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福聚講

平成20年6月に発起した福聚講のご案内を掲載します。

藥師琉璃光如來本願功徳經

2020-12-17 | 諸経

藥師琉璃光如來本願功徳經

大唐三藏法師玄奘奉詔譯 

薬師如来を至心に供養すれば十二の横死を免れる。その中には疫病死も含まれる、として薬師如来大呪「のうぼう ばぎゃばてい ばいせいじゃ くろ ばいせいじゃや はらば あらんじゃや たたぎゃたや あらかてい さんみゃくさんぼだや たにゃた おん ばいせいぜい ばいせいぜい ばいせいじゃ さんぼりぎゃてい そわか」を説く)

 

 

如是我聞。一時薄伽梵、諸國に遊化し廣嚴城(毘舍離のこと)に至り、樂音樹下に住す。大苾芻衆八千人と俱なりき。菩薩摩訶薩三萬六千、及び國王大臣婆羅門居士、天龍藥叉人等、無量大衆、恭敬圍繞し、爲に説法す。

爾時、曼殊室利法王子は佛威神を承けて、座より起ち偏袒一肩右膝著地し、薄伽梵に向かい曲躬合掌して白して言さく「世尊。惟だ願くは如是相類・諸佛名號及び本大願殊勝功徳を演説して、諸の聞者をして業障銷除せしめたまへ。像法轉時の諸有情を利樂せんと欲するが為の故に」。

爾時、世尊曼殊室利童子を讃じて言く「善哉善哉、曼殊室利。汝大悲を以て我に諸佛名號本願功徳を説かんことを勸請す。業障所纒の有情を抜き、像法轉時の諸有情を利益安樂せしめんが為の故に、汝今諦聽し極善思惟せよ。當に汝が爲に説かむ」。

曼殊室利言「唯然り。願はくは説きたまへ。我等聞んと楽ふ」。

佛曼殊室利に告げたまふ「東方此を去ること十殑伽沙等佛土を過ぎて世界有り。名て淨琉璃。佛を藥師琉璃光如來應正等覺明行圓滿善逝世間解無上丈夫調御士天人師佛薄伽梵と號したてまつる。曼殊室利よ、彼の佛世尊、藥師琉璃光如來、本、菩薩道を行じる時、十二大願を發し、諸有情をして所求皆得せしめたまふ。

第一大願(光明普照)願くは我來世に阿耨多羅三藐三菩提を得ん時、自身の光明熾然として無量無數無邊世界を照曜し、三十二大丈夫相八十隨好を以て其身を莊嚴し、一切有情をして我が如く異なからしめん。

第二大願(随意成弁)願くは我來世に菩提を得ん時、身は琉璃の如く内外明徹淨無瑕穢光明廣大功徳巍巍として身は善く安住し、焔網莊嚴すること日月に過ぎ、幽冥衆生は悉く開曉を蒙り所趣作諸事業隨意ならんことを。

第三大願(施無尽物)願くは我來世に菩提を得ん時、無量無邊智慧方便を以て諸有情をして皆無盡を得せしめ、受用する所の物、衆生をして乏少なる所あることなからしめん。

第四大願(安心大乗)願くは我來世に菩提を得ん時、若し諸有情邪道を行ずる者は、悉く菩提道中に安住せしめん。若し聲聞獨覺乘を行ずる者は皆な大乘を以て之を安立せしめん。

第五大願(具戒清浄)願くは我來世に菩提を得ん時、若し無量無邊の有情有って、我法中において梵行を修行せんに、一切皆令不缺戒を得て三聚戒を具せしめん。設へ毀犯あるとも我名を聞き已らば還って清淨を得て惡趣に墮さしめざらん。

第六大願(諸根具足)願くは我來世に菩提を得ん時、若し諸有情、其身下劣にして諸根不具、醜陋頑愚盲聾瘖瘂攣躄背僂白癩癲狂種種病苦なるも我名を聞き已らば一切皆得て端正黠慧諸根完具無諸疾苦ならん。

