人天の分となっている佛像經卷僧侶である。故に歸敬すれば必ずがある、不信なれば罪を受ける。・・丹霞天然禪師という人は木佛を燒いたが是れは惡事と見えるが説法のためである。彼の師は普段は坐するにも必ず礼儀正しく、立つにも必ず礼儀があって、仏様に対するときは常に貴い賓客に向っているようであった。暫時の坐にも必ず結跏趺坐し叉手していた。常住物を守ることは眼睛の如くであった。勤修するものがあれば必ずこれを賀んだ。少善でも是を大切にした。普段の行状はことに勝れていて今世までも叢林の龜鑑とするほどである。・・覚りを得た人は善根を疎かにしてはいない。故に修行者は祖師の道に隨はんとおもえば必ず善根を輕んじてはならない。・・すべては皆佛法であると知った上は佛祖の道に遠ざかるのが悪で、佛道の縁となるのが善である。このように知るならばいかにそれが粗末に見えようとも仏法僧の三寶を尊重するのは当然である。
(一日示シテ云ク人ハ必ズ陰ヲ修スベシ陰ヲ修スレバ必ズ冥加顯アルナリ
設ヒ泥木塑像ノ麁惡ナリトモ佛像ヲバ敬フベシ黄卷赤軸ノ荒品ナリトモ經ヲバ歸敬スベシ
破戒無斷ノ僧侶ナリトモ僧體ヲバ仰信スベシ
内心ニ信心ヲ以テ敬禮スレバ必ズ顯ヲ蒙ルナリ破戒無懸ノ僧疎相ノ佛鹿品ノ經ナレバトテ不信無禮ナレバ必ズ罰ヲ蒙ルナリ然アルベキ如來ノ遺法ニテ人天ノ分トナリタル佛像經卷僧侶ナリ故ニ歸敬スレバ必ズアリ不信ナレバ罪ヲ受ルナリ
イカニ希有ニ淺猿クトモ三寶ノ境界ヲバ歸敬スベキナリ
禪僧ハ善ヲ修セズ功ヲ用ヒズト云フテ惡行ヲ好ムハ究メタルヒガ事ナリ先規イマダ惡行ヲ好ムコトヲキカズ丹霞天然禪師ハ木佛ヲ燒ク是レラコソ惡事ト見ヘタレドモ一段ノ説法ノ施設ナリ彼ノ師ノ行状ノ記ヲ見ルニ坐スルニ必ズ儀アリ立スルニ必ズ禮アリ常ニ貴キ賓客ニ向ヘルガ如シ暫時ノ坐ニモ必ズ跏趺シテ叉手ス常住物ヲ守ルコト眼睛ノ如クス勤修スルモノアレバ必ズコレヲ賀ス少善ナレドモ是ヲ重クス常途ノ行状コトニ勝レタリ彼ノ記ヲトヾメテ今ノ世マデモ叢林ノ龜鑑トスルナリ爾ノミナラズロノ有道ノ師先規悟道ノ祖ヲ見聞スルニ皆戒行ヲ守リ威儀ヲトヽノヘ設ヒ少善トイヘドモ是ヲ重クスイマダ悟道ノ師ノ善根ヲ忽スルコトヲ聽カズ故ニ學人祖道ニ隨ハント思ハヾ必ズ善根ヲ輕シメザレ信仰ヲ專ラニスベシ佛祖ノ行道ハ必ズ衆善ノ衆マル處ナリ法皆佛法ナリト通達シツル上ハ惡ハ決定惡ニシテ佛祖ノ道ニ遠ザカリ善ハ決定善ニシテ佛道ノ縁トナルト知ルベシ若シカクノ如クナラバナンゾ三寶ノ境界ヲ重クセザランヤ)
人は必ず陰徳を積むべきである。陰徳を積めば必ず冥加利益がある。
設え泥木塑像の麁惡なものでも佛像を敬うべきである。黄卷赤軸の荒れた品でもお経を大切にすべき。
