観音經功徳鈔 天台沙門 慧心(源信)・・19/27
三、 三十三身の義の事
別の丗三身とは十界に三諦を具れば丗、観音の三諦を加て丗三身と云に、所詮種々無量の身を現じて衆生を利益し玉へども十界の身を現じ玉ふ外には之無き故に丗三身と云も外には之無し。而に衆生自然と観音の利益に預かる事たとへば月も下り下らず、水も上り上らず、而も月影の万水に浮かぶ如くなり。是則ち天月は此の水波の流れに影の浮んと云事は無けれども光り明らかなれば任運に影を万水に浮ぶ。草葉の露一までも影の宿る如く、観音の慈悲も普き故に一切衆生皆任運と利益に預となり。衆生も必ず利益に預かるべし。望まずとも自然と利益に預かる也。水の方より影を浮んとは思はざれども水清ければ任運と月影うかぶがごとくなり。