第七大願(除病安楽)願くは我來世に菩提を得ん時、若し諸有情、衆病逼切無救無歸無醫無藥無親無家貧窮多苦ならんに、我の名號を一たび其耳に經ば、衆病悉く除くことを得て身心安樂、家屬資具悉く皆な豐足し、乃至無上菩提を證得せしむ。

第八大願(転女得仏 ・転女成男・転女成仏)願くは我來世に菩提を得ん時、若し女人有りて女の百惡之逼惱する所となりて、極めて厭離を生じ願って女身を捨てんに、我名を聞き已れば一切皆、女を轉じ得て男と成り丈夫相を具せむ。乃至無上菩提を證得せむ。

第九大願(安心正見)願くは我來世に菩提を得ん時、諸有情をして魔羂網を出て一切外道の纒縛を解脱せしめん。若し種種の惡見稠林に墮さば皆當に引攝して正見に置き、漸く諸菩薩行を修習して速かに無上正等菩提を證せしめん。

第十大願(苦悩解脱)願くは我來世に菩提を得ん時、若し諸有情、王法所録となり縲縛鞭撻繋閉牢獄或は當に刑戮せらるべく、及び餘の無量災難凌辱悲愁煎迫し身心受苦せんに、若し我名を聞かば、我福徳威神力を以ての故に、皆一切憂苦を解脱することを得ん。

第十一大願(飲食安楽)願はくは我來世に菩提を得ん時、若し諸有情、飢渇の惱す所にして食を求めんが為の故に、諸惡業を造らむに、我名を聞くを得て專念受持せば、我當に先ず上妙飮食を以て其身を飽足せしめ、後に法味を以て畢竟安樂し之を建立せん。

第十二大願(美衣満足)願はくは我來世に菩提を得ん時、若し諸有情、貧にして衣服無く、蚊虻寒熱晝夜逼惱せんに、若し我名を聞きて專念受持せば、其の所好の如く即ち種種上妙衣服を得、亦た一切寶莊嚴具華鬘塗香鼓樂衆伎を得ん。心に隨って所翫皆な滿足せしめん。

 

曼殊室利よ、是れを爲彼世尊藥師琉璃光如來應正等覺が菩薩道を行じたまひし時、發する所の十二微妙上願となす。

 

復た次に曼殊室利よ、彼の世尊藥師琉璃光如來、菩薩道を行じたまひし時、発する所の大願及び彼の佛土の功徳莊嚴は我若し一劫若しは一劫餘も説くとも盡すこと能わず。然も彼の佛土一向清淨にして女人あることなし。亦た惡趣及び苦音聲なし。琉璃を地と為し金繩界道あり。城闕宮閣軒窓羅網皆七寳で成る。亦た西方極樂世界の如く功徳莊嚴等無差別なり。其國の中に二菩薩摩訶薩あり。一名日光遍照。二名月光遍照。是彼の無量無數菩薩衆之上首なり。悉く能く彼世尊藥師琉璃光如來正法寶藏を持す。是の故に曼殊室利よ、諸の有信心の善男子善女人等は應當に彼の佛世界に生ずることを願ふべし」。

爾時、世尊復た曼殊師利童子に告げて言く「曼殊室利よ、諸衆生あり、善惡をしらず、唯だ貪悋を懷き、布施及施の果報を知らず、愚癡無智にして信根を闕き、多く財寳を聚めて勤て守護を加へ、乞者の来るを見ては其心喜ばず、設へ已むことを得ずして而も施を行ずる時は、身肉を割する如く深く痛惜を生じ、復た無量の慳貪有情ありて、資財を積集し、其の自身において尚ほ受用せず、何況んや能く父母妻子作使及來乞者に與(あたへ)んや。彼の諸有情は、此の命終りて餓鬼界或は傍生趣に生ぜん。昔人間たるによりて曾って暫くも藥師琉璃光如來の名を聞くことを得たるが故に、惡趣にありて暫く彼の如來の名を憶念するを得て、即ち念ずる時に彼の處より沒するを得て還りて人中に生ぜん。宿命念を得て惡趣の苦を畏れ、欲樂をねがはず、好んで惠施を行ひ、施者を讃歎し、一切の所有に悉く貪惜無く、漸次に尚ほ能く頭目手足血肉身分を以て來求者に施さむ。況んや餘の財物をや。

