福聚講

平成20年6月に発起した福聚講のご案内を掲載します。

地蔵菩薩三国霊験記 4/14巻の7/13

2024-07-20 | 先祖供養

地蔵菩薩三国霊験記 4/14巻の7/13

七、袈裟を勧め女人の罪を救ひ給ふ事。

出羽の國堺と云所に無道の荒俗一人あり。身は夷狄の如く心は木石に似たり。されども男女の情深くして一年、都に上るとき、或女房とかたらひ具してぞ下向しける。然るに此男近比(ちかごろ)時に遇て當國の官領に成りて、万事心の侭に行ひ、楽しむことかぎりなし。ら女房も心身の好樂あるべけれども、人の質(かたひ)里の風俗此の事こそよと心を寄方なく、甲斐なきむくつけ男と朝を待ち、夕べを送りてぞ候ひけるが、常に都のことのみ思出し、兎角しける様遊び戯れし品人目を忍ぶ折角(をりふし)色々の往時ども指を伏せてかぞへけるが由無き(よしなき)事をそこはかとなくつみつくりに不通に忘れむと思切り、さても都の栖は清和院(京都市上京区一観音町にある真言宗智山派の寺院。山号は河崎山。本尊は地蔵菩薩)の近くにてあれば常に地蔵へ参りける。侭自ら地蔵信者とぞ人申しける。されどもつきなき事を祈り申せし故やらん、かかる東の方へ図らざるに流し来る事よ。誠に思ば世になしもののかかる住居と覚て、動(ややもすれば)都の方を忍ばれぬ。我齢すでに二十に餘れり。盛りも末に成り行ぬることをしまれて後の世の事を思遣にも罪をそろしく、南無地蔵尊助けさせ給へとぞ観念しつつあはれ佛寺へも参り貴き僧にも近よりて、未来の結縁をもなさまくほっすれども、女の身なれば打ち紛れて明けぬ暮れぬと過行きけるほどに、早三年にぞなりぬ。角て暮れなば埋木の花咲く春の過ぬるをもしらず、苔の下にて朽果事よとあさましく思ひつつ゛けて少(しばらく)まどろみけるに、若き僧の来て立ち向ひ給ひて、何とて若君は打解けて寝玉ふぞ、御身の為に無常の刹鬼責来りぬ。あれを見よと指さし給ふ。女をそろしさに周章さわぎて僧の袂に取り付ければ、さらば防ぎてみんとて持ちたまへる杖を取直立ち向ひ玉ふ処に南天に黒雲起こり大風吹き雷電震動しけり。其の中に猛火しきりにもへ其の中にさまざまの異形の悪鬼雲霞の如くに来れり。此僧袈裟を脱ぎ家の軒端に引き張り給ひぬ。悪鬼漸く近付きければ錫杖を以て拂玉へば、諸の鬼退散しぬ。自今以後猶責来らん

五百條の袈裟を用意し五百の僧徒にほどこし奉るべし。此の袈裟四方を守護として鬼神百計すともやぶるべからず。且亦此の功力に依りて汝が罪業軽(かろ)くなるべし。我即清和院の地蔵なりとの玉ふかと思へば夢覚めぬ。肝消へ身の毛もよだちてそれよりも急ぎ五百の袈裟を作り各五百の僧に施しけるが、後三十五歳にして虚しくなりにける。彼の女主人を哀れと思て十六夜の月のくまなくさえけるをみて、並み居る女房と俱に過つる事ども物語し袖をしぼり涙にくれしつつさても此の女房の罪のいかにふかくこそあるらめと申しける侭主人の女房假寝しける夢にいつ゛くともなく廣き野に歩き出て独りさまよひゆくほどに或傍らを見れば女の身はだかにして髪打ち乱れ膝をいだき打ち伏して居たりし。いかにやと言(げん)をかくれば喜(うれしさに)仰ぎ主人の女房を見て打ち笑ひ、我姿を見させ給へといへば誠にうれせにし京の女房にてぞありき。さて御身の分野(ありさま)はいかがと問へば、されば我現在のとき夫の寶を攻取り身の荘とせしほどに其の咎にあたりかかる報を得たり。衣服は羅刹に剥とられ此の街にすてをかれて今中有に迷て侍る。善根の力薄ければ浄土に往くべき便りなく、日夜鬼王に呵せられ術無き事申してもつくしがたし。あはれ功徳の力を加給はば、などか佛道赴くことなからむと涕にくれて申す。凢そ女人の業障高きも下きも其の隔てあるべからず此の報を免るべく思召さば、袈裟を作りて僧に施し玉ふべし、と申しけると思ひぬれば夢さめぬ。其の後彼の京の女房蘇生してけるが上のありさま互に物語して主人の女房も袈裟一千條を仕立て千僧に施し地蔵尊を造立して常に懺悔し、止悪修善こそ偏に勝れてぞ見へぬ。又夫は奉公に隙なく罪業を事とばかりせしが女房切に諍ひければ宝号を唱へ夫婦諸ともに勤行して万事心の侭にして延命を得て子(こ)の後の栄華を期しけるとなん。

引証。

本願経に云く、若し女人有りて女人の身を厭ひ心を尽くして地蔵菩薩の畫像及び土石膠漆銅像等の像を供養せば、如是に日々退せず華香飲食衣服繒綵幢幡錢寶物等を以て供養せば是の善女人此の一報の女身を盡して百千万劫更に女人世界ある世に生まれず。何ぞ況や復受けんや等云々(地藏菩薩本願經・如來讃歎品第六「若有女人厭女人身。盡心供養地藏菩薩畫像。及土石膠漆銅鐵等像。如是日日不退。常以華香飮食衣服繒綵幢旛錢寶物等供養。是善女人盡此一報女身。百千萬劫更不生有女人世界。何況復受」)。

 

 

 

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