折口信夫「大乗祭の本義」に「日本紀の敏達天皇の条を見ると、天皇霊といふ語が見えて居る(注)。此は、天子様としての威力の根元の魂といふ事で、此魂を附けると、天子様としての威力が生ずる。此が、冬祭りである。」とあります。折口は天皇は「天皇霊」すなわち「瓊瓊杵尊の魂を代々受け継ぐことによりその霊力を保持されてきたといいます。」
注、
日本書紀、敏達天皇「・・十年春二月蝦夷【えぞ】数千【すせん】辺境を寇す。天皇群臣を召して征討の事を議る時に太子側【かたはら】に侍り、耳を左右に峙【そばだ】て群臣の論を聞き玉ふ。天皇近く太子を召て詔て曰はく「汝意【なんじがこゝろ】如何」太子奏して曰はく「少児何ぞ国の大事を議るに足ん、然れとも今群臣の議する所皆衆生を滅すの事なり、児が意に先つ魁師【かいし】を召て重く教喩【おしへさとし】を加へ其の重盟【おもきちかい】を取て本の洛【くに】に放還し加ふるに重禄【ちようろく】を賜ふて其の貪性を奪んと以為【おもへ】り」と。天皇大に悦びて即ち群臣に勅して魁師の綾糟等【あやかすたち】を召て詔曰、「惟れは你【なんじ】蝦夷は大足彦天皇(おほたるひこ、景行天皇の事)の世、殺すへき者は斬り赦すへき者は放つ、朕今彼の前例に遵ひて元悪を誅せんと欲す」。是に於て綾糟等、怖懼して乃ち泊瀬川に到り三諸山に向て盟て云、「臣等蝦夷自今以後子々孫々清明なる心を用いて天闕に事へん。臣等若し違盟せは天地諸神及び天皇霊、臣種【しんたね】を絶滅したまひ、之より后時(こんご)久しく辺を犯さず」と。
注、
日本書紀、敏達天皇「・・十年春二月蝦夷【えぞ】数千【すせん】辺境を寇す。天皇群臣を召して征討の事を議る時に太子側【かたはら】に侍り、耳を左右に峙【そばだ】て群臣の論を聞き玉ふ。天皇近く太子を召て詔て曰はく「汝意【なんじがこゝろ】如何」太子奏して曰はく「少児何ぞ国の大事を議るに足ん、然れとも今群臣の議する所皆衆生を滅すの事なり、児が意に先つ魁師【かいし】を召て重く教喩【おしへさとし】を加へ其の重盟【おもきちかい】を取て本の洛【くに】に放還し加ふるに重禄【ちようろく】を賜ふて其の貪性を奪んと以為【おもへ】り」と。天皇大に悦びて即ち群臣に勅して魁師の綾糟等【あやかすたち】を召て詔曰、「惟れは你【なんじ】蝦夷は大足彦天皇(おほたるひこ、景行天皇の事)の世、殺すへき者は斬り赦すへき者は放つ、朕今彼の前例に遵ひて元悪を誅せんと欲す」。是に於て綾糟等、怖懼して乃ち泊瀬川に到り三諸山に向て盟て云、「臣等蝦夷自今以後子々孫々清明なる心を用いて天闕に事へん。臣等若し違盟せは天地諸神及び天皇霊、臣種【しんたね】を絶滅したまひ、之より后時(こんご)久しく辺を犯さず」と。