復た次に曼殊室利よ、若し諸有情、如來において諸學處を受くると雖も、而も尸羅を破し、尸羅を破らずと雖も而も軌則を破することあらん。尸羅・軌則を破ることを得ずといえども然も正見を毀ることあらん。正見を毀らずと雖も而も多聞を棄て、佛所説の契經において深義解了する能はざることあらむ。多聞と雖も而も増上慢たること有らむ。増上慢は心を覆蔽するが故に、自らを是とし、他を非として正法を嫌謗し魔の伴黨とならむ。如是の愚人は自ら邪見を行じ、復た無量倶胝有情をして大險坑に墮せしむ。此の諸有情、應に地獄傍生鬼趣において流轉無窮なり。若し此の藥師琉璃光如來の名號を聞くを得ば、便ち惡行を捨て、諸善法を修し、惡趣に堕せず。設へ諸惡行を捨て善法を修行する能はずして、惡趣に堕する者、彼の如來の本願威力を以て、其の現前に暫くも名號を聞かしめば、彼より命終し人趣に還生し、正見精進を得、善く意樂を調へ、便ち能く捨家し非家如來法中に趣き、學處を受持し、毀犯あるなく、正見多聞にして甚の深義を解せん。増上慢を離れ正法を謗らず、魔の伴と為ることなく、漸次に諸菩薩行を修行し速かに圓滿することを得ん。

復次に曼殊室利よ、若し諸有情、慳貪嫉妬自讃毀他して當に三惡趣中に墮し、無量千歳に諸劇苦を受け、劇苦を受け已りて彼より命終して人間に來生し、牛馬駝驢と作り、恒に鞭撻され、飢渇逼惱し、又常に重きを負され路に隨って行き、或は人と為ることを得ても生れて下賤に居り、人のとなりて他の驅役を受け、恒に不自在なるも、若し昔人中に曾って世尊藥師琉璃光如來の名號を聞かば、此の善因によりて今復た憶念して至心に歸依せば佛神力を以て衆苦解脱し諸根聰利智慧多聞、恒に勝法を求め、常に善友に遇ひ、永く魔羂を斷じ、無明を破し、煩惱の河を竭し、一切生老病死憂愁苦惱を解脱せん。

 

復次に曼殊室利よ、若し諸有情、好みて乖離を喜び、更相ひに闘訟して自他を惱亂し、身語意を以て種種の惡業を造作増長し展轉して常に不饒益事を為し、互相に謀害し、山林樹塚等の神を告召し、諸衆生を殺して其血肉を取り藥叉羅刹娑等を祭祀し、怨人の名を書き其形像を作り惡咒術を以て之を咒咀し、厭媚蠱道屍鬼を咒起し、彼の命を斷じ及び其身を壞せむ。是の諸有情は若し此の藥師琉璃光如來の名號を聞くを得ば、彼の諸惡事悉く害する能はず。一切展轉して皆な慈心を起こし利益安樂して損惱意及び嫌恨心なし。各各歡悦して自の所受において喜足を生じ、相侵凌せず互に饒益を為す。

 

復次に曼殊室利よ、若し四衆の苾芻・苾芻尼(比丘・満二〇歳以上の出家男子、比丘戒を受持)、比丘尼・満二〇歳以上の出家の女子、比丘尼戒を受持)・鄔波索迦・鄔波斯迦(優婆塞・優婆夷)及び餘の淨信の善男子善女人等有て、能く八分齋戒を受持し、一年を経、或は復た三月學處を受持することあらむに、此の善根を以て西方極樂世界無量壽佛所に生じ、正法を聽聞せんと願ひて而も未定の者、若し世尊、藥師琉璃光如來名號を聞かば、臨命終時に八菩薩あり、その名を文殊師利菩薩・観世音菩薩・得大勢菩薩・無尽意菩薩・寶壇華菩薩・薬王菩薩・薬上菩薩・弥勒菩薩といふ。この八大菩薩、空に乘じて來りて其の道路を示さむ。即ち彼の界の種種雜色衆寶華中に自然に化生せん。或は此に依りて天上に生ずること有む。天中に生ずると雖も而も本の善根は亦た未だ窮盡せず。復た更に諸の餘の惡趣に生ぜず。天上の壽盡きて還りて人間に生じ、或は輪王となりて四洲を統攝す。威徳自在にして無量百千有情を十善道に安立せむ。或は刹帝利婆羅門居士大家に生じて、財寳多饒、倉庫盈溢、形相端嚴、眷屬具足、聰明智慧、勇健威猛なること大力士の如くならむ。若し是の女人、世尊藥師如來名號を聞くを得て至心に受持せば、後に復た更に女身を受けざらん。