破戒僧であろうと僧を仰ぎ敬うべきである。
内心に信心を以って敬禮すれば必ずを得るのである。破戒僧の傷んだ経だからといって不信無禮なれば必ず罰を蒙る。
如來の遺法であるから人天の分となっている佛像經卷僧侶である。故に歸敬すれば必ずがある、不信なれば罪を受ける。・・丹霞天然禪師という人は木佛を燒いたが是れは惡事と見えるが説法のためである。彼の師は普段は坐するにも必ず礼儀正しく、立つにも必ず礼儀があって、仏様に対するときは常に貴い賓客に向っているようであった。暫時の坐にも必ず結跏趺坐し叉手していた。常住物を守ることは眼睛の如くであった。勤修するものがあれば必ずこれを賀んだ。少善でも是を大切にした。普段の行状はことに勝れていて今世までも叢林の龜鑑とするほどである。・・覚りを得た人は善根を疎かにしてはいない。故に修行者は祖師の道に隨はんとおもえば必ず善根を輕んじてはならない。・・すべては皆佛法であると知った上は佛祖の道に遠ざかるのが悪で、佛道の縁となるのが善である。このように知るならばいかにそれが粗末に見えようとも仏法僧の三寶を尊重するのは当然である。
(一日示シテ云ク人ハ必ズ陰ヲ修スベシ陰ヲ修スレバ必ズ冥加顯アルナリ
設ヒ泥木塑像ノ麁惡ナリトモ佛像ヲバ敬フベシ黄卷赤軸ノ荒品ナリトモ經ヲバ歸敬スベシ
破戒無斷ノ僧侶ナリトモ僧體ヲバ仰信スベシ
内心ニ信心ヲ以テ敬禮スレバ必ズ顯ヲ蒙ルナリ破戒無懸ノ僧疎相ノ佛鹿品ノ經ナレバトテ不信無禮ナレバ必ズ罰ヲ蒙ルナリ然アルベキ如來ノ遺法ニテ人天ノ分トナリタル佛像經卷僧侶ナリ故ニ歸敬スレバ必ズアリ不信ナレバ罪ヲ受ルナリ
イカニ希有ニ淺猿クトモ三寶ノ境界ヲバ歸敬スベキナリ
禪僧ハ善ヲ修セズ功ヲ用ヒズト云フテ惡行ヲ好ムハ究メタルヒガ事ナリ先規イマダ惡行ヲ好ムコトヲキカズ丹霞天然禪師ハ木佛ヲ燒ク是レラコソ惡事ト見ヘタレドモ一段ノ説法ノ施設ナリ彼ノ師ノ行状ノ記ヲ見ルニ坐スルニ必ズ儀アリ立スルニ必ズ禮アリ常ニ貴キ賓客ニ向ヘルガ如シ暫時ノ坐ニモ必ズ跏趺シテ叉手ス常住物ヲ守ルコト眼睛ノ如クス勤修スルモノアレバ必ズコレヲ賀ス少善ナレドモ是ヲ重クス常途ノ行状コトニ勝レタリ彼ノ記ヲトヾメテ今ノ世マデモ叢林ノ龜鑑トスルナリ爾ノミナラズロノ有道ノ師先規悟道ノ祖ヲ見聞スルニ皆戒行ヲ守リ威儀ヲトヽノヘ設ヒ少善トイヘドモ是ヲ重クスイマダ悟道ノ師ノ善根ヲ忽スルコトヲ聽カズ故ニ學人祖道ニ隨ハント思ハヾ必ズ善根ヲ輕シメザレ信仰ヲ專ラニスベシ佛祖ノ行道ハ必ズ衆善ノ衆マル處ナリ法皆佛法ナリト通達シツル上ハ惡ハ決定惡ニシテ佛祖ノ道ニ遠ザカリ善ハ決定善ニシテ佛道ノ縁トナルト知ルベシ若シカクノ如クナラバナンゾ三寶ノ境界ヲ重クセザランヤ)