昨日国立博物館の「霊雲寺の名宝展」を拝してきました。これは偶然ホームページで見つけて急遽駆け付けたものです。
霊雲寺は湯島にある今は真言宗霊雲寺派本山を名乗る寺ですが、17世紀に高僧浄厳律師が綱吉の寄進により開創して以来真言律宗の寺でした。以前、国家鎮護を祈願する大元帥明王法を修していたと聞いて訪れたことがありますが今でも広大な境内と堂々たる惣門・大本堂を構えています。
浄厳律師は寛永16年(1639)河内国にお生まれになり、10歳で高野山で出家・修行されています。学徳兼備の高僧になられ戒律復興・悉曇研究に大きな成果を残されました。国学者契沖も弟子です。当方は東寺で慈雲尊者の悉曇を伝授されたとき、浄厳律師の梵字にも大変魅せられました。そのご縁で今回展覧会に行ってきたというわけです。
案の定、会場には、心が洗われるようななんともいえないすっきりとした字体の律師の「阿」字や胎蔵大日如来のご真言「あびらうんけん」の梵字が展示されていました。おもわず拝みました。また悉曇研究の金字塔「悉曇三密鈔」現物も展示されていました。細密な字で書かれていました。この書は七巻にわたり、梵字本源門・悉曇題目品・正字形音門・合字転声門・重字混声門・連声合声門・音韻相通門・字相字義門の八項目で多くの経や研究をまとめている悉曇研究の基礎資料とされているものです。現在のお経のご真言の読み方はこの本に由来しているといわれている貴重なものです。
展示にはこのほかおおきな両界曼荼羅があり、一尊一尊に名前がふってありました。生涯に結縁灌頂を授けた者三十万人と言われる浄厳律師の熱い思いがつたわってくる大曼荼羅でした。この間の消息を語るかのように、展示されてる「江戸名所絵図」には俳人其角の「灌頂の闇よりいでて さくらかな」の句が書き込んでありました。其角も結縁灌頂を受けていたのです。
展示は6月4日までということです。