また次に曼殊室利、彼の薬師瑠璃光如来、菩提を得たまひしとき、本願力によりて諸有情を観ず。衆病苦の痩戀・乾消・黄熱等の病に遭ひ、あるいは厭魅蠱毒に中てられ、或はまた短命に、ある時は横死せん。これらの病苦をして消除し、所求の願を満ぜしめんと欲したまふ。時に彼の世尊、三摩地に入る。名けて除滅衆生一切苦悩といふ。すでに定に入りたまひ已りて、肉髻の中に於いて大光明を出したまひ、光中に大陀羅尼を演説して曰く、

のうぼう(南無) ばぎゃばてい(世尊) ばいせいじゃ(薬) くろ(師) ばいせいじゃや はらば(瑠璃光) あらんじゃや(王) たたぎゃたや(如来) あらかてい(應供) さんみゃくさんぼだや(正等覚) たにゃた(所謂) おん(帰命) ばいせいぜい(薬) ばいせいぜい(薬) ばいせいじゃ(薬) さんぼりぎゃてい(等持) そわか

その時、光中にこの呪を説き已るに、大地振動し大光明を放ちたまふ。一切衆生の病苦皆除きて安穏の楽を受く。曼殊室利よ、もし男子・女人の病苦あるを見ば、まさに一心に彼の病人の為に常に清浄に澡漱し、或は食、或は薬、或は無蟲水にもあれ、呪すること一百八遍して彼に與へて服食せしむべし。所有の病苦ことごとく皆消滅せん。もし所求あらば心を致して念誦せば皆この如く無病延年を得て、命終の後、彼の世界に生じて、不退転を得,乃ち菩提に至らん。この故に曼殊室利よ、もし男子・女人ありて彼の薬師瑠璃光如来において至心に慇重し、恭敬し供養せん者、常にこの呪を持して廃忘せしむるなかれ。また次に、曼殊室利よ、浄信の男子・女人ありて薬師瑠璃光如来応正当覚、所有の名号を聞くを得、聞き終わりて誦持し、晨に歯木を噛み、澡漱清浄にして諸の香華・焼香・塗香を以て諸伎楽を作し、形像を供養し、この経典において若しは自ら書し、若しは人をして書せしめ、一心に受持してその義を聴聞し、彼の法師においてまさに供養を修し一切の所有の資身の具、ことごとく施與して乏少なることなからしむべし。此の如くなるときは便ち諸仏の護念を蒙り所求の願満じて乃ち菩提に至らむ。

爾時、曼殊室利童子、白佛言「世尊、我當に誓ひて、像法轉時において、種種方便を以て諸の淨信の善男子善女人等をして世尊藥師琉璃光如來の名號を聞くことを得、乃至睡中に亦た佛名を以て其の耳に覺悟せしむべし。世尊よ、若し此經において受持讀誦、或は復た他の為に演説開示、若しは自書、若しは人に教えて書かしめ、恭敬尊重し種種花香塗香末香燒香花鬘瓔珞幡蓋伎樂を以て而も供養を為し、五色綵を以て作嚢し之を盛り、淨處を掃灑し、高座を敷設し、而も用ひて安處せよ。爾時、四大天王と其眷屬及び餘の無量の百千天衆は皆な其所に詣で供養守護せむ。世尊よ、若し此の經寶流行之處、能く受持する有らば、彼の世尊藥師琉璃光如來本願功徳及び名號を聞くを以て、當に知るべし、是の處に復た横死無し。亦復た諸惡鬼神の為に其精氣を奪はれじ。設へ已に奪はれたる者も還りて故の如きを得て身心安樂ならむ。

