福聚講

平成20年6月に発起した福聚講のご案内を掲載します。

福聚講 今日の言葉  

2012-08-03 | 法話
私が仏像を好きになったのは、高校二年生のときでした。大好きな父が亡くなったことがきっかけではじめたお寺めぐり。お小遣いを貯めてひとり夜行列車で訪れた、京都の三十三間堂でのことでした。朝一番の静かなお堂の中に、千手観音さまが千体もずらりと並んでいる光景を目の前にして、涙がボロボロと溢れてきたのです。その昔、こんな光景を作った人がいて、守ってきた人たちがいて、拝んできたたくさんの人たちがいる。今、自分の目の前にある光景がまるで奇跡のように思えて、とにかく感動しました。私にとって、それがはじめての「仏像との出会い」となりました。仏像はもちろん仏教についての知識も全く持っていなかった高校生の私が、そんなにも感動したことは当時の自分にとっても大きな驚きでした。とにかく、勉強はあとまわし!いっぱい感じて、手をあわせる。それだけで十分!やさしい仏さまは、勉強をしていない人のことを、追い返したりしないですものね。



仏像というと、奈良や京都のイメージがありますが、日本にはどの地域にもステキな仏像がたくさんいらっしゃいます。北海道にも、沖縄にも・・。そんな仏さまにお会いしたくて私は仏像めぐりの旅をしているのですが、旅を続けていると、いろんな出会いがあります。素晴らしい仏像との出会い、そして仏像を守っている人たちとの出会い。それは、まるで宝物のような大切な体験です。

  石川県羽咋市の豊財院というお寺に行ったときのことです。山の中にある小さなお寺で、きれいな三体の観音さまで知られてます。「暑い中、よくお参りくださいましたね」と、奥さまが収蔵庫に案内してくださいました。収蔵庫というと、まるで博物館のように立って仏像を眺めるような環境ですが、その奥さまは観音さまの前で膝をつき、静かに額を床につけながら「観音さま、いつもありがとうございます。どうか今日ここにお参りにきてくださった方の健康と安全をお守りください」と深々とお祈りしてくださったのです。その姿をみていた私の目からは、大粒の涙がこぼれていました。この奥さまにお会いできただけで、ここに来てよかった。まるで奥さまが観音さまだ。
そう思えたのです。顔を上げると、三体の観音さまはにっこりと微笑んで、とても誇らしげな表情にみえました。旅をする喜びは、仏さまとお会いすることともうひとつ、仏さまをお守りしている方とお会いできることにあるんだな、と強く感じました。

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