「清滝不動尊のこと・・三沢智証最乗寺単頭」(大法輪平成2年1月号)
「小田原の道了尊として天狗の現世利益で知られる大雄山最乗寺の境内に清滝不動尊が木曾の御岳山から勧請されたのは、明治40年5月であった。これは道了尊講中の東京一心講が御岳山にも参拝していた因縁と、日露戦争の戦死者の慰霊、生還御礼のためでもあった。東京一心講の秋元正夫氏の霊験譚がある。・・氏のはなしである。『私は十四才ころから近くの丸浜講の誘もあり御岳山と清滝不動をおまいりしてきました。私はこの清滝不動様から数々のご利益をいただいておりますが、特に印象に残っているのは戦争中のことです。昭和15年、入営がきまったときに御座が立ち、お祈りの後で「これでよい。つきまとって守護する。」とのお示しがありました。わたしは意をつよくして仏印インドネシアにいきました。その後マレー半島、シンガポールと転戦し、スマトラで終戦となりました。此の3年間、空襲や艦砲射撃も受けましたが私の隊では一人の戦死者も病人も出ませんでした。ところが終戦後インドネシア独立運動が起きわれわれの物資がねらわれ又襲撃をうけることとなったのです。在る夜3人で警備に出たところ突然原住民に包囲されサーチライトであかあかと照らし出されたのです。当然次は一切射撃でわれわれは蜂の巣になると思いました。ところが一発も弾が飛んできません。そのうち包囲網も解かれわれわれは命拾いしたのでした。後で分かったのですが原住民の銃がしめっていて不発に終わったということでした。わたしはいつも部隊の移動や作戦の前には九字を切って無事を祈願してきましたが、入営前のお示し通り無事帰還できました。お不動様のお陰はほんとうにあると思いました。』」
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