佛、曼殊室利に告げたまはく「如是如是。汝の所説のごとし。曼殊室利よ、若し淨信の善男子善女人等ありて彼の世尊藥師琉璃光如來を供養せんと欲せば、應に先ず彼の佛の形像を造立し、清淨座を敷き、而して之を安處せよ。種種花を散じ、種種香を燒き、種種幢幡を以て其處を莊嚴せよ。

七日七夜、八分齋戒を受持し、清淨食を食し、澡浴香潔、新淨衣を著し、應に無垢濁心無怒害心を生じ、一切有情において利益安樂慈悲喜捨平等之心を起こし、鼓樂歌讃して佛像を右繞せよ。復た應に彼の如來本願功徳を念じて此經を讀誦し其義を思惟し演説開示せよ。樂求する所に随い一切皆遂げむ。長壽を求めば長壽を得、富饒を求めば富饒を得、官位を求めば官位を得、男女を求めば男女を得る。若し復た人有りて忽ち惡夢を得、諸惡相を見、或は怪鳥來集し、或は住處において百怪出現せんに、此人若し衆妙資具を以て彼の世尊藥師琉璃光如來を恭敬供養せば、惡夢惡相諸不吉祥皆悉く隱沒し爲患を為すこと能能はず。或は水火刀毒懸嶮惡象師子虎狼熊羆毒蛇惡蠍蜈蚣蚰蜓蚊虻等の怖あらむに、若し能く至心に彼の佛を憶念し恭敬供養せば一切の怖畏は皆な解脱を得ん。若し他國侵擾し盜賊反亂せんに、彼の如來を憶念恭敬せば亦た皆な解脱せん。

復次に曼殊室利よ、若し淨信の善男子善女人等ありて、乃至盡形まで餘天に事へず、惟だ當に一心に佛法僧に歸し禁戒を受持、若し五戒十戒菩薩四百戒苾芻二百五十戒苾芻尼五百戒、所受中において或は毀犯有りて惡趣に墮せんことを怖れんも、若し能く彼の佛名號を專念して恭敬供養せば、必定して三惡趣生を受けず。

或は女人ありて當に産時に臨み極苦を受けんに、若し能く至心に彼の如來を稱名禮讃恭敬供養せば、衆苦皆除かれ、所生之子の身分具足は形色端正にして見る者歡喜し利根聰明安隱少病にしても其精氣を奪ふあることなし。

爾時世尊、阿難に告げて言はく「我れ彼の佛世尊、藥師琉璃光如來所有の功徳を稱揚するが如きは、此れ是の諸佛甚深の行處にして解了すべきことかたし。汝信となすや不や」。阿難白言「大徳世尊よ、我如來所説契經において疑惑を生ずること無し。所以者何。一切如來の身語意業は清淨ならざる無きがゆえに。世尊よ、此の日月輪は墮落せしむべく、妙高山王は傾動せしむべきも、諸佛所言は異あることなき也。世尊よ、諸衆生ありて信根不具にして諸佛甚深の行處を聞説し是の思惟を作さく「云何んが但だ藥師琉璃光如來一佛名號を念じて便ち爾所(そこばく)の功徳勝利を獲ん」。此の不信によって反って誹謗を生じ、彼は長夜において大利樂を失し諸惡趣に墮し流轉すること無窮なり。佛告阿難「是の諸有情、若し世尊藥師琉璃光如來の名號を聞き、至心に受持して疑惑を生ぜずして惡趣に堕すといはば是の處(ことわり)あることなし。阿難よ、此れは是れ諸佛甚深所行なり。信解すべきこと難し。汝今能く受く。當に知れ皆是れ如來の威力なり。阿難、一切聲聞獨覺及未登地の諸菩薩等は皆な悉く如實に信解すること能わず。惟だ一生所繋の菩薩を除く。阿難、人身は得難し。三寶中に信敬尊重することも亦た得べきこと難し。世尊、藥師琉璃光如來の名號を聞くを得ることも復た是を難しとなす。阿難、彼の藥師琉璃光如來の無量の菩薩行、無量の善巧方便、無量の廣大願、我れ若しは一劫、若しは一劫餘、而も廣説せば、劫は速かに盡くべくも、彼の佛の行願善巧方便は盡あることなき也。

爾時衆中に一菩薩摩訶薩あり、名て曰く救脱と。即ち座より起ち偏袒右肩右膝著地曲躬合掌して白佛言「大徳世尊よ、像法轉ずる時に諸衆生ありて、種種の患の困厄する所と為らん。長病羸痩し飮食する能わず、喉脣乾燥して諸方を見るに暗く、死相現前し、父母親屬朋友知識啼泣圍繞せん。然も彼自身は臥して本處にありて琰魔使の其の神識を引きて琰魔法王之前に至るを見ん。然も諸有情には倶生神ありて、其の所作若しは罪、若しは福に随ひて、皆之を具しく書し、盡く持して琰魔法王に授與す。爾時、彼の王は其人を推問し、所作を算計し其の罪福に隨って而之を處斷す。時に彼の病人の親屬知識、若しは能く彼の爲に世尊藥師琉璃光如來に歸依し、諸衆僧を請じて此の經を轉讀せしめ、七層の燈を然し、五色の續命神幡を懸けば、或は是處に彼の識は還を得ることあらん。夢中に在るが如く明了に自ら見ん。或は七日、或は二十一日、或は三十五日、或は四十九日を経て、彼の識還る時、夢より覺るが如く皆自ら善不善業所得の果報を憶知せん。自ら業果報を證見するに由るが故に、乃至命難にも亦、諸惡之業を作らじ。是故に淨信の善男子善女人等、皆應に藥師琉璃光如來の名號を受持し、力の所能に随ひて恭敬供養せよ。

爾時阿難、救脱菩薩に問ひて曰さく「善男子、應に云何んが彼の世尊藥師琉璃光如來に恭敬供養せん。續命幡燈をば復た云何んが造らん」。救脱菩薩言「大徳よ、若し病人ありて病苦を脱せんと欲せば、當に其人の為に、七日七夜八分齋戒を受持し、應に飮食及び餘の資具を以て、力の所辦に随ひて苾芻僧を供養し、晝夜六時に彼の世尊藥師琉璃光如來を禮拜供養し、此の經四十九遍讀誦し、四十九燈を然し、彼の如來の形像七躯を造り、一一の像前に各の七燈を置き、一一の燈量大なること車輪の如し。乃至四十九日光明を絶やさず。五色綵幡の長さ四十九搩手なるを造り、應に雜類の衆生を放つこと四十九に至るべし。危厄之難を過度し、諸横惡鬼の持する所とならざることを得べし。

復次に阿難よ、若し刹帝利灌頂王等、災難起らん時、所謂る、人衆疾疫難・他國侵逼難・自界叛逆難・星宿變怪難・日月薄蝕難・非時風雨難・過時不雨難に、彼の刹帝利灌頂王等、爾時、應に一切有情において慈悲心を起こし諸繋閉を赦し、前の所説の供養之法に依り、彼の世尊藥師琉璃光如來を供養し奉るべし。此の善根及び彼の如來の本願力に依るが故に、其國界をして即ち安隱なることを得、風雨順時、穀稼成熟、一切有情無病にて歡樂し、其國中において、暴虐藥叉等の神の有情を悩ます者あることなく、一切惡相皆即ち隱沒せん。而も刹帝利灌頂王等、壽命色力無病自在にて皆な増益を得ん。阿難よ、若し、帝后妃主儲君王子大臣輔相中宮釆女百官黎庶、病のために苦められ及び餘の厄難あらんに、亦た應に五色神旛を造立し、燈を然やし、明を續ぎ、諸生命を放ち、雜色華を散じ、衆名香を燒けば、病除愈を得、衆難解脱せん。

 

爾時阿難、救脱菩薩に問うて言はく「善男子よ、云何んが已に盡くる命にして而も増益すべきや」。救脱菩薩言「大徳よ、汝豈に、如來は九横死有りと説けるを聞ず耶。是故に續命の幡燈を造り、諸福徳を修せよと勸めしむ。福を修するを以ての故に其壽命を盡しても苦患を経ず」。阿難問言「九横とは云何」。救脱菩薩言「もし諸有情、病を得ること輕しと雖も、然も醫藥及看病者無く、設へ復た醫に遇ふとも授くるに非藥を以てし、實に死す應からずして而も便ち横死し、又世間の邪魔外道妖之師の妄りに禍福を説くを信じ、便ち恐動を生じ、心自ら正しからざるして卜問して禍を覓(もと)め、種種の衆生を殺し、神明に解奏し、諸魍魎を呼びて福祐を請乞し、延年を欲冀するも終に得る能はず。愚癡迷惑にして邪倒見を信じ、遂に横死して地獄に入り出期あることなけん。是を名て初横となす。二は、横に王法の誅戮する所となる。三は、畋獵嬉戲(でんりょうきげ)し、耽婬嗜酒放逸無度、横にの為に其精氣を奪はる。四は、横に火焚となる。五は、横に水溺となる。六は、横に種種惡獸の所噉となる。七は横に山崖に堕す。八は、横に毒藥厭祷咒咀起屍鬼等の為に中害する所となる。九は、飢渇所困・不得飮食にして便ち横死す。是を如來略説して横死となす。此の九種ありて其の餘に復た無量の諸横難あり、

具に説くべからず。

復次に阿難よ、彼の琰魔王は世間名籍之記を主領せり。若し諸有情、不孝五逆にして三寶を破辱し、君臣法を壞し信戒を毀さんに、琰魔法王は罪の輕重に隨ひて考て之を罰す。是故に我今、諸有情に勸めて燈を然し、幡を造り、生を放ち、福を修して、苦厄を度して衆難に遭はざらしむ。

爾時、衆中に十二藥叉大將あり、倶に會坐に座す。所謂、

宮毘羅(くびら)大將 ・伐折羅(ばさら)大將・迷企羅(めきら)大將・ 安底羅(あんてら)大將・頞儞羅(まにら)大將・ 珊底羅(さんてら)大將・因達羅(いんだら)大將・ 波夷羅(はいら)大将・摩虎羅(まこら)大將・ 眞達羅(しんだら)大將・招杜羅(しょうとら)大將 ・毘羯羅(びから)大將なり。

此の十二藥叉大將は一一に各の七千藥あり。叉以って眷屬となす。同時に聲を挙げて白佛言「世尊。我等今佛威力を蒙り、世尊藥師琉璃光如來の名號を聞くを得たり。復た更に惡趣之怖あらず。我等相率いて皆同一心に乃至盡形まで佛法僧に歸して誓って當に一切有情を荷負して爲に作義・利饒し安樂を益すべし。隨って何等の村城國邑空閑林中におけるも、若し此の經を流布し或は復た藥師琉璃光如來の名號を受持し恭敬供養せん者は、我等眷屬是人を衞護し、皆一切苦難から解脱せしめ、諸有の願求は悉く滿足せしめん。或は疾厄ありて度脱を求めん者は、亦た應に此經を讀誦し五色縷を以て我名字を結び如願を得已りて然る後に解結すべし。

爾時世尊、諸藥叉大將を讃じて言く「善哉善哉、大藥叉將。汝等、世尊藥師琉璃光如來の恩徳を報ぜんと欲せば、常に應に如是に一切有情を利益安樂すべし」。

爾時阿難白佛言「世尊。當に此の法門を何と名け、我等云何んが奉持すべきや」。佛告阿難「此法門は『説藥師琉璃光如來本願功徳』と名け、亦た『説十二神將饒益有情結願神咒』と名け、亦た『拔除一切業障』と名く。應に如是に持すべし。時に薄伽梵、是の語を説き已りて、諸菩薩摩訶薩及大聲聞・國王大臣婆羅門居士・天龍藥叉揵達縛阿素洛掲路荼緊捺洛莫呼洛伽人等・一切大衆は佛所説を聞きて、皆大歡喜し信受奉行せり。

藥師琉璃光如來本願功徳經」

 

 

 

 

 

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